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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第二章 歩みの章
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第十一話 入学(2016.7.30修正)

よし、制服も教材も鞄の中にいれたし、服も必要な分は入っている。

大事なものも入っているし、学園に提出する公星の使い魔契約証明書類もいれた。

コレが無いと公星と一緒にいられないから大事だわ。


「モキュキュ!」

「ああ、そうだった。お前の寝床の籠を忘れるところだったよ。ありがとな公星」

「モッキュー」


俺と公星は支度をして忘れ物がないか確認をし、大部屋へと入っていく。

部屋に入るとすでに何人か集まっていた。


「セボリー、一緒の寮になれると良いな」

「どうなるか分からないけどね。出来たら気心が知れてる奴がいいよ」

「それはそうだねぇ。僕もう口から何かが出そうだよ。これから入学だって言うのに」


部屋に入ってすぐルピシーとロベルトが話しかけてきた。


「しっかし、学園では出来るだけ苗字を名乗らないほうが良いって聞いたけど、理由は何だっけか?」

「ルピシーわすれたの?学園内で学生は皆が平等に接することが出来るように、皆苗字は隠しはしないけど余り言わないのが普通だって聞いたじゃないか。別に禁止はされてないらしいけど。先生や上級生は出来るだけ敬えってのは聞くけどさ」

「まぁ、ルピシーだしな。好き好んで苗字を言いたがるのは留学生か、一代貴族の子供の勘違いぼんぼんか、世襲貴族の系譜の子供の中でも頭が偉い事になってる奴位だって聞いたぞ。子供が問題を起こして親の一代貴族が国に爵位を返納したって話結構聞く話だし」

「なんだよ、その俺だからって!!」

「「「だってルピシーじゃん」」」

「モキュキュ」

「ひでぇ…コーセーにもそう認識されてたのか……」


はい、ルピシーいじり完了!

その瞬間扉が開いた。


「皆集まりましたね」


珍しく院長先生が姿を現す。

先生たちと今年度入学する51名が集った

弟妹たちとは昨日の時点で別れは済ませているのでこの場にはいない。皆目には涙を浮かべている。

幽かな記憶が残っているが、俺たちが兄姉を送り出すときもあんな感じだったような気がするな。


「皆さんは今日から聖育院をでます。しかしそれは卒業と言う形ではありません。新たな旅立ちに向かって巣立つための準備をする過程です。サンティアス聖育院は止まり木です。長く飛ぶための休息に必要な場所なのです。小さな木でも月日が流れ成長すれば大木となります。最初は少しの小鳥しかその身に停まらせることは出来ない小さな木でも、やがては様々な命を育む大木となります。あなたたちが鳥になるか木になるか、または違うものになるかはわかりません。ですが、私たちはあなた達に必要なところであり続けます。そしてあなた達も誰かの必要なところになれる大人になってください。どうか健やかに、あなたたちに精霊のご加護と恩寵がありますように」


院長がそう言うと兄弟たちは泣き出した。

ヤバイ、俺も泣きそうだ………

俺が必死で涙を堪えていると、次に副院長が話し始めた。


「皆おめでとう。院長先生が仰ったようにどうか健やかであれ。無茶はしても良いが無理はするな。お前たちが傷つけば悲しいと思う人がたくさんいることを忘れるな。いつでも帰って来い、ここはお前たちの家なのだからな」


トドメとばかりの副院長の言葉で涙腺が崩壊しました。誰だよたまねぎをみじん切りにしてる奴!!!


