第十二話 ルームメイト
「ねぇ、聞いていい?」
「なぁに?」
「何でお前がここにいるんだよ!!!」
それは15分前に遡る。
寮の部屋割りが発表されてすぐに寮に向かい、指定された部屋に入るとまだ誰もいなかった。
「結構良い部屋じゃないか。6人部屋だって聞いてすし詰め状態の部屋かなと思ったけど、かなり余裕がある部屋だし綺麗だ。どんな奴が来るのか楽しみだな公星」
「モッキュー」
そのまま10分ほど公星の毛並みをハンドブラシで整えつつ待っていたが、まだ同室のやつらが来ない。
うん。本当に来ないんだ。どう言う事?
「あれ?誰も来ないんだけど?どういうことよ。皆ほぼ一斉に部屋に向かったよね?俺部屋間違えた?それとも俺だけ一人部屋?え、マジ?」
ガチャ
急に不安になり扉を開け部屋の番号を確認してみると505と書いてある。
バタン
「合ってるじゃん、何で皆来ないの?初日から俺ハブり対象なの?公星、俺とお前二人きりらしいわ、二人で強く生きていk「コンコン」はーい、どうぞぉぉお!(涙)」
「君が同室の子かな?ところで何で泣いてるの?」
涙目というかほぼ泣いている俺の前に金髪青目のイケメンな子供が姿を現した。
「よがっだぁ……よがったよぉ……俺ハブられてなかった……部屋に着いて10分ほど待っても誰も来なかったから………とにかくありがとう」
「あ、そうなんだ。良く話が見えないけど、とりあえずよろしく」
その後続々とルームメイトになる子たちが入ってくる。
「これで4人目か、後2人だね」
「どうする?自己紹介しちゃう?」
「二度手間になるから皆揃った時のほうが良くないか?」
「それもそうだね、うん」
ガチャ
それもそうかと思った瞬間、扉が開く音がした。
他の奴等はノックして入ってきたが、今度の奴はノックなしかい!!
「あー!セボリーだ!!」
「お!ルピシー!!同室だったんだな」
ってお前かよ。ノックしなかった理由わかったし!お前だからだ。
5人目のルピシーが入って来るとほぼ同時に6人目も入ってくる。
「あら。知ってる顔がいるから安心したわぁ」
その瞬間、俺の脳みそは機能をほぼ停止させた。
「しかし3人も知ってる顔がそろうとは思わなかったぜ」
「そうねぇ。51人しかいない養い子なのに1部屋に3人も集まるなんてね」
「なっ!………なっ!……なっ!…なんでぇ!!?」
「どうしたの?」
俺は混乱しまくっている、何せ良く知っている顔がルピシーだけではなかったからだ。
「ねぇ、聞いていい?」
「なぁに?」
「なんでお前がここにいるんだよ!!!」
「何でってあんたと同じもの付いてるからに決まってるじゃない」
そこに立っていたのはゴンドリアだった。
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
「落ち着いたぁ?」
「落ち着くかこのボケェ!」
「え?マジで知らなかったのかセボリー?ゴンドリアが男だってこと」
「知らなかったし!知りたくなかったし!!公星、俺山に篭って木彫りの精霊像彫ってくるよ、お前も一緒についてきてくれるよね…」
「モキュー………」
「「まてぇい!!」」
「なに第一線から退いた老人みたいなこと行ってるのよ!!」
「お前の夢が若隠居だって知ってるけど、いくらなんでも急ぎすぎだろ!!」
うるせー、今の俺には癒しが必要なんだよ!!クソ糞くそ!!よくも騙したな!!!
