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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百三十七話 おふざけの先に(2017.12.27修正)

俺は今一人で聖育院じっかに戻って来ている。

決して、あなたには付いていけません!実家に帰らせていただきます的な帰省ではなく、自分の息抜きと弟妹達にお菓子などを差し入れするためである。


いつもなら朝からフェディのブートキャンプを行った後、ロイズさんのお店に赴き勉強を見てもらうのだが、今日ロイズさんは予定が入っているらしく、本日の授業はお休みと言われたのだ。

俺は最初その話を聞いて狂喜乱舞したのだが、王子様スマイルで出された宿題の量に涙を流す事になった。

まぁ、それでもいつもやっているような宿題なので昼過ぎまでに終わらせてこうして聖育院じっかにやってきたのである。


「モッキュー」

「おい。そんな目をしたってお菓子はやらないぞ」

「モッキュー…」

「駄目だ!やらないったらやらない!これは弟妹達のために買って来たお菓子なんだぞ」


公星が俺に円らな瞳を潤ませてお菓子を要求している。

使い魔は主の魔力を分け与えれば生きられ食べる必要が無くなると聞いた後でも、俺はそれなりの餌を公星に与えていた。

勿論前に与えていた餌の量よりもかなり減っており、最盛期の五分の一程度ほどしか与えていない。

その分公星は一匹で街へと繰り出し、馴染みの屋台や飲食店で残り物や売り物にならない物、おやつなどを貰っているようだがな。


「モッキュキュ…」

「………少しだからな!本当に少しだからな!」

「モッキュー!♪」

「全く…」


コイツのために無限収納鞄マジックポーチに溜め込んだお菓子も消費しなきゃいけないからな。

やっぱり定期的におやつはあげないと…

なんだかんだ言ってもやっぱり俺は公星には甘いな…


そして俺は聖育院じっかの門の前に立っている。


「聖育院よ。私は帰ってきたぁ!!」


うん。お約束をやってみました。

横では公星が不思議そうな顔をして眺めていたが気にしない。

門の奥では弟妹達がぽかーんとした顔をしているが、気にしないったら気にしない。


「さぁてと、まずは院長先生に挨拶しないとな。いくぞ、公星」

「モッキュー」


お約束も終わったので早速中へと入った。


「あ!やっぱりセボリオン兄ちゃんだ!!」

「本当だ!変な事やってるなって思ったけどセボリオン兄ちゃんなら納得だね」

「おい!みんな!変でお菓子をくれる兄ちゃんが来たぞ!」

「私は直ぐにわかったもん!あんな変な事言うのセボリオン兄ちゃんしかいないんだから!」

「変だけど優しくてお菓子くれるからあのお兄ちゃん大好き!」

「セボリオン兄ちゃん!今日はどんなお菓子くれるの!?」


門を潜ると直ぐに弟妹達に囲まれた。

少し気になる発言もあったが、相変わらず俺の評価は満点らしい。

だが弟妹よ…断じて俺は変ではない、まとも一直線だ。


「おい、こら。ひっぱるな!待て待て!まずは院長先生にご挨拶してからだ!お菓子を配るのはまだ!」

『えーーーー!!!早くぅ!!「モッキュー」』

「おい!今聞きなれた鳴き声が聞こえたぞ!?公星!お前にはさっきやっただろうが!!」


弟妹達にもみくちゃにされながら俺は院長先生がいるであろう建物の中へと入った。


「ふぅ…人気者は辛いぜ」


建物の中に入ると面識のある先生がいたので、院長先生が何処にいるか聞いてみる。


「すみません。院長先生はご在院でしょうか?」

「ああ…セボリー久しぶりね。今院長先生はお客様のお相手をしているわよ」

「ありゃりゃ。そうですか。じゃあ俺は弟妹達にお菓子でも配ってきます」

「いつもありがとうね。でもあげすぎないように。お菓子を食べ過ぎて他の食事が入らないって言う子もいるからね」

「はい。気をつけます」


と言うわけで俺はまた弟妹達が遊んでいる庭へと戻った。


「あ!戻ってきたぞ!!お菓子頂戴!!」

「変な兄ちゃんお菓子くれぇ!!」

「おい、今変な兄ちゃんって言ったやつ出て来い。教育的指導をしてやる。それにその歳でなんでそんな野太い声してるんだ」


