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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第五章 進化への種の章
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第九十七話 シエルの武器(2017.12.17修正)

シエルの武器の実験をする前から疲労を感じつつ、俺達は10階層の奥へと歩き出した。


「そう言えば僕10階層来るの初めてだった」

「私もそうだな」


シエルとヤンは今回が初10階層である。

なぜかと言うとヤンはカレー店、シエルは色々と忙しかったらしい。


「あれ?そうだったの?あ~そうかぁ、俺も始めて10階層に来た時はあの事件の始まりだったからなぁ」


ぶっちゃけ言って今現在、迷宮冒険者と商会の仕事どちらが儲かるかと言うと商会である。

服や護符アミュレットは勿論、俺が偶然作り出した自動水生成水筒などでかなり儲かっている。

なので実は態々迷宮に潜る必要も無いのだが、ここはやっぱり男の性なのか戦闘にあこがれている部分もあった。


「そういえばシエル。お前の武器長い事掛かって漸くここまで来たらしいが、何でこんなに時間掛かったんだ?」

「あ~…ほら。セボリー達が僕の家に来た時にさ、ウィル兄さんに稽古つけてもらったときあったでしょ?あの時に言われた言葉で一から作り直したんだよ」

「あ~…あれか」


そう言えばシエルはウィルさんに本型の武器はやめておけみたいな事言われてた気がする。

多分俺の精霊聖典レメゲトンと兄弟武器みたいな形で作ろうと思っていたのだろうが、防御力の点からそれをやめたのだろう。

まぁ俺の精霊聖典レメゲトンも防御力や耐久性の問題があったが、魔導陣のおかげで大分改善した。


「で、どんなの作ったんだ?俺に魔導陣の構築式書かせてから全くノータッチだったから結構気になるんだけど」

「ふふふ。それはね」

「おい、二人とも。そろそろ敵が来るぞ」


ルピシーが開会を鳴らすと直ぐにモンスターが現れた。


ブルヒヒヒィ。ガシッガシッ


そこには巨大な猪のようなモンスターが蹄で地面を抉っていた。


精霊聖典開封レメゲトンオープン保護プロテクト


今日はあくまでもシエルの武器の実験なので出しゃばらず、最小限のバックアップに努めた。

他のメンバーもそれを分っているのか、各自準備をしている、


「ふぅ…護聖星剣(ピカトリクス)


緊張を解す様に短い溜息を付いた後、シエルは無限収納鞄マジックポーチから無数の武器を取り出して宙に放った。

数は7つ大きさは人の顔程度で、一見チャクラムのように思えたがどうやら少し違うようだ。

シエルの周りを護り囲むように周回している。


「行け」


シエルの言葉に反応するように3つの武器がモンスターへ勢い良く飛んでいく。

残りの4つはまだシエルの周りを周回していた。


そこからはまるでコロッセオで剣闘士の戦闘を見ているようであった。

シエルの武器が次々に刺さっては抜け、挑発しては光のビームらしき物を出してモンスターにダメージを与えていったのだ。

モンスターが俺達のほうへ突進してこようとすると、シエルの周りの武器が1つ残り他の6つが合体するように重なってモンスターの行く手を塞いだ。


ブヒィ…


ドスゥゥウンと言う音を立ててモンスターが倒れ、死んだ事を確認するとシエルの所まで戻りまた周回し始める。


「まあまあかなぁ…?」

「結構えげつない武器だったでござる」

「ふむ、攻守共にバランスは取れているが一回で仕留められないのが少し残念だな」

「でも相手するほうはうざったい武器だと思うぞ」


各々意見を言っているとシエルは苦笑した。


「一応もっと攻撃的なことも出来るんだけどね、これひとつひとつの操作がちょっと難しいんだよ。セボリーの精霊聖典レメゲトンのように自動的に動いてくれる訳じゃないからまだ改良の余地ありだね」

「それってチャクラム?」

「チャクラムって何だい?」

「え~っと…」


俺も良く知らなかったから攻撃的な輪投げと言っておいた。

しかしなんとなく雰囲気は伝わったらしく、顎に手を置き考えている。


「ん~、ちょっと似ているね。僕のは攻守両方出来る武器って考えたらこんな形になったんだ。裂いたり抉ったり防御したり、魔力を溜め込んで光魔法を出したりと結構実用的に作ったつもりなんだけど。今度ウィル兄さんにも見せてみようかな…」

「それが良いかもな」


その後もモンスターを狩ってシエルは武器の実験を終え、数時間俺達は10階層でモンスターを狩り続け満足したので戻ることにした。

そして狩って来たモンスターの部位を換金するために迷宮事務所へ寄ると、そこには見慣れた姿の人物が立っていたのである。


「噂をすれば影ですな。まさかここでウィルさんに会うとは」

「おいおい。俺も迷宮冒険者なんだからここで会って当然だろうが」

「あ~そう言えばウィルさん迷宮冒険者でしたよね。完全に忘れてました」

「忘れるんじゃねーよ」

「だって、連れて行ってくれるお店全て俺が入店断られる程のエロマスターでしょ?ずっとああいう所で過ごしてるのかとぁ思って」

「……嫌味かよ」

「イヤミジャナイデスヨ、ジジツデス」

「なんでカタコトなんだよ!」

「うっせー!威張るなら俺が入れる癒しの店へ連れて行けやぁ!」


ぶっちゃけ周りの目なんて気にしない。気にしたら負けだ。

横で似た物師弟とか呟いているカレーの王子様や欠伸をしている貴公子、俺達を無視して換金所にいった輝くイケメン公子など知るもんか。


「あー、ったく分った分った。今度本当によい店につれてってやるよ。つーかお前と同じ立場の人間のところに連れてってやる」

「ん?俺と同じ立場…ですか?」

「ああ、そうだ。結構前に言っただろ、無臭香玉の奴の所だ」

「お~」


そういえばそんな消臭剤みたいな人の存在忘れてた。

前にウィルさんの奢りで連れて行ってくれるって聞いたっきり全く話題にも出ていなかったからな。


「そいつにも許可取ったし、明日開いてるか?」

「開いてますよ」

「そーか、じゃあ付いて来い。あ、許可取ったのセボリーだけだから悪いんだがお前等は留守番だぞ」

「ええ!?ウィルさんそれはねーよ!俺だって楽しみにしてたんだぞ!!」

「今度許可取って来てやるから騒ぐな」


って言うか許可貰わないと入れない飲食店って何ぞや。

ちょっと怪しい感じの会員制レストランとか?

ヤダ!そう思ったらボクチンちょっとワクワクしてきたぞぉ!


「ルピシー悪いな。でもそいつもサンティアスの養い子だったから許可取れば大丈夫だと思うぞ」

「本当っすか!?セボリー!絶対許可取って来てくれ!そして奢ってくれ!!」

「やっぱそっちかーーー!!」


俺を差し置いてコントを繰り広げる二人を見ていると、シエルも戻ってきた。


「まだやってたんだ。でもそろそろ遅いから帰ろう。結構良いお金になったしね」

「そうだな」

「ああ、そうしよう」

「あ!セボリー!明日朝5時半に迷宮事務所前に集合な」

「はや!!」


こうして俺はウィルさんのお友達に合うこととなった。

そしてそのお友達は俺の第二の師匠的な存在になるのだが…

この出会いの場によって、俺ではなくウィルさんの人生が大きく揺れ動かされた事は間違いない事であった。

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