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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第四章 新たなる出会いの章
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第八十六話 漁り話(2017.12.7修正)

俺は現在副院長から言質を取ったのは良いが、まず何処から調べたらよいか迷っていた。

だが事件が起きているのは試しの迷宮なのだからと、まずは試しの迷宮に潜る事にした。

試しの迷宮に潜ってみると事件のせいか、いつもならエントランススペースにはそれなりの数のパーティやソロの人達がいるのに、この日は人影がまばらであった。


「さて、10階層に来たのは良いがタイミングよく直ぐに現れるってことはないだろう。しかもこれだけの騒ぎになっているのだから犯人も活発に動き回ると言うことはまずないな…もしかしたら何か手がかりがあるかもしれないから探索してみるか…」


それから約一ヶ月の間ほぼ連続して試しの迷宮に潜り続けたが、キメラが現れる事も手がかりは何も出ては来なかった。

直ぐには出てこないと思ってはいたが、こうも手がかりがないと出るのは流石に溜息ばかりだ。


「学園都市内で聞き込みしても全く新しい情報が無かったぜ。耳に届くのはもう知っている情報か嘘か本当か分らないようなものばっかりだった」

「あたしのほうもそうだったわ」

「進展なしか…」

「とりあえず静観するしかないかもね。こんなに騒ぎになってるから犯人もそんな活発に動けるはずないと思うし」

「ああ、そうだな…そういえば襲撃にあったパーティって聖帝国籍の冒険者グループではなかったんだよな?」

「あ~、そう聞いてるよ。確か数ヶ月前に聖帝国に入国した新人の冒険者って話だけどね」

「関係ないかもしれないが、一応頭には入れておいたほうが良いかもな…」


そう話していた時、扉のほうからバターン!と言う大きな音が聞こえた。


「うお!なんだ!!?」

「おーっほっほっほっほっほっほっほ!!」

「わーっはっはっはっはっはっはっは!!」


皆一斉に扉を見ると聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。


ゲシッ!!ゲシッ!!


「ほっほっほ!ほっほぇ!?」

「はっはっは!はっぐへ!?」


バタン!!ガチャ

ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!


「こら!お開けなさい!!」

「そうだぞ!開けろ!!」

「間に合ってます」

「「何が!!?」」


笑い声が響いた瞬間、半ば反射的に蹴りを入れて扉の外へ蹴りだし後、勢い良く扉を閉めてしまった俺は悪くはないと思う。


ドンドンドンドンドンドン!!