「うるせー!お前のいつもの格好みたら誰だって勘違いするわぁ!!お前見た目は可愛いから将来は一緒に夫婦で服屋切り盛りしていくのも悪くないかな?っとか思った俺の………!俺の純情を返せぇぇぇえ!!!それにお前の名前がややこしいわ!!ゴンドリアってどっちかと言うと女の名前じゃねーか!!偽名か!偽名なのかコラァ!!!」
「知らないわよ!そんなこと!!あたしの名前はゴンドリック・リアードよ!それでゴンドリアなの!ゴンドリアは愛称!それにね、確かにあたしの女装癖と趣味はアブノーマルだけど、性的嗜好はノーマルよ!!恋愛対象は女の子だからね!!」
「「な…!?なんだってぇぇぇええ!」」
「うーん。なんか凄い子達と一緒の部屋になっちゃったね」
「うん」
「だな」
それから15分と少し、俺たちは漸く落ち着いて話が出来るようになった。
正確には5人は最初から落ち着いていて、俺一人がグロッキー状態だったわけだが…
「じゃあ、まず俺からな。ルピセウスだ。ルピシーと呼んでくれ。趣味は寝る事と食べる事と剣の訓練だ。よろくしな!」
相も変わらず大声である。小麦色の肌、こげ茶の髪に灰色の瞳をした腕白小僧が通りますよ。
「あたしはさっきも言ったけどゴンドリック・リアードよ。ゴンドリアって呼んで頂戴よろしくね。趣味は服作りよ。もし針仕事があったらあたしに言って頂戴、融通はするわ」
うっせーよ。黙れコノヤロォ………無駄にハニーブロンドにエメラルドグリーンの瞳しやがって!なんなんだその透き通る白い肌は!!とにかく俺に謝れ!この男女!あれ?女男?あ、もうどうでも良いです。もう考えたくない。
「セボリオンだ…セボリーって呼んでほしい………趣味は「裁縫よ」黙らっしゃい!!趣味は…物作りとピケットの世話です。よろしく……」
やばい、顔が濡れ…じゃなくてショックで声に力が出ない。
「僕はアルカンシエル・ランスロー。シエルと呼んで。趣味は読書と魔法構築式の研究だよ。よろしくね」
おお、イケメンだ。イケメンである。程よく焼けた白い肌、黄金色の髪の毛にコバルトブルーの瞳に甘いマスク。まだ6歳児だと言うのに将来色々困らなさそうなお顔をしてやがる。ケッ!
「私はヤンソンス・ラージャだ、ヤンと呼んでくれ。留学生としてフェスモデウスに来た。趣味は体を動かすことだ。よろしく頼む」
おお、なんか前世ではインドアーリア系の美形って感じの浅黒い肌、黒い髪にオレンジ色の瞳が特徴的な男の子だ。体育会系でルピシーとは合いそうだな。
「最後はぼくだね。ぼくはフェデリコ・エミリオス、フェディと呼んでくれて良いよ。趣味は薬草と毒草蒐集だよ。うん」
ふむ。一瞬気の弱そうに見える子だが、別に気は弱くないな。逆に結構危ない趣味をお持ちですねチミ。象牙色の肌に白い髪の毛、緑の瞳ででかい眼鏡をしている博士って感じの子ですな。
自己紹介も終わりこれから何をしようかと和やかに皆で話し合おうとした瞬間、俺のポケットから顔を出し鳴き声をあげる食いしん坊が降りました。
「モッキューーーーー!!」
「お、すまんすまん。お前の紹介忘れてたわ。すまないな公星」
公星が自分の紹介がまだだと知らせてくる。
「こいつはピケットの公星、俺の使い魔だ。色々ピケットとしてはおかしい奴だけどよろしく頼む」
「モッキュゥ!」
俺の周りを浮遊しながら飛び回り挨拶をしている。お前どうでも良いけど食べながら挨拶するのやめろ!!
「色々突っ込みどころが多いけど、とりあえずよろしくコ↑セ→だっけ?」
「コ↓セ→だ」
「コ↑セ↑?」
「コーセーだ。おい、前もこのやり取りやった記憶があるぞ」
「KOWSAY?」
「おい!やめろ!!トラウマが再発する!!!」
「しょうがないわねぇ。そういえば前にシャーラからセボリーがスカートを履きたがってるって聞いたんだけど、作ってみたから一緒に履きましょうね」
「履かねーよボケェ!!!」
「じゃあ、ルピシー履く?」
「いや、マジで勘弁」
「やっぱりセボリーに作ったんだから、セボリーが履いてね。はい」
「いらねーよぉぉおおお!!」
「なぁ、こいつら本当に大丈夫か?」
「サンティアスの子って結構な割合で個性的な面白い子が多いけど、情に厚くて良い子が多いから大丈夫だよ」
「面白いというかおかしいの間違いだと思うよ、うん」
こうして俺と5人のルームメイトが揃った。
将来、こいつらと腐れ縁になるとはこの時は夢にも思っていなかった。