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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百十四話 黒夢(2017.12.23修正)

少しの絶望を味わった後、本の少し余裕の出てきた俺は、先程から気になっていた事を聞いてみた。


「あのぉ。ところでさっきから気になってたんですが…」


自己紹介?のようなものも済み、場が暖かくなってきたところで、俺は先程ロイズさんに質問しても答えてくれなかった事をジルストさんに尋ねてみた。


「話からすると陽炎がウィルさんで黒夢がロイズさんだと思うんですが、その名前ってなんですか?」

「………ああ、それは通称だ。まぁ分りやすく言えば一部の迷宮冒険者や軍人、名前の知られた政治家などに付けられる渾名と考えれば良い」


俺がその話を振った瞬間、ロイズさんが明らかに嫌そうな顔をした。

この人のこんな顔今日からの付き合いだけど初めてみたよ。


「陽炎の場合はあいつが攻撃をした後に起こるゆらめきから来てるって話だ。黒夢の場合は…」

「個人情報漏らさないでくれない?」

「いや、俺なんて個人情報漏洩とかそんな問題じゃないくらいの拡散振りなんですが」


ああ!耐え切れなくなったのか口を挟んできたぞ!

やっぱり普段弄られなれていない人は打たれ弱いな。ふ…

さぁ!ロイズさんよ!俺の気持ちを知るときだ!ジルストさん!カモン!


「ケチ癖ぇな。どうせお前さんの弟子になるんだから嫌でも知られるんだぞ。最初はこいつ黒い聖職者って呼ばれてたんだが…」


黒い聖職者!!何とも厨二病心さそう名前ですなぁ!いやぁ愉快愉快!

つーか半殺ししてたのかよ!怖いわ!!


「こいつが呼ぶ奴呼ぶ奴半殺しにしてたもんだから、そのうち黒い死神って呼ばれてな…」


ほお!死神!ぴったりじゃないか!

黒い装束着てデスサイズを持ったロイズさん。ああ!なんて似合う!似合うぞぉ!!


「だがその名前は他の人が昔使っていた名前なので直ぐに呼ばれなくなってな…」


え?使われていた名前なのか。まぁ結構有り触れた渾名だもんね。仕方ないよ。


「まぁ、オルブライト司教がそう呼ばれてたんだが…」


あのおっさんかよ!!!おい!あのおっさんマジで昔何やってたの!?

あのおっさんは腹黒い司教?(笑)で十分だし!


「暗闇の悪職者って案も出たんだが…」


悪職者ってなんだよ!スッゲー造語でたな!!

面白いからもっとやれ!


「呼んだ奴等が一生冒険者としては再起不能な体にされてな…」


私の思い違いでてっきりこの中に犯人はいないと思っていました。

だが、犯人が分りました。あなただったんですね…ロイズさん!!


「悪魔と呼ばれ始めたんだが…」


はい。直球勝負ですね、わかります。潔くて宜しいじゃないか!


「呼び始めた奴が今でも病院のベッドで寝ても覚めてもごめんなさいと言い続けている状態にされてな…」


うん。なんか。本当にごめんなさい。

これは最早悪魔じゃなくて本当に魔王だよ。

ああ!ロイズさんが我関せずって感じでお茶シバいとる!!少しは関せよ!!


「それで深淵の悪夢と呼ばれたんだが…」


深淵……うん。その言葉を聞くだけで絶対良い意味じゃない事はわかるよね。

最早抜け出せないほど深くて酷いんだろうな…いろんな意味で。


「その次が顔だけは整ってるから悪夢の王子様って呼ばれてな…」


王子様……か。うん、確かに顔だけは整ってる。顔だけは。

性格が歪みまくって逆に色んな意味で真っ直ぐだけど、顔だけは王子様だ。


「王子って呼び始めた奴が夜遅くに行方不明になって、帰ってきた時には髪の毛が真っ白で顔も皺だらけ。まるで棺桶に片足突っ込んでる老人のような姿で発見されてな…」


何やったの!?ねぇ!何やったのよ!!?

これも犯人は特定出来てるけど本当に何やったの!!?


「おふざけ半分で悪夢の帝王の呼び名が付いたんだが…」


王子様から帝王に進化した!!しかも王様をすっ飛ばしてるよ!!おめでとうございます!!!


「その渾名つけた奴は未だにこいつに酷く弄られててな…」


ああ……何故か分らないけどウィルさんの顔が浮かんだよ…

ウィルさん、元気ですか?俺は不元気です。天の彼方で見守っててください、死んでないけど。


「最終的に黒い死神と深淵の悪魔を従えた悪夢の帝王。略して黒夢と呼ばれるようになったわけだ」


色々混じったぁぁあああぁああ!!!

しかも従えてるぅ!従えてるよ!死神と悪魔を!!

