第百二十五話 ロイズさんの肩書き(2017.12.26修正)
俺は思わず二人の顔を見比べてしまった。
この二人の何処に接点があったのか分らないが、多分食べ物関係でだろう。
ルピシーは食べ歩き、ロイズさんは飲食店経営。
もしかしたら口コミで有名な店をルピシーが聞いて突撃したのかもしれない。
「ルピシー。お前ロイズさんを知ってるのか?」
「ん?ああ。本を出す時に少しお世話になった」
「え?本?あのアホみたいなタイトルの本?」
「俺が考えたんじゃねーよ!!」
本だと!?
何?ロイズさん出版業界にも顔が広いの?
でも確かにロイズさんの謎の交友関係ならそれもあるのかもしれないな。
「ロベルトに紹介されたんだ」
「ロベルトに?」
まさかのロベルト繋がりかよ!ロベルト…俺にとってはお前も結構謎だよ。
つかあの同好会に属している時点で謎だし。
「名前は忘れたけど、なんか凄く偉い先輩とか言ってたな」
「偉い?頭の中身がえらい事になってるの間違いじゃなくて?」
「ん~。傷つくなぁ」
「すんません。その俺を持ち上げて頭を潰さんばかりに力を込めているその手を放して下さいませんか?」
本当にすんません。まだ俺は人生終わりたくないので少し慎みます。少しね。
なのでその手を放してください。
「何でも部活の先輩とかで、色んな方面で口利きして貰ったとか貰わないとか」
「どっちだよ!」
おい……まさか……まさか……
ロイズさんってサンティアス学園なんでも同好会のOBだったりするの!?
「あのぉ…ロイズさん?」
「何?」
「もしかして…いや。もしかしなくてもサンティアス学園なんでも同好会の関係者だったりします?」
「一応関係者だね。発足人の一人で名誉会長だよ」
「思いっきり関係者じゃねーか!!!しかも諸悪の根源!!!」
「何?入りたいの?」
「断固として遠慮する(キリッ)」
「宙ぶらりんの状態じゃきまらないよね」
あ、まだロイズさんに振り子状態にされてます。そろそろ地面が恋しいので下ろしてください。
そう言えばマゾワンさんはサンティアス学園なんでも同好会と繋がりがあるって言ってたな。
つまり繋がり=ロイズさんってかよ!!
俺は知らない間にロイズさんに包囲されていたようだ。
「ロイズさんがあの謎な同好会作ったんですか?」
「謎かどうか分らないけど同好会の初期メンバーの一人だよ。正確に言うなら僕が面白そうな事を調べてたら、周りの兄弟達が張り切って神輿に乗せられた感じかな?」
「ん?どういうことですか?」
神輿に乗せられたぁ?自分から乗ったの間違いじゃなくて?
「いやぁ。とある留学生の子がいてね。その子達がちょっとやんちゃしててさ。お仕置きするつもりでとある資料をまとめてあげたんだ」
「ほほぉ。その資料とは?」
「確か学園都市内のどエロスポットって内容だったね」
「なにそれ。すっごくほすぃ」
「表向きはエッチなスポットなんだけどね。まぁ好みは人によるから」
「やっぱり裏があるんですね」
表があれば裏もある。
それにロイズさんが他人にそんな秘宝を渡すはずがないに決まっている。
きっとえげつないものを手渡したのだろう。
「実はね。変態達が集まるスポットを渡したんだ。あ、男限定の変態スポットね」
「…へ?」
「つまり掘られてきなさいって事」
「うん。やっぱりえげつなかった件」
「内容は出来るだけそそられる様に書いてさ。場所を詳しく載せてあげたんだ」
そんなもん貰って行ったら自ら死にに行くようなものじゃねーか!!
天国かと思ったら地獄でした的な展開なんていらねーよ!!
予想以上にえげつないよぉ。さすがこの人鬼畜魔王だよぉ。
しかもロイズさんがそそられるって言うんだから、前世のピンク広告も紅潮な殺し文句満載だったんだろうな。
これは純情な男の子は騙されるに決まってるではないか!!
俺も確実に罠に嵌っていたに違いない!!!
