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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百三十話 お披露目の前に(2017.12.27修正)

椅子に座るウィルさんとベルファゴル大公の服が先程とは変わっているのに気付く。

先程の正礼服はシックでクラシカルなものだったが、今着ているものはとても華やかで派手なものであった。

多分領民に新領主をお披露目するために派手な衣装を着ているのだろう。

普通あんな派手な衣装を着ると顔や雰囲気が負けるのだが、ウィルさんは全く負けてはいない。

逆にウィルさんのイケメン度を更に上げる要因にしかなっていない。

またあんな格好をして椅子に座っていると絵になること絵になること。

似合いすぎて嫉妬さえ覚えてくる。


「来たか」

「ウィル」

「なんだ?」

「とりあえず殴っていい?」

「なんでだよ!!!」

「僕があいつ嫌いだって事知ってたのに送り出したでしょ」

「良いじゃねーか。どうせ被害は無いんだろ?」

「精神的に不快で、このイライラをぶつけるために城自体を壊してしまいそうだったよ」

「おい!やめろ!!」


ロイズさんならやりかねないと思ってしまったわ。

でも流石のロイズさんもそこまではしないだろう。

したとしても半壊で済ませてくれると思うよ?


「ウィル兄さん」

「おう。シエルか」

「アライアス公爵様。ご継承おめでとうございます」

「………無理やりだったがな」

「その割には最後のほうノリノリだったけどな」

「セボリー!うっせーぞ!」

「まぁ。シエルも押し付けられる可能性があるから、そこんとこは頑張れ」

「…はぁ……僕はジョエルにでも押し付けようかな…」


安心しろシエル。

もし俺が成人して聖下に会うようなことがあれば、お前を猛プッシュで推薦してやるから。

今の段階では断定は出来ないが、ジョエル君は優秀だが余り融通が聞かないし真面目すぎて当主には向かないと思うからな。

ノエルちゃんには自由に生きて欲しいと言うシエルの要望に答えて、最初から却下である。

だからお前がエルトウェリオン公爵になれよ。

お前だったら立派な腹黒公爵になれるぞ。


「エルトウェリオンの所も後継者選抜には苦労するの…」


ベルファゴル大公が聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう呟いたが、普通に聞こえてしまった。


後で聞いた話なんだが、ベルファゴル大公はウィルさんが学園卒業と同時に三人の子供のうち誰に公爵家を継がせようかと選定に入っていたらしい。

それは様々な人間関係や他の当主陣の評価。

そして何よりも領民を統べる領主としての才覚を見極める事が必要であったそうだ。

上の二人のうち姉は優秀で姉御肌ではあるが、本当に嫌な事は岩にへばりついてもやらない性格で継がせるには難があったそうな。

兄の方は優秀だが引っ込み思案で余り人付き合いが得意ではなく、トップには上がれても仕切れない性質らしい。

そうなると三兄弟の中で残った候補者は一人しかいない。

ウィルさんはちゃらんぽらんに見えるが、ああ見えても真面目だ。

しかも優秀で社交的。人望もあり、人情にも厚いが切れる所はすっぱり切れる非情さも兼ね備えている。

ウィルさん達の従兄弟や親戚からも候補者が何人かいたが、やはり候補の一番はウィルさんだったらしい。

そして最終的に他の当主達からOKを貰えたのはウィルさんしか居なかったそうな。

なので普通は苗木剪定の儀は複数人で行うはずなのに、ウィルさん一人で受ける事になっと言うわけである。


シエルがウィルさんの挨拶を済ませると、他のメンバーが叙爵のお祝いとお招きの感謝の意を伝える。

ウィルさんはまた苦笑して「あ~」とか「うん」と返した。

そしてゴンドリアとユーリにとってはこれが一番だったらしいが…


「そしてご結婚おめでとうございます!!」

「そう言えば花嫁さんはどこなの!?」

「あいつは今実家に戻ってる」

「ええ!!?結婚する前から既に破局一歩手前!!?」


おい。ウィルさん。あんた一体何をやらかした。

浮気か?浮気なのか?この短時間に浮気でもしたのか?

そんなことするなら。あたくしも実家に帰らせていただきます!

って、俺の実家聖育院だった。それに何でウィルさんの浮気で俺が帰らなあかんねん。


「違げぇぇぇえええええ!!それにまだ結婚はしてねーよ。今は婚約段階だ。あの状況で直ぐに結婚ですってなる訳ねーだろうが。物事には順序ってものがあるんだよ」

「そうですね。加害者のウィルさんはまず、被害者とそのご両親に誠心誠意の謝罪と慰謝料を…」

「勝手に話を膨らませるんじゃねー!!俺のお披露目と同時に婚約した事を領民に知らせるんだよ!それとクレアの両親にも来て貰って顔合わせだ!」

「え?あれだけ長い間付き合ってたのにご両親に会った事無いんですか?」

「……………ああ」


ここは是非、お前のような奴に娘はやらん。と言って貰い修羅場になって欲しいわ。


「ウィルさん殴られる覚悟してますぅ?」

「甘んじて受けてやるよ」


あらやだ。男らしい。


「兎に角、もうすぐ向こうのご両親もいらっしゃるはずだ。そのためにうちの姉貴が一緒についていっている。お披露目の祝賀まではまだ時間があるからお前達もゆっくりしてろよ。なんなら部屋も用意するが?」

「じゃあ一回ベルファゴルの街に出て行って良いですか?少し興味があるんですけど」

「今日は止めて置いた方が良いぞ。窓の外を見れば分る。俺もさっき見たが逃げるに逃げられない状態だ」

「へ?」


指差された方角の窓を見てみる。

この城自体が高いのでまるで模型ジオラマを見ているようだが、そこには人、人、人の姿で埋め尽くされていた。

屋台や出店。他にも見世物が催されている。

確かにこの状況では観光どころではない。


「うわぁ…人がゴミのようだ…」

「おい。ゴミとは酷いぞ。俺の守るべき領民だぜ?」

「すんません。ちょっとした言葉の綾です。それにしても人が多すぎませんか?」

「領都ベルファゴルだけじゃなく、他の領地からも来ているらしい。お触れを出したのつい数日前のはずなんだがな…」


その時、ドアをノックする音が聞こえた。

そしてマインツさんが部屋へと入り、クレアさん達が到着した事を知らせてくれた。

その直ぐ後に顔を見せたウィルさんのお姉さんも早く来いと急かしている。

これから家族になる人の顔合わせなので、俺達はその場を遠慮して他の部屋へと移動することにした。

ぶっちゃけクレアさんのご両親達と顔を合わせてもなんの意味もないしな。


他の部屋へと移動してから、俺はこれからの事を考えてみる。


まずはお披露目を見学してから多分パーティになると思うから、それが終わったら学園都市に帰ろう。

ぶっちゃけ昨日の時点で学園で受ける授業をすっぽかしているのだ。

この頃授業もあまり出ていなかったから単位を取らないとヤバイ。

昨日は午後から授業に出ようと思っていたが出れなかったしな。

だって顔合わせのついでにご飯食べるだけだって聞いてたから、午前中で終わると思っていたのだ。

それなのにあの拉致事件から叙爵の件に入り、今に至るってわけ。

今日も授業の予定を入れていたのだがこのお披露目会で一日が終わるだろうと予想している。

なので明日からまたカリキュラムを組みなおさねば…

まぁ、昨日も今日もダンスの必修があったから逃げる口実にはなったのだが…

でも必修なので授業に出ないと留年してしまう。

ダンスの授業嫌だなぁ……


そんな事を考えてながらふと時計を見れば、まだ朝の範疇の時間であった。

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