由来を聞いて納得出来ちゃったけど、酷い。これは酷いぞ。ぴったりだ。

…奥さん………事件です。これは悪意の篭った事件です!!

って言うかこの壮大な幻想物語ファンタジーは何ぞや!!いっぱい犠牲者出しすぎだろうが!!

これは最早伝承物語サーガとして後世に残しておくべき世界遺産ワールドヘリテッジじゃないか!!!

俺は帰ったらこの物語を本にして原稿をサンティアスなんでも同好会出版に持って行くぞ!!待ってろ!生温い物語に慣れた業界人よ!!出版業界に大きな風穴を開けてやるわい!!!やったるで!!!


あ、やばい。ロイズさんの顔がマジでヤバイ。

何がヤバイってコメカミに青筋立ってる。しかも王子様のような笑顔で。


「セボリー?」

「ヒ!ヒャイ!!?」


ソファーに座って足を組み、片手にカップを持ちながら俺を見てきたロイズさんに俺は返事を返す。

しかしその返事はヤバイ圧力と言う名の恐怖でうまく発音できなかった。


「何を考えてるのかな?ねぇ…ちょっと僕に教えてよ」


ほげぇぇぇええええええ!!!すいませんでしたぁああああああああ!!!

本にして後世に残そう何てこれ一ミリも、いや!これ一ミクロンも考えてませんよぉおおおお!!?

ッハ!こうせいだと!?そう言えば公星はどうした!!?

あいつ俺のまたポケットに潜り込んでそれっきりだったけど、今ポケットを触ってみても公星の感触が無い!!!

あ!いたぁああ!!あいつテーブルの茶菓子食ってるぅぅぅううううう!!!

おい!公星!助けろ下さい!!


その公星は振り返り茶菓子を食べながら俺に向かってキメ顔を向けてきた。


うわ!むっかつくぅぅううう!!俺の命が掛かってるんだぞ!?でも可愛いから許す!!!

ってそんな場合じゃなかった!!何か良い生贄は居ないのか!!?


「イエ、ナンニモカンガエテマセンデシタ」

「本当かなぁ?」

「ハイ。ホントウデス。コレイジョウノセンサクハ、オレノイノチニカカワリマスDEATH」

「ほほぉ。そうなんDEATHか」

「エエ、ソウナンDEATH」

「そぉ、まぁ良いや」


助かったぁぁあああ!!!良かった!また若い身空で逝くのは勘弁だ!!!


「あとでいっぱいOHANASHIしようねぇ」

「お、お話ですよね!?OHANASHIじゃないですよね!!?」

「それはセボリーの心構え次第かなぁ」

「NOOOOOOOOO!!!」


どうやら俺は開けてはいけないパンドラの箱と地雷を踏みまくったらしい。

ロイズさんがマジで怖い。誰でも良いから助けて。ねぇ助けてよぉ。


「と言うわけでこれが僕の弟子のセボリオン。大体の性格は分かったでしょ?面白いからって遊ぶのは駄目だよ。あんまり下手なことするとオルブライト司教が飛んでくるから軽くおちょくったほうが良いよ」

「忠告だったらちゃんと禁止にして!!しかも何おちょくるの推奨してるの!?」

「え?さっき僕で楽しんでたでしょ?だから」

「真にさーせんでしたぁぁぁああああ!!!」


久々のジャンピング土下座は膝が痛かった。

しかも余りにも勢いを付けすぎて飛び上がった時にトリプルアクセル決めちゃったけど気にしない!!


そんなロイズさんと俺の様子を見てジルストさんとアデーレさんは口を揃えてこう言った。


「「変人の似た者師弟だ」」

と。


それからジルストさん達に別れを告げてロイズさんは本当に闇市で買い物をし始めた。

その買い方はまるでセレブの如し!あれぇ、これぇ、それぇ、と買い捲った。

何気に俺も少し気になった商品があり自分の財布を取り出そうとした時、それに気付いたロイズさんが俺の気になっていた商品を手にとると、店主に御代を渡して俺の手に商品を乗せてくれる。

俺が直ぐに何か裏があるのではと思いつつお礼を言うと、ロイズさんは笑顔でどういたしましてと返した。

その時俺はこの人の本質がなんとなく分った気がした。

この人は懐に入れた者には優しく、それに比例してとことん弄り倒す人なんだと。

素直なんだが天邪鬼なんだか良く分らないロイズさんだが決して悪い人では無く、この性格はその優秀さから色んな厄介事を受け流すために作られた性格なんだろう。

周りは甚だ迷惑だけど。



その日の夜。

精霊達が異常なほど騒ぎ出し、それに呼応して俺の指輪も光りだした。

その光景を見たロイズさんは、正に黒い死神と深淵の悪魔を従えた悪夢の帝王の名に相応しい顔をして笑みを浮かべた。

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