どこかで聞いたことのある声だと思い探してみると、そこにはいつも見る顔が一人立っていた。


「~~~~~」

「おい!!なんで呪文詠唱してるんだよ!!!」

「うっせーーー!!何でお前がここにいるんだよ!!ルピシー!!!」


そう。そりゃ聞いたことある声だわ。

だって物心ついた時から一緒に育ってきてる奴だもん。


「なんでって!俺もここの出身だからに決まってるだろうが!!お前と同年タメじゃねーか!!」

「お前余りここに帰ってこないじゃん!!なんでいつも来ないのにいるんだよ!!?」

「下の奴等と遊んでやるためだ!!!」

「珍しい事するんじゃねーよ!槍が降ったらどうしてくれるんだ!!それにどさくさに紛れてお菓子要求すんな!!」

「たまには良いだろうが!俺が下の奴等と遊んで何が悪いんだよ!!」

「お前の場合は遊んで貰ってるの間違いだろうが!!それに来るんだったら差し入れとか持って来いよ!!」

「俺の笑顔が差し入れだ!!!」

「アホかぁああああああ!!!」


こんな俺達のやり取りを弟妹達は不思議そうな顔をして眺めている。

弟妹よ。こんな人間にはなるなよ。


「で。珍しく院長先生に挨拶に行こうと思ったら、院長先生が来客の相手をしていたからお前もこうやって弟妹達と遊んでたって訳か」

「ああ。もうかれこれここに来て一時間ほど経ってるんだが、全然話が終わりそうに無いんだよなぁ」


ふむ。来客とは一体誰なのだろうか?

まさか帝佐さんとか?

いや。でもそれは無い。確か帝佐さんは来るとしても月初めだ。

まぁ、でも多分ここの卒業生の中でもお偉いさんか、国関係の人間だろう。

そうでなかったら態々院長先生が相手なんてしないしな。


「ねぇ~いつお菓子くれるのぉ?」

「はやくぅ!!」

「あ~はいはい。分った分った」

「セボリー、俺にもぉ!!!」

「モッキューーーー!!!」

「お前等にはねーよ!!!」


俺は早速お菓子を配るために無限収納鞄マジックポーチに手をかけた。

しかし、その瞬間あるアイディアが頭に浮かぶ。


そう言えば前世に新築した時に屋根の上からお菓子やお金、お餅を投げる風習を見たことがあるな。

あれちょっと面白そうだからやってみたかったんだよなぁ。

前世では家を建てる前に死んでしまったから出来なかったけど、ここでなら…

よし…やるか。


「ちょっと待ってなさい!これから少し趣向の違うお菓子の配り方をします!」

『え~~~早くぅ!!!』

「焦る子供はもらいが少ないですぞ!」


俺は前に試したことのあった魔導陣の風魔法でおっかなびっくり屋根の上へと登っていく。

そして無限収納鞄マジックポーチからお菓子を取り出し、弟妹達に宣言をした。


「お~~~い!良いか!?これから配るが取り合いはするんじゃないぞ!!お菓子を取ったらその子の物だ!!それに上の奴はお菓子を取ったら下の奴にお菓子を取るのを譲れ!!喧嘩したらその時点でお菓子を配らないからな!!」


一応釘は刺しておこう。もしこれで怪我人が出たら大変だ。


「じゃあ配るぞぉ!!いくぞぉ!!?そぉ~れぃ!!!」


弟妹達は一斉に俺がばら撒いたお菓子(包装紙付き)を必死に拾っている。

最早争奪戦の如き激しさだ。

ついでにルピシーと公星には参加権は与えられておりません。

あいつ等が参加したらその瞬間あいつらに攻撃魔法をお見舞いしてやるぜ☆


「これは凄い!!絶景かな絶景かな!!!」


ヤバイ。これ楽しい。

この頃地獄の毎日で全然はっちゃけていなかったから余計楽しいわ。

久々のおふざけに俺のテンションは天井知らずだ。


「そぉ~れぃ!!」

「……」


よし!この調子でガンガン撒くぞ!!


「Huuuuuuuuuu↑!!!」

「…………何をやっているのかな?セボリー?」

「…へ?」


聞き覚えのある声に恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこには後ろに黒いオーラを背負ったロイズさんが満面の笑顔で俺を見ていた。

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