「この国ってさ、決まった場所、地区だったら売春OKなんだよね。しかもちゃんと厳しい監察もあるし。君達の友達のヤンソンス君だっけ?あの子のお店の近くの地区がそうなんだけどさ、その地区の中に僕でさえ行く事を憚られる変態地区があってね。そこを猛烈プッシュでお勧めしておいたんだ」
「鬼や。ここ鬼が居るで」
「そこは店じゃなくて少し小さくて隠れた路地に行くと盛りあってるから………男同士が。大通りでも全裸で歩いてるし」
「うん。絶対そこには足を踏み入れない。絶対にだ!」
俺には縁のない場所である事を深く願うわ。
とりあえずその留学生達には黙祷をおくっておこう。
しかしそんな危険が危ない所がこの学園都市にあるなんて…
「でもサンティアスの養い子を苛めてた奴等だからどうでも良くない?」
「うん。同情心が少し消えた」
この話を聞いて顔を引きつらせている仲間達の顔が少しほぐれた。
何故かゴンドリアはいつも通りだったけど。
「でね。そいつ等が退学になった後、兄弟達が面白半分で再編集してさ。出版社に勤めてた上の兄姉と交渉して本として出版したんだよねぇ」
「さらっと退学になったとか言ってるけど………まぁ…良いです」
「確かタイトルが………え~っと…」
ここで俺は昔シエルから聞いたあるタイトルの本を思い出した。
「まさかとは思いますが、学園都市変態出没地域-完全保存版-とかではないですよね?」
「あ。それ。でも完全保存版じゃない奴だね。確かそれはそのシリーズの第8シリーズだったような気がする」
「そんなヤバイ本どんだけ出してるんだよ!!」
「一部のマニア層には受けが良かったらしいんだよね。ぶっちゃけルピセウス君の本が出るまでうちの同好会の売り上げの記録はそのシリーズだったし」
「ルピシー…お前はとんでもないところから本を出したらしいな…」
「良く分らんがロベルトに任せておけば大丈夫だろ?」
「お前のその何も考えない前向きな姿勢が羨ましいわ!!」
その時商会の扉が開き、ヤンが帰ってきた。
カリーの試作を作っていたのか、体からカリーの良い匂いが漂っている。
「ただいま。ん?来客か?それに何故掴まれている」
「ヤン…お前は色々大変な場所に店を出してしまったようだ」
「何だ?いきなり。確かにあそこの建物のオーナーはマゾワン氏だが」
「あそこマゾワンさんの持ち物だったの!!?」
「ああ」
「NOOOOOOO!」
完全に変態達に包囲されてる状態じゃねーか!!
もう何なの!?このウィルさんロイズさんマゾワン氏のトリオは!
碌な人達じゃないんですけど!!
「うるさいなぁ。何騒いでるの?」
「煩いのはいつもの事だけど、研究の邪魔だから少し静かにして欲しい。うん」
「今はそれ所じゃないんだ!衝撃的な事実が判明しまくっているんだ!!静かになんてしていられる筈が無い!!!」
「で、なんで掴まれてるの?」
商会の奥の部屋からシエルとフェディも出てきた。
お前等いたのか。探す暇が省けてよかったとは思うが、もう少し存在感出してくれ。
ああ、そうか。マグネット式のネームカードで出勤状況を示すって手もあるな。
まぁ、そこはおいおい考えておくか。
「ふ~ん。そうなんだ。それで、お客様?」
「ん?ああ、そうだそうだ。皆に紹介しておく。この人はウィルさんの大親友で今ついさっき判明した事だけど、サンティアス学園なんでも同好会の発足人にして名誉会長のロイゼルハイドさん。前に話した聖下から香玉貰ってるけど貴族じゃない人ってのがこの人。ウィルさんは魔法構築式をロイズさんに教わってたらしいぞ。ついでに俺を拉致して連れまわしてた人だ」
「う~ん。あってるけどその言い方だと物凄く犯罪者っぽいよね。一回逝って見る?」
「物凄く頭が良くて親切で料理の上手い素敵な人だ」
「照れるなぁ」
「うん。握力が強い人だとは分った、うん」
ルピシーとは違ったポジティブ感に満ち溢れてて、この人の人生色々楽しそうで羨ましいわ。
「どうも。ご紹介に与ったロイゼルハイド・ランカスター・フィッツゼラール・ド・ラ・サンティアスです。迷宮冒険者をやりつつ料理店を経営してます」
王子様のような笑顔で笑うロイズさん。
確かにイケメンだが騙されないぞ!
その甘いマスクの中身は腹黒を通り越して常闇の鬼畜だという事を!!
皆!騙されたら最後、一生おちょくられるぞ!!
皆それぞれ自己紹介をした後、何でロイズさんがここいるのかを説明する。
「ウィルさんがアライアス公爵家の爵位継承してさ。これからお披露目会みたいなのがあるらしいから、皆でベルファゴルに行ける様に俺がロイズさんに頼んだんだ」
「え!!?ウィル兄さん爵位継いだの!!?」
「うん。俺がウィルさんにロイズさんの店に連れて行かれてさ。ロイズさんがベルファゴル大公達からウィルさんを拉致って来るように依頼受けたらしくて、俺はそれに巻き込まれた被害者」
「あんなに嫌がってたのに…」
「有無を言わせずだったぞ。ぶっちゃけ可愛そうだった。まるで売られていく小動物だったよ。あ。それとウィルさん結婚するから」
「「「「えぇぇえええぇええええーーー!!?」」」」
皆良い驚きようであった。
そして俺の頭は何時ロイズさんの手から解放されるのであろうか。
仕込んでいたネタが回収でき、書いていて物凄く楽しかったです。