「無礼だぞ!」

「そうですわ!!」

「本当に間に合ってるんでお引き取りください。っと言うか息を引き取れ」

「「ひどい!!!」」

「おい、いい加減にしないとジジを呼び出すぞ」

「「申し訳ございませんでした!!」」

「じゃ~そう言う事でごきげんよう」

「いや!ちょっと待て!」

「本当に用事があって来ましたの!試しの迷宮の事件に関係してるかもしれないんですのよ!?」

「うん、分った。ドア越しで大丈夫だからそこで話して」


話を終わらせ、関係性も終わらせようとした俺に尚も食い下がる二人。

そんな二人をあしらう気満々の俺だったが、試しの迷宮の事件と聞いて少し話を聞くことにした。


「いや!空けろよ!少しはもてなしの心を持って茶菓子でも出せ!!」

「そうですわよ!まず円滑に話を進めるにはおもてなしの精神が大事ですわ!!」

「お前等が全うなこと言うな、世界が滅びる」

「「どうして!!?」」


仕方なくドアを開け部屋に招きいれ、出がらしのお茶と湿気たので何でも食べる公星に上げようと思って取っておいたクッキーを出し話を聞く体制を作った。


「で?何?え~っと名前なんだっけ?ネジと豚だっけ?ドリルとポルコだっけ?」

「「ドリエッタとマルコだ(ですわ)!!!」」

「ふ~んそうなんだ。っていうかさ?その格好なんだよ。蓑虫か?まぁ似合ってるけど」

「「好きでこんな格好するか!!!」」

「え?前着てたのも悪趣味だったからてっきりそうだと思った」

「誰が好き好んでこんなみすぼらしい格好しなきゃいけませんのよ!!」

「そうだ!前着ていた服は既に大公公子に売り払われたんだよ!!」

「着るものがないからその辺りにある布をあたくしの才能溢れる裁縫技術を使って縫い合わせたんですわ!!そのおかげで私の白魚のような指が傷つきましたけど…」


二人の格好はまるで色んな色や柄の布を無理やり縫い合わせたような服を着る蓑虫であった。

俺は最初条件反射的に蹴りださなくても、あの格好を見た瞬間に蹴り飛ばしていたかと思う。


「うわぁ…ゴンドリアがまるで毛虫を見るような目でお前等見てるぞ…しかも敢えて何も言わないのを見ると関わりたくないんだろうな…」

「分るんだったら見るに耐えないから早く話しを終えて追い出して頂戴。見ているだけで不快感が限度に達してるわよ」

「「無礼な!!!」」

「ぁあん?」

「「「申し訳ございませんでしたぁ!!」」」

「何でセボリーまで謝罪するのよ」

「な、なんとなく…」


そんなやり取りの後二人は、出がらしのお茶と湿気たクッキーを貪りつつ何があったのか話してきた。


「あれは俺様たちが今日試しの迷宮に潜ってモンスターを倒しながら、他の冒険者が何か金になるようなものやドロップ品を落としてないかと通路や部屋の隅を四つんばいになりながら探していた時の事だ」

「…うん。色々突っ込みたい事はあるがとりあえず話を進めて」


こいつ等知らない間に色々なものを捨ててきたんだな…


「で、あたくしたちがお宝探しをしていた時に」

「素直にゴミ漁りって言えよ」

「お黙りなさい!あたくしはこの国に来てリサイクルの大切さを思い知ったんですの!人が使わなくなったものを再利用するという概念は今まで思いつきませんでしたわ!!」

「…ただ金がなくなって転売してるだけだろうが」

「国に帰ったら是非そう言った事業を起こさなくては!!」

「まともな状態で帰れたらいいな。その前にジジにケツの毛すら抜かれてると思うけど」

「セボリー、一会話ごとに突っ込んでたら話が進まないから早く話し進めなさいよ」


っは!いかんいかん。さっき自分で話を進めろといったのに、ついいつもの癖で懇切丁寧に突っ込んでしまった。

習慣って恐ろしいよね。

それから突っ込みたい気持ちを必死で抑え話を聞くと、試しの迷宮の浅い階層で二人で色々なものを漁っていた時、通路の奥の部屋から話し声が聞こえてきたらしい。

好奇心に誘われて恐る恐る覗き込んでみるとフードを被った奴等がなにやら輪を作って話し込んでおり、そいつ等はその中心に見たこともないモンスターを囲んでいたのだと言う。


「で?その後は?」

「マルコがお金になる品を見つけたようで大声であたくしを呼んだんですの。あたくしもまずはお金と思ってその場を後にしましたわ」

「俺様達に必要なのはまずは金だからな!」

「…………なんでそれであの事件と関係あると思ったんだ?」

「貴族の勘ですわ」

「もしかしたらこの情報が金になるかもしれないと思ってお前等のところに来てやったんだ!感謝しろ!!」

「…………」

「黙ってどうした!?さぁ!金をくれ!!」

「そうですわ!情報料を払いなさい!!」

「クリエイトアクアゴーレム」


最近水魔法のレベルが上がり水からでもゴーレムを作成できるようになった。

そのアクアゴーレムに命じて二人を商会事務所からつまみ出し、ジジの寮部屋まで連れて行くように命令した。


「おい!こら!!離せ!離さないか!!無礼だぞ!」

「ちょっと何処を掴んでるの!?破廉恥な!!無礼ですわよ!!」

「あ!こらそこは持つな!服の強度が弱いから破れる!!」

「きゃー!!今ちょっとビリって聞こえましたわ!!お離しなさい!!」


二人の会話が遠ざかる中、俺は仲間達と先程の話について話し合う。


「今の話、どう思う?」

「良く分らなかったけど怪しいのは間違いないよね」

「とりあえず今の話を本当と信じてまた迷宮に潜ってみたら?」

「嘘かもしれないけどね、うん」

「もしそうだったらジジに報告して制裁を加えてもらえばいいことだしな」

「ジジのストレスが臨界点に達しそうだけどな!!」

「明らかに情報不足ですけど信じるしかないですよね。少しでも手がかりが多いほうが良いと思いますし」


翌日、二人の話を信じて聞き出した場所へと赴くことにした。

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