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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百三十一話 退位する者(2017.12.27修正)

―ぇえ!?光ってる!!?―


―どうしたんだよ!!?―


―何!?何なの!?ボタンは何処だ!!―


―公星ぃぃいいい!!!―





「リー……セ…リー…ボリー。ちょっと起きなさいよ!セボリー!」

「んぁ?」

「ちょっとあんた、何寝てるのよ」

「………ああ。俺寝てたんだ」

「この部屋について椅子に座ってから直ぐに寝てたわよ」


どうやら俺は寝てしまっていたらしい。

昨日一日随分と色々あったから疲れでも溜まってるんだろう。


「本当に座って3分もしないうちに寝てたよ」

「お前は気楽だな」

「ルピシーにだけは言われたくないわ!!」

「気持ち良さそうに寝てたから余り起こしたくは無かったんだがな。そろそろお披露目の時間らしい」


そう言われ、時計を見てみるともう昼であった。


約一時間も寝てたのか…

うん。少し頭がすっきりした感じがするぞ。

あれ?そう言えば俺何か夢を見てたような気がする…

どんな夢だっけ?

この頃見る夢って変な夢だったり不吉な夢だったり最悪な夢だったりするからな。

あれ?俺が見た夢って碌な夢なくない?


「あ~…わかった。でもその前にお茶を一杯くれ」

「はい。ハーブティーだよ。僕がブレンドしたフレーバー」

「ありがとうございます」


ロイズさんが作ったと言うお茶を飲む。

ハーブティと言われ薬臭いのかと思ったが、フルーツの皮やオイルも混ぜているらしい。

鼻に抜ける香りが素晴らしく、味も少し癖があるがとても美味しかった。


「夢を見てたのかい?」

「……ええ」


俺の頷きにロイズさんは目を細める。


「夢を見る事を拒否しちゃ駄目だよ。夢は世界の記憶と繋がっているんだ。つまり精霊との親和性を上げる方法の一つだよ」

「親和性をあげるとロイズさんみたいなことも出来るんですか?」

「個人によって違うと思うけど、セボリーなら出来るだろうね。まぁ、時間は掛かるだろうけど」

「あの。すみません」


ここでシエルが割り込んでくる。


「何だい?」

「精霊との親和性をあげるとどういったことが出来るのでしょうか?」

「そうだね。まずは精霊と友達のようになれる。つまり精霊の愛し子と同じ状態になれるってことだね。セボリーや僕は元から素質があるから余り関係ないけど」

「つまり精霊に関する術を使用しやすくなると考えてよろしいでしょうか?」

「概ね正解。それと魔力の消費が低くなる。もっと正確に言うと精霊達が足りない魔力を補ってくれる」

「…………魔力は人の命の活力…あればあるほど長生きする…」

「早いね。シエル君は正解を導き出したいらしい」


ん?どういうことだ?

確かに魔力持ちは寿命が長いのが定説だ。

魔力無しの人と比べると2倍近く生きる事が出来るし、下手をすると今日話に出たウィンデルノット公爵家の大公のように長生きってレヴェルじゃねーぞ的な人もいる。

でもそこからどう繋が……ああ…そうか。

精霊が足りない魔力を補うという事はそれだけ長く生きることが出来ると言うわけか。


「という事は長命化できるんですか?」

「長命化の一歩手前だね」

「人は長命化できないんですよね?」

「出来ない訳ではないよ」


え!?初等部の授業で動物は長命化できるが、人間は長命化できないと聞いたぞ。

つまり例外があるって事か?


「色んな条件をクリアしたら長命化できる。ただそれが動物に比べるとハードルが高いだけ」

「その条件とは?」

「秘密」

「やっぱりな。でもどうしてロイズさんはそんなに物知りなんです………か。……成る程。さっき世界の記憶と言いましたけど、それも関係してるんですね」


ロイズさんは不敵に笑ってお茶を飲んだが、答えを出してはくれなかった。

それから程なくしてドアがノックされる。


「準備が整いました。よろしいでしょうか?」


返事を返すとマインツさんが姿を現し、その後ろには例の変態の姿もあった。

また変態的な言動をするのかと思いきや、流石に父親の前では弁えているのか大人しくしている。


マインツさん達に連れられて歩き、先程のイベントホールへと歩いていった。

中に入るとウィルさんは勿論ベルファゴル大公やウィルさんの姉兄、クレアさんと知らない初老の夫婦の姿が見えた。

おそらくあれがクレアさんのご両親だろう。

その他にもたくさんの使用人の人達がウィルさん達に傅いている。


「よし、揃ったな………ふぃ~~…緊張するぅ…さぁ、いよいよだ」


そう言ってウィルさんは気合を入れるように顔を両手で叩く。


「緊張するなと言うほうが無理だな。ワシも昔この場所で領民に顔を出した。ずっとアライアスの当主になる者はそうしてきたのだ。お前もまた同じ道を通るだけだ。ではまずワシが最初に出て領主交代を布告する。その後にお前がクレアを連れて出て来い」

「ああ。わかった」


ベルファゴル大公はマインツさんを見て、目線だけで指示を出す。

マインツさんは心得たとばかりにテラスへと続く硝子扉を開け放つ。

開け放った瞬間、外の喧騒がこちらまで聞こえてきた。

やはりこの建物も何か特別な方法で音をシャットアウトしていたのであろう。


マインツさんがテラスへと歩み出ると一瞬、外の喧騒が静かになり、そして声を拡声する魔道具マジックアイテムを使い口上を述べた。


「皆の衆、皆の衆!これより精霊に祝福されし24家が当主のひとつ!アライアス公爵家のご当主様がお姿をお見せあそばされる!皆の衆!活目せよ!皆の衆!耳を澄ませ!」


その言葉と共に民衆達は固唾を呑んで皆同じ場所へと視線を向かわせた。

そしてベルファゴル大公がテラスへと歩いていく。


オオオオオオオオオオオ!!!


ベルファゴル大公が民衆の前に姿を現すと歓声が沸いた。


「我が愛すべき領民よ。余はこの地を治める事を聖帝聖下より許された第547人目のアライアスである。そして今日、第548人目のアライアスが誕生した!」


オオオオオオオオオオオ!!!


その言葉に歓声と共に礼をする民衆。

遠くて良くは分らないが、その顔は喜びにも畏怖にも見えた。


「それをもって余は公爵位から退きアライアスから唯のジルガンテインに戻った後、聖帝聖下より大公位ベルファゴルを拝領した!」


オオオオオオオオオオオ!!!


「いたらなかった事もあったであろう。皆の衆、今まで支えてくれた事を感謝する」


ベルファゴル大公がそう言い終えテラスの脇に移動すると、民衆達は皆静かに最上の礼をベルファゴル大公へと贈った。

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