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直島  作者: Risha
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数ヶ月前からぼんやりとしている。今迄の人生は何だったのだろう。ひたすら、その時その時で、ベストを尽くして来たつもりだった。憧れ一心で自分を追い詰めて勉強して、高校受験で、都内の偏差値の高い私立学校に受かって、付属の有名大学に行って、海外経験もしたりして、ここまで来た。だけど、今迄のそんな努力が、水の泡みたいに、溶けて行った。就職活動は、社会の格差を映し出していた。どんなに努力しても、下は下、上は上。日本は平等な国だと思っていた。でも、これまでの人生で私がどんな風に考えて、頑張って来たなんて、面接官は何も知らない。言葉はいくらでも繕えるし、たったの10分に20年間を詰め込めない・・・・・・。


「ふぅー。」

呼吸が私のカラダから外へ排出される。私はまだ生きている。だけど、毎日何をするというわけでもなく、ぼんやりと時間が過ぎる。何度前向きになってみたことか。何回起き上がっても、あっという間に倒されてしまうのだ。気が付けば、持ち駒なんてもう手元に残ってなかった。そこで社会に対する憎しみや絶望感というよりも、私の中に起こった感情は虚無感だった。


「んんんんうぅー…」

大きく伸びをする。寝返りを打つ。何をしたらいいかわからない。まさか自分がこれほどまでうまく行かないなんて思わなかった。だから、うまく行かなかったときのことを考えていなかったのである。やる気が起きない毎日。


私の好きなことと言えば、芸術だ。芸術が好き。よく1人で美術館に行く。そのような時間で現実逃避して、何もかも忘れる時間が好きなのだ。


気が付けば、ぼんやりしたまま、身支度をしていた。今日が何曜日で、何があるなんて忘れた。スケジュール帳など、もはや不必要だった。大きな鞄を押入れから引っ張り出して来た。洋服や化粧道具、ノートや本などを乱雑に入れた。何をしているのか自分でもよく分からない。でも、早くしなくちゃ行けない気がした。大きなカバンを持ち上げて急いで家を出た。



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