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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第四章 新たなる出会いの章
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第九十二話 何それ美味しいの?(2017.12.11修正)

「汝を助祭の位に叙階する」


漸く寝起きから覚醒したばかりの頭は、副院長の言葉で完全に停止した。


「………………はぃ?」

「位は助祭だが、正式に『ラ』の称号が名乗れるのは成人してからになる。自分自身を、そしてまわりを守れる力が付いてから名乗る事を許す。助祭の位はそれだけ重いと考えよ」

「……え?ちょ!ちょっと待って下さい!どう言う事ですか!!?つーか勝手に話し進めんといて!?」

「なんだ?任命式でもやって欲しいのか?面倒くさいからやらんぞ」

「だから一人で話し進めんじゃねーよ!しかも面倒くさい言うな!とりあえず段階をおって説明してください」


停止した頭を必死で再起動させて、何でそうなったかを問いただす。


「お前はあの時、囚魂とらわれびとを浄化し黒鎖から解放させただろう。だからだ」

「はぁ?それじゃわかんねーよ、何がだからじゃ!まぁ、確かにやったと思いますよ。はっきりとは覚えてませんが…それで何でそこに繋がるんですか?」

「精霊の祝福だ」

「へ?何でそこで精霊の祝福が出てくるの?」

「哀れな囚われし魂を安らぎの場所へと誘う事が出来るのは、精霊の祝福とそれに順ずる助祭以上の者が行える奇跡の業だけだ。お前はそれをやってのけた」

「………え~っとつまり、話をまとめると。俺が無意識のうちに精霊の祝福や奇跡とやらを発動して見せた。実はそれって結構凄い事で、それを出来ると教団内である一定の位になることができる。で、それがラングニール先生から副院長に話が伝わって助祭の資格発生を確認。そんでもって今現在ってことでOK?」

「正確には違うが概ねそうだ。おーけーと言う言葉はわからなんがな」

「いらねーよ!!そんな称号!!」


いや、マジでいらないんだけど。

助祭の称号貰ったって何も嬉しくないし、実利もなさそうだしさ。

なんかどんどん俺の意思に反して深みに嵌っていく気がするよママン。


「お前は貰える物ならとりあえず貰っておくと言う性格っぽいがな」

「否定はしませんけど、ぶっちゃけ自分に害の出そうな物はいりません」

「助祭からは教団から年金が支給されるが」

「貰っておいちゃおうかなぁ」


え?マジで?年金出るの?それならお話は別だ!YOUやっちゃいなよ的な?

あ、でもなんか嫌な予感がするわ…

思わず口に出しちゃったけど、言った瞬間悪寒が走ったんですけど!?


「その代わり教団や国からの依頼で借り出されることもあるがな」

「やっぱりいりません」

「もう遅い。教団の聖職者管理名簿にはお前の名前と役職の称号が既に記されている」

「手遅れじゃねーかよ!って言うか何時の間に書き込みやがった!!」

「お前が気持ち良さそうに寝ていた時だな」

「事後報告にも程があるわぁ!拒否権くらい行使させろやぁあー!!」

「そんな物お前にあると思うか?私が直接アルゲア教大本山アルグムン大司教座聖堂に足を運んで登録を済ませて置いた。お前は既に誠実なる聖玉イリクリニスバイブル で記帳されているのでな、スムーズに事が終わったぞ」

「終わったぞ、じゃねーよ!何勝手にやってんだよ!!それに拒否権あるだろ普通!誰だって思うわ!!当然の権利じゃねーか!つーかやっぱり結局全部あんたが諸悪の根源じゃん!!俺の人権は何処に行ったんだよ!!」


やっぱり裏があったし!裏どころか表も含めて丸々真っ黒じゃねーか!!

それどころか何「回覧板だしておいたよ」的なノリで俺の名前書き込んどんねん!!

この国の重鎮達に俺の事言い触らしてた件で前々から思ってたけど、俺は回し読みのフリーペーパーじゃねーぞ!!


「兎に角今すぐ取り消してきてください!」

「だが、断る」

「うぜぇええ!」

「依頼だからそれなりの給金はでるがな」

「でも微々たる物でしょ?」

「分ってるじゃないか」

「やっぱりいらねーよぉお!!」


マジで返す!いらん!端た金を馬鹿にする気はないが、非常に面倒くさそうな事はノーサンキューだ!

それに受けたが最後、骨の髄までしゃぶられるように扱き使われそうだから絶対嫌だ!!

ん?まてよ?あれか!?ラングニール先生がこの件で借り出されたのってこれなのか!?


