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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百七話 呪縛への恨み(2017.12.20修正)

長い回廊を抜け階段を降りるとそこはエントランスホールのような場所になっていた。

そのホールもまた白の内装と赤いカーペットで統一されており、ホールを中心に壁にはいくつもの扉が配置されている。


ロイズさんに聞いてみるとどうやら各扉の奥に移転陣があり、24家の当主や大司教が会議などをする時に自分達の家の敷地から直接ここへ移転する時に使われるものらしい。

先程も聞いたが枢密院の議会場は水晶宮の中にある。

だがしかし驚くべき事に枢密院の議会場はこの移転陣でしか移転出来ないのだと言う。

勿論議会場の外へ出て水晶宮に行く事は出来るが、逆に水晶宮の中からこの議会場に行く事はほぼ出来ない。

何故ほぼなのかと言うと、宰相がこの議会場に来る時は水晶宮のとある場所から移転するからだ。

そのとある場所は宰相と帝佐、24家の当主と大司教しか知らないらしい。


なのでこの枢密院の議会場に入ったこと自体物凄くレアらしく、ロイズさんに中で起きた事や部屋の配置などは言っちゃ駄目だよと言われた。


うん。ツッコミ所満載だよね。

そもそも俺がこの場に居る事自体おかしい。

つまり見聞きしたくも無いものを強制的に見せられて脅されてるのと一緒やん。

何処の強請りだよ。


「大丈夫ですよ。言わないですし、言いたくもありません」

「それが賢明だね」

「いや、今俺がここに居る最大の要因の人に言われても…」


下手に突っ込むと俺に魔王の魔の手が降りかかるかも知れないからあまり強くいえないよぉ。


「セボリー。こっちに行こう」

「え?水晶宮から出て観光するんじゃ」

「僕シルヴィエンノープルは結構来てるから今更観光はねぇ」

「少しはやる気出して案内してくださいよ!」

「そう?じゃあ分った。何処が良い?ちょっと血の匂いがする闇市が良い?それとも酒と煙草の匂いが染み付いた賭博場でも行く?」

「もっと安全な所選べやぁぁああ!!」

「と言うのは冗談で。前世の記憶持ち同士語り合うこともあると思うから、あっちの部屋で話そうよ」

「ごめんなさい。本当に今日一日でどっと疲れました…」

「やだなぁ。まだ朝だよ?一日が始まったばっかり」

「……長い一日になりそうです」


俺はロイズさんに案内されて先程の議会場とは反対側の回廊を渡っている。

反対側といったがそれは体感的な言い様で、実際どっちの方向に進んでいるのか良くわからない。

何故かと言うとこの水晶宮、作りがとても複雑でまるで迷路のようだからだ。

恐らくは故意に迷路のようにしているのだと思うんだが、どうも落ち着かない。

しかしロイズさんはこの議会場の間取りを全て把握してるようで、俺が少し興味を惹かれた場所や箇所を見ると直ぐに説明をしてくれた。

暫く歩くとこげ茶色の扉の間に立ち止まり、ドアを開いて小さな待合室のような部屋へと俺を招きいれた。

部屋の中はソファーと机、本棚があるだけの本当にシンプルな部屋だ。

ロイズさんはソファーに座り俺にも席を促すと、何処からとも無く茶器を取り出して紅茶を入れてくれた。


「え!?待ってください!それは何処から出したんですか!?見たところ無限収納鞄マジックポーチからではないようですけど?」

「空間魔法で自分専用の異空間に仕舞ってあるんだよ。ただ媒介が無いだけで無限収納鞄マジックポーチと原理は同じ」

「………いや。俺もそれ試した事あるんですけど全く成功しなかったんですが…」

「慣れだね」

「慣れでそんな高等魔法使えるかぃ!」

「ははは。出来るよ」


うわ!その笑いむかつく!こんちくしょう!


「だって君はもうこの世界の言語とは違う魔法が使えるだろ?」

「っ!魔導陣…ですか」


ロイズさんは悪戯が成功したような顔で日本語を話し始めた。

この何年もアルゲア語で話していたもんだから頭で考える言葉もアルゲア語だった。

なので久しぶりに聞く日本語は何処か懐かしく、そして何とも不思議な感じがした。


「へぇ。魔導陣って呼んでるんだ。僕はそのまま日本語魔法って言ってたけど。今度からはそう呼ばせてもらうよ。気付いているかもしれないけど魔導陣は通常の魔法と違って消費魔力が物凄く少ない。そして少ない文字で強力な威力をもたらしてくれる。今までの魔法が馬鹿に思えるくらいのね」

