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一国の王女とある空賊の物語01

物語は、ライファニアの辺境の地、グランディア大陸から始まる。

「ランド伯爵!姫君のことでご報告致します!」

大慌てで駆け込んできた近衛兵は息も切々に叫んだ。


「して、ユウナのやつはどこに?」


「城下町の酒場近くの樽のなかにいましたが、逃げられました…。

今、団長とともに追っていますが、かなり苦戦しています。」


「ええい!

もっと兵を出さんか!

一刻も早く捕まえるのじゃ!」


伯爵は元から赤い顔を更に赤くしながら叱責の声をあげた。


「は、はっ!」


近衛兵は敬礼をし、また大慌てで城の外へ飛び出していった。


伯爵は苛ついていた。

空賊団が退却し、王国が落ち着いたかと思えば、今度は姫の失踪である。これ以上騒ぎが大きくなると、民の不安を誘ってしまう。

伯爵は執務室を落ち着かない様子でウロウロしていたが、ふと何かを思い出したかのように立ち止まり、執務室から姿を消した。



「お待ちください!姫様!」


何人も近衛兵を引き連れて近衛兵長のベガルタが叫んでいる。

ここはサンドリアン市場。

グランサンドリアは他国との交易が盛んであり、様々な国の様々な特産物があちこちで見られる。大きな通りに露店がズラリと並んでいて、いつも賑わっていた。

彼女は、そんな大通りを走っていた。

この大通りは曲がり角に至るまでが非常に長く、逃走にはかなり不利だ。

屯する人をかき分け、必死になって逃げる。

ドレスの裾が足に絡み付き、彼女の邪魔をする。


「はぁ…はぁ…しつこい…ああっもう!」


すると、前方からも近衛兵が追いかけてくる。

どうやら挟み撃ちにされてしまったようだ。


「もう逃げられませんぞ!姫様!」


後方のベガルタが叫んだ。


「どうしよう……………こうなったら…」


その途端、彼女は突然近くの露店へ真っ直ぐに突っ込んだ。

皆が ぶつかる!と目を瞑り、己の露店へ突っ込んでくるのに驚いた店主は思わず尻餅をついた。

その時、彼女は高く跳んだ。

滞空時間はだいぶ長く感じられた。


「まるで飛鳥だ。」


店主は思った。

何とか露店の縁に掴まることができた彼女はそのまま建物の上によじ登った。

そして、彼女が再び走りだしたのを見て、ベガルタは叫んだ。


「お、追え~!追うんだぁぁぁぁ!」


ハッとした近衛兵達は、慌てて建物の上へと登り始めた。

しかし、鎧が重くなかなかよじ登れない。

彼女はというと、これ好機と建物から建物へと跳び移り、必死に逃げた。


(この調子で行けば逃げ切れる。よし!)


しかしながら、物事はそう上手くはいかなかった。

次の建物へと飛び移ろうとしたが、ドレスの裾でつまづき、建物から落下してしまったのだ。


「きゃあっ!!」


近衛兵達には、彼女が突然消えてしまったように見えただろう。

彼女は路地裏の硬い地面に叩き付けられた。

生まれてから今までで一番の激痛が彼女の細い身体を襲った。


「う、うぁぁ…………い…たい…………」


胸が苦しい。

何だか鉄の味がする。

彼女は狭い路地裏でのたうち回った。


「姫様~~!?はぁ…はぁ…一体、どこへ行ったのだ…………?」


近衛兵達や町の人々の騒ぎが、だんだんと小さくなっていく。


(嫌…だよ…私は……まだ…生き…て…いた…い…………)


そして、彼女…ユウナは力尽きた。


To be continued………

改訂版です。よかったら、またご覧下さい。

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