邪神と破壊神
「ったく。なんだったんだ……あいつ」
キリが呟く。
何故この場所へと来たかは分からない。だけど、あの黒い物体はデュークを知っていたと言う事なのかもしれない。
いや、もしかしたら、デュークが黒い霧だったのかもしれない。
でもなぜ? ボクは疑問に思う。
そして光が見えてくる。
「到着?」
「素敵な来訪者の所為でちょっと疲れたわね……」
もう安心だろう。そんなふうに思ったと同時、いきなり稲妻が走ったように見えた。
だけど、それは気の所為ではなかったようだった。
突如として稲妻が所々走り始め、そしてそれが青い壁を破壊していく。
「ちょ、ちょっと待て!? これマズイんじゃないか!?」
「向こうの光まで走りましょう! じゃないと巻き込まれそうです!」
まさか、ユミが言っていた時空の狭間の歪とはこの事じゃないだろうかと考える。
二度と出られないと聞いていたために、ボク達は急いでその足元を蹴って光へと向かって跳躍していく。
『ま……て……』
「!?」
声が聞こえたと思ったら、ボクの足を何者かが掴んだ。それは黒い腕と、残ったデュークの顔。
おかげでボクの跳躍の力は無くなり、時空の歪へと吸い込まれそうになる。
「リク君!」
「いいです! 先に行ってください!」
「でも!」
「お願いします! ボクは大丈夫ですから!!」
戸惑うソウナの腕をキリが掴んだ。
「おら! さっさと行くぞ!」
「でも、リク君が!」
「大丈夫っつったろ! マナ! お前もだぞ!」
「う……、わ、わかったよ。リクちゃん! 絶対に戻ってくるんだよ!」
みんなが空間を蹴る。ボクだけがこの場に残るが、ボクは慌てることなくデュークへと振り向いた。
足を掴んでいるデュークの手を取り、目の前まで持ってくる。
『にが……さん……。ハクを……守る、ため……』
言葉は切れ切れだけど、デュークは確かにそう言った。
なら……わかるかな。ボクの言葉が、わかるかな。
「あの時、何があったんですか? ハクさんは、生きているんですか?」
『……だから……守る……。俺が……俺が、好きな子だ……。〝シヴァ〟に頼んで……生き返らせてもらった……』
生き返らせる……。そんな魔法が、あると言うのか?
『人が神になる……その方法を知っているか……?』
素直に首を振る。
『元々居る神を……殺すか……神が人に……自分の力を引き継ぐ……。神は消滅し……そして、人は死体でも蘇る……』
死体でも……。〝シヴァ〟がハクを生き返らせたと言う事は、その時に居た〝シヴァ〟は消滅。ハクが〝シヴァ〟として覚醒したと言う事。やはり、ハクと言う少女が白夜なんだ……。
空間が割れていき、段々とボク達が居る所まで壊れていく。だけど、焦る事はしない。今のまま逃げてしまえば、取り返しのつかない事が起こると思うから。
「でも、〝シヴァ〟はそんな簡単にハクさんに力を引き継いだんですか?」
『もち……ろん。初めは俺が〝シヴァ〟と契約した……。ハクが……死んだ事で、怒り狂った俺は……〝ルドラ〟を殺した……』
「殺した……? それはつまり、デュークさんが〝ルドラ〟となった、と言う事?」
『そうだ……。俺が……暴風雨神〝ルドラ〟だ。そして……』
今まで真っ黒だったデュークの姿が新明になる。ライトブラウンの髪が映え、デュークの瞳がボクへと向けられた。
「〝シヴァ〟の一部のような物として、俺は何年もハクを守って来た。夢、幻の白夜と名を変えても、俺は影としてずっと守って来た」
その腕に持つは白夜が持っていた銃槍そのもの。
「だから、ハクが望んでいた自らを殺す可能性を持つ神々に愛されし子に聞きたい。お前は、ハクを殺すつもりか」
銃槍はボクの喉元へと突き付けられるも、ボクは一歩も動いたりしない。
「〝クロノス〟の予言では、ハクが生きる未来と、死ぬ未来がある。どちらも神々に愛されし子が関わっている。お前だ、赤砂リク。答えろ。お前はハクを殺す気か」
壊れてきた空間がボク達に居る近くまで昇って来た。もう光へと向かって行かないと巻き込まれてしまう。
