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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第百一話 突然の拉致(2017.12.19修正)

しかし美味しかった。

こんなに幸せな気分になれたのは何時位ぶりであろうか。

公星も満足なのか腹を上にして寝転がっている。

満腹状態の腹をさすり幸せの余韻に浸っている俺はふと気が付く。


あれ?この究極の和食の朝食に気を取られていたけどこれを作れるって事は…


そう思いロイズさんのほうを見ると…


『まだ内緒ね』


と俺の頭に響いてきた。

これはエルドラドで会ったヴァールカッサの会話と同じような感覚だ。


「そうだ、忘れる所だったよ。ウィル、君に用事があったんだ」

「ん?用事?一体何のだ?」


驚愕する俺に微笑をくれつつロイズさんはウィルさんに話しかけた。

その顔は今にも噴出すのを我慢して居るような顔である。


「それはね」


ロイズさんがそう言った瞬間にロイズさんと俺達の周りにでかい魔法陣が展開される。

俺は何が起こっているのかわからず硬直するが、ウィルさんはそれに反応して距離をとろうとする。


拘束バインド


が、ウィルさんが動き出す前よりロイズさん行動のほうが早い。

ウィルさんの体が光の鎖のようなもので覆いつくされ、瞬く間に身動きが取れない状態になった。


「ロ、ロイズ!お前何を…」

「暴れても無駄だよ。元々君より僕のほうが強いんだから。まぁ魔法構築式を指導してくれたのは君だけどね」

「良く言うわ!初等部入学で初めて会って最初教えてたのは俺なのに、その半年後には俺のほうが教わってたじゃねーか!!」

「あれ?そうだったっけ?」

「おい!何すっ呆けてんだ!早く離せよ!」


この二人だからなのかいまいち緊迫感が伝わってこない。

普通ならもっと張り詰めた空気とか出るはずなんだけど…


「大丈夫だよ。危害は加える気ないから」


何がどうなっているか分らない俺は、その光景を見ているだけしか出来なかった。


「じゃあ行こうか。移転」


拘束から抜け出そうともがいているウィルさんを見ながらロイズさんがそう言った瞬間、俺達の姿は学園都市から消えた。









「これで良し」

「うぉ!眩しい!!ってここ何処ぞ?」


何処に向かって移転したのか判らないが、閉じていた目を開けた瞬間眩い光が俺の目を刺す。

薄暗い所からいきなり明るいところに移転するものだからまだ目が慣れていない。

びっくりしてロイズさんの声がするほうを見ると、そこには両手では数え切れない程の人間が円卓に座っていた。


「え?」

「依頼はこれでよろしいですね?公爵様」

「ああ。ご苦労だった」


ロイズさんの問いに答えたのは何を隠そうアライアス公爵様その人であった。

他にも俺の知っている顔ではエルトウェリオン公爵様、ホーエンハイム公爵様、エルストライエ侯爵様が顔を並べている。


「いえいえ。さて。セボリーあっちに行こうか」

「へ?」


ロイズさんはアライアス公爵に言葉を返すと俺の肩に手を置いて微笑んだ。


目も光に慣れるとここが建物の中だと気付く。

その空間はとても広く白一色の内装で床や壁、天井の材質はまるで白大理石で作られているようだ。

どこか司教座やエルドラドのエルトウェリオン邸と被る雰囲気、そう神聖な雰囲気がする場所だと感じる。

ふと上を見ると膨大な数の精霊たちが舞い踊っていた。


「久しいなセボリー」


円卓のほうへと歩いていると、呆けながら歩いている俺にエルトウェリオン公爵が挨拶をしてくる。


「…あ、え?あ、どうも…」


微笑みながらこちらに手を振るエルストライエ侯爵の姿も見えるが、俺はまだ状況を把握できていないせいか上手く言葉が出ない。


「え…え?あのぉ。ちょっと?一体何がどうなってるんですか?」

「さぁ、セボリオンもこちらへ来なさい」

「帝佐様?」


戸惑っている俺に懐かしい声が聞こえてくる。

聖育院じっかに居たときは毎月見ていた帝佐様の姿を見て少し心が落ち着いた。


「お久しぶりです、少し背が伸びましたね。ロイゼルハイドも元気そうだ」

「帝佐閣下にはご機嫌麗しゅう。宰相閣下と大司教猊下もお揃いとは。24家のご当主様方もお元気そうで何よりです」


その言葉に俺は驚き目を見開き呼吸を止めた。

円卓に座っている人達は面白そうに俺を見ている。

円卓の人達だけではなく、宰相や大司教と思しき人達も俺の事を見ていた。


そうか…この人達がこの国を支える24家の当主と宰相閣下…あと…

ロイズさんが大司教と言っていたが、あの人が副院長を嵌めて聖職者にした張本人…立派な杖を持ち聖職者特有の服を着ているあの少し歳を召した感じの女性がそうなのだろうか…

しかしあんた達そんな目で俺を見るな!俺はまな板の鯉かよ!

だがどうやら本当のまな板の上の鯉は俺ではなかったようだ。


「……っ!!ンンーーーーー!!!」


ウィルさんが何かに気付いたのか必死に叫んでいるが、いつの間にか猿轡のようなもので口を塞がれているため何を言っているのか全く分らない。

だがその表情は今まで見てきたウィルさんの表情の中でも一番必死であり一切のおふざけ感が全く無く、どこか売られていく子牛のような顔をしていた。


「ウィル。そろそろ覚悟決めたら?」

「ンン!?ンンンーーー!!!」


ロイズさんの言葉に首を振り恨めしそうに睨みながら叫ぶウィルさん。

そんなウィルさんなど何処吹く風と楽しそうな顔で笑っているロイズさん。


あれ?なんかこういう光景見たことあるな?

あ、そうか!俺が副院長に嵌められた時の雰囲気に似てる!!


なんとなく読めてきた状況だが確認のために問いかけてみようかな。


「あの…これは何の集まりなんでしょうか?」


俺の問いに円卓の数名が堪え切れなかったのか忍び笑いを上げる。

そしてホーエンハイム公爵が指と指を組んだ体勢で俺の問いに答えをくれた。


「次代アライアス公爵家当主候補の顔見世だ」

「顔見世…ですか?」

「正確に言うならフェスモデウス聖帝国24家アライアス公爵新当主選定の話し合いの場だ」


その言葉に反応したのはウィルさんだけであった。

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