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Nya=Chatelaine ~分かれ道~

 はじめまして。それとも、お久しぶりでしょうか?

 一応名乗って置きましょうか、私はナイア=シャトレーンと申します。

 さて、今日はあなたに1つご報告をしに参りました。

 地面をご覧ください。いわゆる「道」のようなものが見えると思います。見えませんか? それはそれで構いませんよ、困るのはあなただけです。

 それでは、続いて前方――私の方をご覧ください。

 私の右側には緩やかな下り坂。

 左側には緩やかな上り坂が見えると思います。

 それでは。

 今からあなたには、このどちらかの道を選んで頂きたい。

 なぜそんな事をしなければならないのか、ですって? 何故でしょうね。私としては善意のつもりなのですが。

 もちろん選択肢は2つではないでしょう。例えば……そうですね、「選ばない」というのも、1つの選択になるでしょう。その場合、どうなるのかは私には想像もできません。

 知りたいのなら、選ばなければよろしいと思います。ただ忘れないで欲しいのは、何もしなかった場合は「私にも何が起きるか分からない」ということです。

 私に何が分かるんだ、って? 面白い冗談を思いつきますね。そのセンスは、磨きを掛けることをお勧めします。

 それから選択肢としては――あぁ、そうだ。もう1度床を見ていただけますか? あなたが立っている道には、道幅が存在することだと思います。

 ……無いですか? それは重症ですね。えっ? あぁ、見えますか。良かった、私は嘘が嫌いなので気を付けてください。

 道を外れたところは、真っ黒に染まっているのが見えますね。そこが、4つ目の選択肢になるでしょう。「道を外れる」という選択です。それをした場合、どうなるか。考えるだけで、興奮のあまり私は身震いしてしまいますね。

 あら、どうしました? 道の外を覗き込むのは危険ですから、お止め下さい。私が押して――落ちてしまいますから、気を付けて下さい。それに、私の話はまだ終わったません。

 今私が上げた2つの選択は、どちらも異端となるものでしょう。あなたの前に訪れた皆様は、基本的には下り坂もしくは上り坂を選んで行きました。……えぇ、あなたより早く選択が訪れた人間は、いくらでもいらっしゃいます。そもそも、本来この選択に際して私が介入することは滅多にございません。私の気まぐれに出会えるとは、あなたは幸運ですね。

 どちらを選んだ方がいいって? それはあなたが決めることでしょう。上り坂を喜ぶ人間もいれば、下り坂を迷わず選ぶ人間もいらっしゃいます。選べず直感を信じる人や、そもそも選択に関して何も考えず歩を進めた方もいらっしゃいます。それこそ、私が口出しすることではありません。私はナビゲーターでは無いのですから。

 それだけを伝えに来ました。えぇ、それだけです。私としては何時間何日何か月何年とあなたの苦悩を眺めるのも楽しいのですが、人間はたかが100年も生きられないのですから、私の暇つぶしに付き合う必要はないのですよ。

 それから、1つだけ忠告させていただきます。あなたが選ぶであろう道の先をご覧ください。道が進む程、細くなっていくのが分かると思います。

 遠近法? そう言えば、人間にはそんなくだらない言葉が存在しましたね。目が2つしかないからそんなことになるんです。真実から目を逸らすのは、感心しませんね。

 それでは後ろをご覧ください。あなたが人知れず進んできた道ですよ。不思議ですね、もっと広い道幅を持っていたハズなんですよ。

 それだけです。意味ぐらいは、自分で考えてください。

 私がここで言いたいことは1つ。足場を失い、落ちてしまうことも十分考えられます。そうなるとどうなるのかって? わざわざ試す必要はないでしょう。大抵の人は落ちてしまいます。……おっと、今の話は今することではありませんでしたね。

 上り坂の方が高くから堕ちるとしても、恐れることはありません。「堕ちてしまえば」同じです。地面の高さは同じなのですから。恐れるべきは――堕ちてしまうこと、その事のハズです。

 それでは、あなたの想像に及ばぬ場所から、あなたの選択を見守っておきましょう。

 あなたの未来に、幸あれ。

 それでは、さようなら。機会があれば、また会いましょう。


 ……ニンゲンハ、タノシイナ……

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