それでもボクは目の前のデュークを見据えた。
「そんなことしません。そんな事出来ません! 白夜さんは、ボクの友達なんです! 白夜さんがボクに殺される事を望んでいる? そんなの許せるはずが無いじゃないですか! 何でボクが友達の命を奪わないといけないんですか! ボクは、そんなの背負って歩いていけません! 友達と一緒じゃなきゃ、歩いていけないような人間なんです! 弱いんです、でも」
「…………」
「助け出します。どんな事をしてでも、ボクの……ボク達の隣へと取り戻して見せます! 無表情でも、心から楽しんでいた白夜さんを必ず!」
空間が割れる。もうすぐそこまで来ている。
「…………そうか……。リクは、弱いか……。ふ、ふはははははははは……」
銃槍が、ボクの喉元から離れ、おろされる。
「なら、頼もう。神々に愛されし子なら、殺す事も生かす事も、出来るのだな……」
デュークから出ている黒い霧が、ボクの体を吹きぬけていく。
「今から時間を超えた時へは帰れない。そこへ帰ろうとするならば歪に飲み込まれるだろう。二ヶ月後だ。君達が帰る場所はあれから二ヶ月後。それなら時空の歪に飲み込まれる事は無い。そしてその時は、もう世界の塔が出現している。その最上階の一歩手前にハクが居る。だから……」
霧は、デュークの体を包み始めて吹きぬけていく。包まれた霧から、デュークの体が消えていくのをボクは見ながら最後の言葉を……。
「ハクを……。後ろ向きなハク・ローズマリーを、追憶から解き放ってくれ」
その声とともに、デュークは全て霧となって消えていった。
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「リク君……まだかしら……」
「大丈夫……リクちゃんならきっと……」
二人がそう呟いた。
「テメェ等。ちょっとは落ち着かねぇか」
「「だって、リクちゃん(君)がぁ……」」
キリがそう言った所に二人して泣いた。
「お、お前らなぁ……。信用して出てきたんだろうが。慌てんなよ」
「「じゃあ! まだ出てこないリク君をキリは心配じゃないの!?」」
「なんでお前らそんなにシンクロしてんだよ!?」
ボクの耳元に、そんな会話が聞こえてきた。
「あの、ボクもう居るんですけど……」
「おぉリク。ようやく気やがったか」
「「リクちゃん(君)!?」」
時空の中から出たボクは、前に居た三人の、特に二人の会話に信用されてなかったのかな……なんて思ってたけど、心配されるのも、悪くないかな。
「大丈夫!? どこかケガして無い!? すぐに治すわ!」
「大丈夫ですから! ボク、何処もケガして――」
「ソウナさん! リクちゃんの首筋から血が出てる! すぐに! すぐに治して!?」
首筋? それって、デュークに銃槍突き付けられた時のかな……。当たってたのかな?
「大丈夫ですよ。これくらい、何ともないです」
「いいえ! ダメよ! すぐに治すわ! 〈治癒の光〉!」
珍しくずっと慌てているソウナが回復魔法を発動する。おかげで首筋のひりひりとした感覚が無くなったけど、大げさすぎやしないだろうか。
「それよりリク。俺達が時間を超えた時に、あんな城あったか?」
キリが指差した方向には真っ白い塔が存在していた。それは過去の電光王国の城のような形をしているが、高さがまったく違う。
「時空の空間が持たなかったんです。そのおかげで、時間を延ばして安全な二ヶ月後にしてくれました。つまり、あれはヘレスティアが復活させた世界の塔です。全てデュークさんが教えてくれました」
「「「…………」」」
森の中でも見える高くそびえ立つ白い塔。
その塔の最上階の一つ下に、白夜が居る。
「一度、ショウに向かって今のライコウの現状を聞きに行きましょう」
「「「了解、リク(ちゃん)(君)」」」
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