夢の涙
ゆっくりと瞼を持ちあげる。
涙が瞳から流れている事を感じる。
「どうした? リク」
「リクちゃん……?」
「リク君、泣いてる、の?」
ボク以外の全員が寝ていたベッドの周りへと集まっていた。
だから、ゆっくりと体を起こす。それを、ソウナが気を使って背中を抑えて起き上がらせてくれた。
「わからないんです……」
「わからない? そう言えば、お前二週間前から変な夢でうなされてたりしたよな? まさかそれか? ここ一週間は無かっただろ?」
本当だ。久しぶりにあの夢を見た。
ここ一週間はみなかったのに……。まさか邪神と戦ったから思い出したってこと?
でも、自分には一度も……いや、彼女は、ハクは邪神と対面しているんだ。そしてなぜかボクにその記憶があって夢を見る。
「みなさんは、知っていますか?」
「何を?」
「ハクさんって言う人と、デュークさんって言う人です」
ボクがそう言うと、みんな誰? と言うような顔で悩む。知らないのだろう。
「その人達の夢を見るんです。主に、ハクさんの視点で。なんでかはわかりません。ボクだって知らないのに……。ハクさんの夢を見てても、何を伝えたいのかわからないんです。もしかして、ただの過去の話なんじゃないかって思って……」
でも、それが何かボクに伝えたいんじゃないかって気がする。もしくは、知って欲しいとか。
(誰なんだろう……。ハク……白……)
まさか白夜、なんて事は無いだろう。白夜は生きているし、ハクは幻魔に貫かれて、あれで生きているとは思えない。だから関係はない……と思う。
「リク落ち着いたか?」
「はい。もう大丈夫です」
ボクは涙が落ち着いてきたのでベッドの布団を畳んで、クローゼットから服を取り出す。
「ンじゃ、朝食行こうぜ。そうすりゃ気がはれるだろ」
「そうだね~。リクちゃん、あまり思い詰めちゃダメだよ?」
「リク君。他に何かあったら言ってね? キリさんよりも先に」
三人にそう言われて、ボクは素直に頷いた。
この後に三人が部屋を出ていくと、寝間着を脱いで服に着替えた。
食堂へと行くと、もうすでに他の人達は集まり、ボク達が座ると同時に、ユミが立ち上がって奥へと歩いて両手を腰に当てて胸を張った。
「さぁて! 今回ハーロン戦は見事私達の勝利! そしてハーロンとちゃんと和解して同盟を築く事が出来ましたぁ! どれもこれもみんなのおかげだよぉ!」
「今回は楽だったな。手応えがねぇ」「邪神に頼りきりだったってことだろ?」「まぁ当然の結果だ」
朝食の時間。始まってすぐのユミの報告にみんなは特に気にした風も無く食事を楽しみ始めた。
「ちょっとぉ!? みんな反応悪くない!?」
「いやぁ。だってハーロンってあんまり強い戦士聞かないし、正直邪神も強く無かっただろ?」
「ぐぬぬ……」
柾雪の発言は正当だったのか、ユミが頬をふくらませる。
「でもでも! 今回邪神に止めを刺したのは何と二週間前に来たリクちゃんなんだよっ!」
「ユミさん!? それわざわざ言わなくてもっ!」
勢いよく立ち上がりながら言うボクに、ユミはにっこりとほほ笑んだだけだった。
確かにそうだったかもしれないけど、それはユミのダメージが蓄積していたし、キリやソウナ、マナが追撃を仕掛けてくれたためだ。
ボクはただ、ラストアタックを仕掛けたに過ぎない。
だけど、そんなボクの焦りを肯定と受け取ったのか、周りで食事をしていた人達も手を止めた。
「へぇ。この二週間でマジでそこまで強くなったか」「こりゃぁオレ達も黙っていられないぞ?」「確か帰る日って明日だったよな?」「その前に手合わせでもしてみっか?」
なんか……なんかざわめく内容が半端無く怖い!?