「あのぉ、もしかしてラングニール先生がこの件でいたのって…」

「ああ、お前の察しの通りそうだ。だが、お前がいたので無意味になったがな」

「は?何故にですか?」

「元々あいつの依頼任務は魂の浄化だ。もし新たな犠牲者が出た時の為に借り出されたと言う訳だ、警備はおまけだな。つまりお前はあいつの仕事を横取りして、尚且つあいつと同じ助祭に成り上がったと言うわけだな。おめでとうとでも言っておくか?」

「全然目出度くも嬉しくも無いわい!!」

「まぁ、あいつもそろそろ司祭に叙階されそうだがな」

「へぇ。そうなんだ、って何でラングニール先生本人が知らないっぽい事俺に先に話すんですか!」

「将来お前のほうが出世しそうだからな、聖職者として」

「それこそ何も嬉しくないわぁあ!!」


人生諦めは大事だってウィルさんに言ったけど、諦め無い事も大事だ。

ぜってー聖職者にはならん!俺はならんぞ!!

商売してがっぽり金を稼いで20代半ばには若隠居するんだい!!


「どうせお前のことだから聖職者になんてならない、若隠居してのんびり楽しく暮らすんだ、とか思っているのだろ?なら若隠居してから聖職者になればいいことだ。教団のお歴々が手薬煉を引いてお前を待っているぞ」

「人の心を読むなし!!それにそんな手薬煉は公星に食ってもらうわ!な!?公星」

「スピー……モキュ?………グーー………スピー…」

「こんな大事な局面カットで寝てるんじゃねーよ!ボケェ!!!」


こんな大声で話し合ってるのに、公星の奴ときたら暢気に寝てやがる!!

チッキショー!俺だって寝込みたいわ!公星が…ピケットが羨ましい!!

ん?まてよ?そうか!俺は将来ピケットになるんだ!そうしたらいっぱい食べれていっぱい眠れるぞ!

パラダイスじゃないか!良し!若隠居じゃなくてピケットを目指してハムハム道を突き進むぞ!!

って!なれるかい!ヴォケェ!

現実逃避をしたくて何血迷ってるんだ俺は!!


「では、伝える事は伝えたからな。私は職務に戻る。こう見えても私は忙しいんだ」

「その割には楽しそうな笑顔を浮かべて俺で遊んでんじゃないですか!っておい!ちょっと待って!これ以上の説明なし!?マジで!?せめて軽くで良いからあの後どうなったか教えて!」


不敵な笑みを浮かべながら副院長はそさくさと部屋から出て行ってしまった。


おのれ。あのおっさん言いたいことだけ言って出て行きおった

冗談ではなく最近忙しいらしいので無理やり止める事はしなかったが、少しはあの件に関しての話して行けや。

結局分ったのって何故か俺が強制的に成人後に助祭の位を押し付けられるのと、ラングニール先生がそろそろ出世しそうってことぐらいじゃね?

しっかし、あの時俺はどうしたんだろうか…

朧気な記憶を反芻しながら考えてみるか。


色々な覚悟が決まった瞬間に意識が押さえ込まれたような、そんな感覚だったことは覚えている。

ただ自分の意思で動いていたわけではないと思うんだ。

だって俺は精霊の祝福なんて出来無かったし、今やろうと思っても出来る自信も無い。

それなのにそれが出来たと言う事は誰かに操られてたのか?でも誰にだ?

あー!もう!!なんかここ最近疲れてたこともあるが、今の爆弾発言聞いて頭が働かない!

もう良い!今日は寝る!起きたばかりだけど!!


結局この日、俺はあの時の事、ロゼの事、そしてあの事件の全体像を聞きそびれ、考える事すら面倒くさくなり、アルティア司教座大聖堂の一室で丸々一日泥のように深い眠りに落ち、そして夢を見た…





―捨て切れない思いだってたくさんあるんだよ!―


―精霊達よ、ここへ!!!―


―ルピシー!そっちはお前の道じゃない!お前の道はお前の心の中にあるはずだ!―


―俺は聖職者になる!そして大司教になるんだ!!―


―誇って良いぞ。お前は良くここまで耐えた。お前は凄いよゴンドリック―


―聖下、世界は悲しみに溢れています。まるで魂が切り裂かれているかのようです―


―公星、私の願いを聞いてくれるか?―   ―モッキュー―


―話はマハルトラジャ大王から聞いている―


―その位と称号、謹んでお受けいたしましょう―


―エルトウェリオン公爵特務枢機卿、久しいな―


―育てよ、お前もまたあの人のように大木の種を苗から木に育てるものぞ―



その夢は最初は今の俺より幾年か歳をとっている姿、そして段々と歳をとりながら話が進み、終わりの辺りでは立派な杖と剣を持って荘厳な椅子に腰掛ける俺の姿があった。

知っている奴等の歳をとった顔も出てきて、妙にリアルであった。


「ぃいやぁあああーーーーーーーー!!!」


まるで今から俺の人生予定が映画のストーリーの如く上映されているような悪夢で、無意識に寝ていた公星を掴んで勢い良く投げ、お冠の公星に体当たりで起こされると言う事件が発生するのであった。

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