「キュ…モキュ……」


何故に公星も泣いているのだか…まぁ、お前副院長になついてたもんな。

そういえば、副院長にはお世話になった記憶しかない。

時たまイラっとする事もあったがいつも俺たちの事を考えてくれていた。

ああ、この世界での俺の親父は副院長だったんだな…


ありがとう親父


そう思うと余計に涙は溢れ出た。感情に押されるようにずっと……ずっと……








皆一通り泣き終わり移転魔方陣へ移動する。


「学園前の移転陣についたら学園の案内人の先生がいますので、その人についていきなさい。くれぐれも騒がないこと。分かりましたね」

「「「「はい」」」」

「あなたたちに精霊のご加護がありますように」


「それじゃあ、行きますよ。『io@+%<H=(サンティアス学園前)'|*+Я』」


一瞬にして移動し前にも見た光景が広がる。そのとき


「「入学おめでとうございます」」


男女二人組みが声を掛けてきた。


「私たちは案内役の教員よ。女子は私のほうについてきなさい。先に荷物を寮に置いておきます」

「そういうこと。それじゃあ男子は僕のほうについてきて、案内するから」


女性の先生は真紅の髪に青い目の気の強そうな人で、男性の先生は蒼い髪に赤い瞳の優しそうな顔をしていた。

性別と顔は違うけどなんとなく似ているな、血縁者だろうか。

俺は当然男なので男性の教員のほうへ付いていく。


「まず寮のウェルカムスペースに入ってもらうから、そこで制服に着替えてね。あー、そうそう忘れてた。僕の名前はアルフジーン・ゼジル・ピレーだよ。さっきいた女の教員は僕の双子の妹でイルハジーナ・ジゼル・ピレーだ。よろしく」


人懐っこそうだが気だるい笑顔を向けて自己紹介をしてくれる。


ああ。似てると思ったらやっぱり兄妹でしたか。


「さて、着替え終わったら早速生いきましょうかね。今年の入学生徒数は例年とほぼ同じの1185人。皆顔と名前覚えるの大変だと思うけどがんばってね。僕たち教員はもう半ばあきらめちゃってるけどね」


あははと笑っているがそれ暴露して良いのか?教員として。



そうそう。制服と言えば、制服はロディアスさんがわざわざ院まで届けにきてくれたんだ。


「前測った体型で作ったけど、もし体型が変わってもちゃんと変わるように作っておいたから心配要らないよ。もし不具合があったら僕の工房に来てくれれば直してあげるからね」


とまた太陽のような笑い顔で笑っていたっけ。

ゴンドリアのテンションはここでは言うのを控える…言わなくても分かるだろうから。

制服は白い詰襟型のシャツにに青いベスト、えんじ色のジャケットに紺色のパンツでブレザータイプだった。付属としてフードの付いた茶色い白衣のようなローブコートが付いていた。

女子も男子も同じ制服で皆パンツタイプである。


さて。俺はここで声高々に異議を唱えたい。

何で!?何でだよ!!

なんで女子がスカートタイプではないのだ!!!ちくせう!!


そんな俺の顔をとある女子が良い笑顔で見ている。

俺はそれに気付き慌てて視線を逸らした。

何故逸らしたかと言うと制服がスカートではないと知った時の俺とその女子の言い争いからきている。

その言い争いとは……


「寒い日にスカートなんて履いていたら病気になるわよ。馬鹿じゃないの?」

「でも!可愛いじゃないか!!」

「可愛いだけで全てが済まされたら世の中終わりよ、大体この国は男女平等なんだから私たちがスカート履くんだったらあんた達男もスカート履くことになるわよ」

「うぐぐ……」

「まぁ、男がスカート履くのもこの国では自由だけど、どうしてもスカート履きたいのならセボリーが履けば?絶対にゴンドリアあたりがアップし始めるし、私達も盛大に笑って応援してあげるわよ」


そんな言い争いと言うかやり取りがあり、あえなく俺の夢は潰えました。

知ってる?人の夢と書いて儚いって読むんだよ。

俺の前世のトラウマが…中等部からはある程度服装が自由になるそうだからそちらに期待します。トホホ…


寮を出てしばらく歩くと、もの凄く立派な門が見えいてきた。

しかし、門自体には扉が付いていないし警備員の姿も無い。


「あれ、やっぱりまだ女子は来てないか。はーい、皆注目~。これから学園内に君たちの承認をさせます。もう書類は保護者さんが出したと思うからそっちの壁に向かって手を触れながら自分の名前を言ってみて。ああ、名前は頭の中で言う感じで良いから」