「諦めろよリク。それにこれは好都合だろ?」
「え?」
前に座るキリがそう言うのでボクは不思議と首を傾げながらその場に座る。
「俺達はユミと互角に戦った白夜と誰かしらが戦うんだ。ここに居る奴等に負けてるようじゃ勝てやしねぇからな」
う……言われてみれば……。
口の中に入る料理の味を楽しめないまま、ボクは悩みこんでしまった。
これから何人の人が戦いに来るだろうかとか、どうやったら勝てるだろうかとか考える。
邪神を倒した事で少しは自信が付いた。
「でもダメよ、みんな。リクちゃんとは戦わせないわ!」
「「「え~」」」
ちょっとホッとしたボクがいる。
だけど、それは次の言葉で思考が停止した。
「リクちゃんはこの私と一対一で戦うわ」
「……………………え?」
思考が真っ白になり、食べていた手を止めた。
それからゆっくりと話していたユミへとゆっくりと振り向いた。
すると、ユミはいつの間にか近づいてきていてボクの隣へと立っていた。
「確か、私を超えるか互角じゃないと倒せない敵がいるんだよね? だったら、私と本気で戦わないと、ね?」
ユミがウィンクをすると同時、頭が真っ白になっていたボクは気がついた。
ユミはわざわざ、本気で戦える状況を作ってくれたのだ。
「ユミ、さん……」
「ん? なぁに?」
ボクは立ち上がって、頭を下げた。
「ありがとうございます! 全力で戦わせてもらいます!」
「ふふっ。よろしくね? でも、その前に、午前中は体をほぐして、本番は午後ね?」
「はい!」
まさか、目的であるユミ自ら決闘を申し込んでくれるなんて思ってもみなかった。今では師匠のような存在だし、申し込むのも気恥しかった。こうやって武器や魔法の扱い方などを教えてくれるユミに対して決闘など申し込んでもよかったのだろうかと思う所もあったのだ。
でも、ユミが申し込んでくれた事によってそんな考えは無くなった。
「それじゃあみんな! すでに食べてる人もいるけど、朝食と言うか、戦争勝利の宴でもしましょうか!」
「「「おぉぉぉぉぉおおおおおお!!」」」
急にハイテンションになって叫んだ電光王国の戦士達。
ボク達はそれについていけない物の、隣にユミも座って食堂の奥から魔法によって運ばれてくる料理はどれも大皿に乗っており、いつもと雰囲気が違う。しかも、中にはジョッキにたんまりと入った酒なども運ばれてきている。
「たぶん、今日酔っぱらって無い人は私とあなた達含めて十人ぐらいだと思うわ」
「は?」
「戦争後はね? こうやってパーっと宴しちゃうのが一番楽なのよ。みんな楽しんでくれるしね」
確かに、辺りを見回すとほとんどの戦士が酒を片手に、肉や野菜などを食べたり、どっちが飲み比べで強いかとかでジョッキを何杯も追加している人がいたりする。
「おいキリ! お前酒は飲めるか?」
「はぁ!? 俺未成年だぞ!?」
「未成年? 知るかそんな事! 雪! キリに酒持ってこい!」
「くすっ。諦めて下さいね? キリさん」
すでに柾雪は酔っている。それもそのはず、ジョッキにたんまりと入っていた酒がもう六杯は無くなっている。
そんな姿に雪姫も微笑みながら食堂の奥へと魔力を飛ばして持ってくる。
「な……ま、お前未成年に酒呑ませる気か!?」
「俺の村は十五歳から酒飲めんだよ! 良いから飲め!」
「ちょ、待……ングッ!?」
そんな柾雪に雪姫が持ってきた酒を飲まされるキリ。
ホント、完全に酔ってる……。
「キリさん、大丈夫ですか?」
「い、一応……。ってかお前らも止めろよ……」
「ハハハハッ! 酒がうめぇ!」
「…………酔わない人は九人ぐらいかな……」
キリの分の人数が減った。
雪姫は酒を飲むと言う事はしていない。一応回って来てはいるのだが、全て兄の柾雪へとスルーパスしている。
他に誰が飲まないのだろうか。そんなことを思って辺りを見回すと、まず子供は飲まない。ボク達と同い年に見える男の人は隣に居るガイアに飲まされているが。そしてセレクトなども飲んでいる。多種多様出来る魔法を使用するために飲まないとやっていけないとかだろうか。
そして、あろうことかまさかのサラが酒を飲んでいる光景も見受けられた。と言うか、ガイアと飲み比べしてる。ジョッキがもう十には昇っているのではないだろうか。
「あの、サラさんは飲んで良いんですか? 巫女……」
「あぁ。サラの二つ名を知らなかったわね。サラはね? 【地獄の巫女】って言われてるの。本人もそれで了承。だから飲んでも問題なし。まぁ私達はもっと別の意味で見てるんだけどね。本人と当事者は気づいていないんだけど、他の人達は気づいてるんだよね~」
どういう意味、だろうか。
「あの、修以さん、これどうぞ」
「ん」
いくら飲み比べしててもサラは酔った感じには見えない。顔は少し赤いが、それくらいしか見れない。
「あ~。あれは~」
「確かに、わかりやすいわね」
「お前らも飲まねぇか?」
「「遠慮しとく(わ)」」
いつの間にかキリに注がれていたジョッキが無くなっている。そして顔が赤くなっている。キリ、本当に大丈夫だろうか。
そんな訳で、午後ユミと戦うと言う事で食事は早めに切り上げ、ボクは地下四階へと向かって刀を振るった。
ちなみにキリは完全に酔っぱらって、ジョッキを五杯でギブアップした。勧めた柾雪は四倍の二十杯。飲み過ぎだと思う。
ガイアとサラの飲み比べは十五杯に入った辺りでサラがギブアップをし、ガイアが二十杯辺りで倒れた。飲んだ人の中で、最後まで意識があったのは柾雪だけであった。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