「ロイズさん!話を聞かれたら!」

「大丈夫だよ。ここ防諜対策完璧だし、僕が魔法掛けておいたから聞かれる心配は無い。では今はそれは置いておいて改めて自己紹介でもしましょうかね」


そう言ってロイズさんは俺と公星の前にお茶と茶菓子を置いた。

思いっきり振り回されていて少し気に入らないがここは流れに乗っておこう。


「あ、ではまず俺から紹介させてください。改めましてセボリオンこと世堀公輔と申します。享年22歳の大学生でした」


うん。改めて前世の自分の名前を言うと少し恥ずかしいな。

何と言うか久しぶりすぎて少し違和感が…

最初はなんで名前が前世の苗字みたいなんだとか思ってたけど…


「はい、どうも。僕はロイゼルハイドことフィッツゼラルド・ロイド・晃良あきらだよ」

「………ほわっつ?何そのハイカラな名前」

「父親がイギリス人なんだよ。所謂ハーフだね。あ、ついでに日本国籍の享年107歳」

「大・往・生!!」

「生きた生きた。玄孫まで居たからね」

「何それ!?俺はまだ22歳の若い身空でしかも死因が毒殺ですよ!?不公平だぁぁあああ!!何故にバレンタインの義理チョコに毒が入ってて殺されなきゃあかんのじゃぁあああ!!」

「随分と面白い死に方してるね。それにお互い今世の名前が前世にちょっと被ってる」

「ですね…」


いや…マジで不公平なんですけど…

俺の人生まだこれからって時に殺されて、生まれ変わったらあのおっさんに嵌められて…

それに引き換えロイズさんはしっかり寿命で死んでるっぽい!不公平だ!!


「セボリーが死んだのっていつ?」

「2015年でした。やっと就職が決まって浮かれてました」

「僕は2093年なんだよねぇ。君のほうが早く死んでるのに僕のほうがこちらでも早く生まれてる。一体どんな仕組みなんだろうね」


おいおい。マジでどうなってるんだ。ロゼも転生者っぽいからもしかしたら俺より年上の可能性もあるってことだよな?

っておい!公星!いくら俺達の話に興味が無いからって俺の分の菓子まで食うんじゃねーよ!


「僕達が転生する前に何人か転生者が居たらしいよ。千何百年も前らしいけど」

「今、俺もう一人の転生者らしき人知ってます…」

「へぇ、それは初耳だ。どんな人だい?」

「エルストライエ侯爵の孫です」

「……エルストライエ侯爵に孫は2人……いや、3人か。ひとり外国に連れ出された子が居るって噂があった」

「その子です。ロザリアって言うんですけど…公星の事を見てハムスターって呼んだんですよ」

「ああ、ビンゴだね」


公星は自分の名前を呼ばれたのに気付き、菓子でいっぱいの頬袋をモグモグさせながら俺を見上げている。

そんな公星を見たロイズさんは何かを思い出したかのように呟く。


「あ~。そうだ。使い魔で思い出した。僕の使い魔も紹介するよ。おいで」


ロイズさんがそう呼びかけるといきなり黒い影が現れた。

ああ、これは…


「この子が僕の使い魔の界座かいざだよ。界座、この子はセボリオンとその使い魔の公星。界座、匂いをちゃんと覚えておいてね」

「ウォン!!」


そう、それは大きな漆黒の狼。

明らかに頭が俺が立った時の目線より高い。2メートル以上あるんじゃないだろうか。

瞳の色もロイズさんと同じ色のサファイアブルーでとても神秘的だ。


おいおい、俺今160センチ弱だけどこれはでかすぎだろ…

でも…カッコいい!!


「うわぁ!でっかい!カッコいい!触ってもいいですか!?」

「界座良いかい?」

「ウォン」


許可が出たので俺は界座に抱きつく。

界座も俺が抱きつきやすいように首を下げてくれた。

すごい……もふもふです。


「もふもふ~。幸せだ…」

「モキュ!モキュキュキュキュキュ!!!」

「だってお前以外の動物と触れ合うの久しぶりなんだもん」

「界座もセボリーの事気に入ったようだね。気に入らないと噛み付くし」

「こわ!!」

「大丈夫大丈夫。ウィルなんていつも噛まれてるから。いつも界座で遊ぶから界座もウィルで遊んでるんだよ。所謂甘噛み?それに本当に気に入らなかったら目も合わせないし」

「ああ!!俺もハムハムの呪縛が無ければ…」

「ハムハムの呪縛?何それ?」


俺がハムハムのスキルを説明したらロイズさんおなかを抱えて爆笑し始めたよ!

オイ!笑うな!説明したら絶対に笑われるって分ってたけど、やっぱりやりきれん!!!

それに聞いてみたらロイズさんの使い魔は界座だけじゃないらしい。

しかも縛りプレイが無いってよ!!

コラァ!責任者出て来いやぁああ!!今なら半殺しで許してやるから!!!

いや、やっぱり8分殺しで許すからマジでこっちこいやぁぁぁあああ!!!


「チクショーーーー!!こんなの絶対に不公平だぁぁぁぁあああああ!!!」

「モキュキュキュキュキュキューーーー!!!」

「いやぁ、本当に面白い。セボリーさいこーう」


俺の魂の叫びは、公星の抗議の声とロイズさんの笑い声と一緒に部屋の中で人知れず消えて行った。

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