不幸の人
「ねえ、由九重って好きな人いるの?」
「気になってる人ならいるかな・・・・・・よくわかんないけど」
「なにそれ? どういうこと?」
「ふと考えることはあるけれど、好きかどうかと訊かれたら多分違う気がする」
「気になってるなら好きってことじゃないの?」
「・・・・・・質問ばっかりだね」
「ねーえー。いい加減誰が好きか教えなさいって」
「好きな人は、いないよ」
「じゃあ気になってるのは誰か教えなさいよ」
「まったく鬱陶しいなあ」
「とか言って、邪険にはしないんだから」
「教えて」
「嫌」
「教えなさい」
「嫌」
「教えれ」
「何を?」
「好きな人」
「だから好きな人は・・・・・・もう訂正もめんどくさいや」
「だーかーらー」
「じゃあヒントよこせれ」
「そうだね・・・・・・」
「このクラス?」
「もしそうだとしたら分母が一気に五分の一くらいになっちゃうよね」
「もしかしてそうなの!?」
「そんな反応するだろうと思って言ったんだよ」
「なにそれひどっ!」
「おーしーえーてー」
「やだ。めんどい。だるい。眠い」
「質問どうでもよくなってない? ていうかあいつでしょ。仲良さそうに喋ってるの見た」
「・・・・・・だとしたら?」
「そんな言い方をするってことは?」
「はあ。・・・・・・まあ、そういうことでいいよ」
「なんでそんなに適当なの?」
「はいはい。私が気になってるのは、多分その人ですよ」
「多分て」
「だから最初によくわかんないって言ったじゃん」
「僕と付き合ってくれませんか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・あの、風百々木さん?」
「どうして?」
「えっと・・・・・・前から、気になってて。
あと、これを言ったら感じ悪いかもしれないけど、噂を聞いたってのもある」
「噂って?」
「風百々木さんが、僕のことを好きだって・・・・・・だからってわけじゃない。
前から気になってたのは本当。だから」
「他人事なんだよね」
「え?」
「え?」
「私にとってあなたのことは他人事なんだけれど、私にとって私のことは他人事なの」
「な、なに? どうしたの?」
「今の状況に実感が沸かない。だからどうでもいい。失敗した」
「ごめん、一体何の話をしてるんだ?」
「私が普段明確な発言を避ける理由はね、自分の発言で自分の行動を制限しないためだよ。
だけれど、時々は刺激を求めてそういう発言をすることがあるんだ。
きみに関しても同じだよ。しかし真意ではなんとも思っていないの。
それが普通らしいから、普通らしくそんな噂が流れるようにしたの」
「・・・・・・」
「だから私は不幸を呼ぶ人って呼ばれるの。私に」
「だから私は不幸を呼ぶ人って呼ばれるの。私に」
「そうか。ちょうどお前みたいなやつを探してたんだ」