「……~~~~~っ!!!」


先生のその言葉に兄弟の一人が恐る恐る手を付いて自分の名前を言った瞬間、兄弟の手の辺りが光り良く分からない小さい魔方陣が兄弟の頭の上に浮遊してすぐ消えた。


「はい、承認終わり。皆ちゃっちゃと終わらせて中へ入ろう」


次々と承認して終わらせ全ての兄弟が承認を終わらせると「皆終わったね。じゃぁ中に入ろうか」と言って門に近づいく。


「先生、門に扉が無いのになんでこんなことしたんですか?」

「あー、面倒くさいから説明するの忘れてた」

「アルフ……あんた面倒くさがりもいい加減にしなさいよ。その言い方だと故意に説明しなかったって聞こえるし、大事なことなんだからちゃんと説明しなさいよ」


お、どうやら女子も着替え終わったようだ。


「ちょうどいいわ。そこのあなた、この門をくぐりなさい」

「え?私ですか?」

「そうよ」


先生の近くにいた女の兄弟が指名され門をくぐろうとした瞬間、その子は何かに阻まれるようにして止まった。


「あれ?あれ?なんで?通れない?」

「じゃあ、門に手をついて名前を言って承認が終わった後にまた門をくぐりなさい」


承認が終わり恐る恐る門に近づき意を決したようにくぐった。


「………あ」

「皆わかったわね。この門は『通過承認の門』といって登録していない人が通ろうとすると見えない壁によって通行が妨げられる仕組みになっているのよ」

「これは浮遊魔法で門の上から通ろうとしても同じだよ。この門の塀があるところが学園の中枢、つまり学びの場所なんだ。だから登録していないと入れない。過去に登録している人でも何年か通っていなかったら入れなくなるしね。まー、考えようによっては悪意のあるものでも登録承認さえされれば通れるって言うザル警備なんだけどね」

「その悪意のあるものでもさっき頭の上に出た魔法陣で色々なことを調べられるから、全てパスってわけでもないわよ。現に在校生でも他国の暗殺者を手引きしようとして入れなくなって退学していったけど」

「流石に暗殺者とかはやばいけどスパイの手引きくらいだったら別にどうって事無いしね」


色々ぶっちゃける兄妹だな……ある意味これは脅しと一緒だぞ。ああ、脅しなのか。


「まぁ、良いから早く入って。正直面倒くさいから」


イルハジーナ先生とやらは顔を下に向け盛大なため息をついく。


「ちょっといい加減にやる気出しなさいよ!」

「イルハもうちょっとテンション抑えたら?」

「あんたがテンション低すぎるだけよ!!」


この学園の人たちってなんでこんなに芸人殺しがいるんだ。俺は真面目な子だからよくわかりません。「モキュキュキュキュー」誰が真面目だってと聞こえたような気がしたが無視無視。


学園内の学舎に入り、まるで公会堂のようなスペースに教員や在学生たちが待っていた。

初等科だけでも生徒が約6000人以上いるから全ての人が集まってはいないが、多分何かの代表者らしき人たちが来ているのだろう。ざっと見ただけで300人はいる。

俺たち聖育院の新入生のほかに留学生や一般の子達も集まってきたようだ。


大人たちが何かを確認し終えると壇上に年かさの女の人が上がり、演説を始めだす。


「皆、今年もまた新たな新入生が入ってきた。困っている下級生がいたのなら手を貸しなさい。それもあなた達の力になる時が来ます。新入生の諸君もわれわれ職員や上級生の話を良く聞き規律を守り、弱きものは助け、ありとあらゆる事を学んでゆきなさい。それでは終了とします」


早いな、てっきり前世の一般的な『校長先生のありがたいお話』のように長々しいものだと思ったのだが……


「はい、じゃあ新入生男子はこちらのほうへ来なさい。寮の部屋割りを発表します」


そういえば簡単に考えて男子生徒だけでも3000人以上もいるのに、さっき行った寮はそんなに大きくなかったぞ?どうゆうことだ。


「顔を見る限り何人かは寮のことで疑問を抱いてることは分かる。だがここは天下のサンティアス学園だぞ。空間系の魔法使いがいることを忘れてくれては困るな。見た目は何の変哲も無い3階建ての普通の建物だが、中は15階建てだ。移動も階段と移転陣がある。」


うわぁ、そのドヤ顔うぜぇ!


「空間系の魔法は消費魔力も多ければ効力も長くないと聞いたんですが、一々掛けなおしてるんですか?」


疑問に思い質問してみた。


「おお、いい質問だ。精霊たちの力を借りて建物自体が魔道具マジックアイテムのようになっていてな。消費魔力は住んでいる生徒達が無意識に発する微弱な魔力を取り込んで維持しているんだ」


なんつーかハイテクだな…


「さぁ自分の部屋の番号が確認できたら各自寮に戻りなさい。では発表するぞ。パチンッ」


なんだその指鳴らし!やっぱりうぜぇ。あ、でも何も無かった空間に文字が出てきたぞ。

さっきのうざい指ぱっちんが発動の合図だったのか?

まぁ良い、それよりも部屋割りだ。セボリオンセボリオンっと……あった何々、505号室か。

どんなルームメイトになるのやら…


「楽しみだな公星」

「モッキュー」

「ってお前!俺の新品の制服のポケットの中で餌食って汚すなよ!!」


こうして俺の学園生活は幕をあけた

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