潜入
「よし、走って」
指示を受けて隠れていた所から走り出す。そこまで隠れなくてもいいのだが、人に当たるとバレる可能性があるので兵士が通った後を狙って走って行く。
外は激しい爆発音が続けざまに鳴り響いている。主に柾雪の物だと思われる。
「せいッ」
城下町に行きそうもない門番などは全て倒して見つからないような影に隠していく。
「それにしても、声は出しても良いが足音はなるべく出すなとかめんどくせぇな」
「しょうがないよキリさん。透明魔法は下に落ちてる小石とかには付加出来ないんだから」
つまり砂や雪などを踏んだら足跡がちゃんと付くと言うことだ。どの魔法にも弱点はあると言う事。
「アイチ、どっちか分かる?」
「地図は頭に入ってるから安心してお母さん」
アイチが先導して先を行くのを追って行くのだけど、ボクは少し不思議な魔力を感じていた。
ただの魔力じゃない。嫌な感じだ。いつまでも感じていたくないような魔力。
そう言えばこんな力。前にも感じた事が……。
――子供肉がこんなに。今日は御馳走だ――
(まさか、これが邪神の魔力)
でも絶対に関わってはいけないと思うほどではない。今は、むしろ退けないとって思う。
ボク等はとうとう城の奥まで来た。王座がある所を見ると謁見の間だろうか。そこには多数の兵士がまだ残っていた。
「さて、あいつら全滅させてさっさと邪神のいる所に行きましょう。たぶん、眷族ももうすでに放たれてる」
ユミが剣の柄に手を添えた。
キンッ。
そんな短い音が鳴り響いたかと思ったその瞬間。謁見の間に居た兵士たちはその場に倒れていく。
ユミはその兵士の間を悠然と歩いて行く。
「魔力の発生源はこの先ね」
ユミが王座のイスとその奥の壁を斬り裂く。それぞれ斜めに斬られた線に沿って、斜めに崩れていく。
「なんだ? 何の音だ?」
外から兵士が入ってくるも、足を踏み入れたその瞬間にアイチが即排除した。
「お母さん。外から入ってくる兵士は私が何とかするよ。お母さん達は奥に行って?」
「ありがと。それじゃあみんな。行くよ」
壁の先は暗くなっており、中は見にくい。そこへと何のためらいも無く入って行くユミと後を追うミユ。
少し手が震える。夢で見たのをハッキリと覚えているからだろうか。でも大丈夫。あの時とは違う。そしてあの邪神とはまた別の邪神だ。何も問題は無い。
「大丈夫かリク? 肩震えてんぞ?」
「え? そ、そんな事ないですよ!?」
肩が? ボクはすぐに確かめたい気持ちもあったけど我慢して掴むような事はしなかった。
夢に出てきたような邪神ほど強くは無い。魔力だけでわかる。
先を行くキリにソウナ、マナ。みんなは、怖くないのかな。
知らないから、なのかな。でも、行かなきゃね。
『リク、さっきからどうしたのじゃ? 何か、思いつめているようじゃが……』
(ううん。なんでもないよ。行こっか)
ボクもその壁の向こう側へと走って行った。
中は暗い。そして広い。だけど、それ以上に黒い何かが奥に鎮座している。
「さて、邪神討伐に来たんだけど、まさかハーロン王が邪神に憑かれているなんて……。これは面倒だわ」
『我を前にしてその態度。さすがは【電光姫】。だが邪神に勝つつもりか?』
「あ~。はいはい。そんなのどうでもいいから」
ボクが壁を通ったとたんに、そんな会話がなされていた。
闇の奥に座っているユミが王と呼んだ人物。その人物の背後には更に黒い空気や魔力が漂っている。
「不気味な魔力。これが邪神だって言うの?」
マナは邪神の魔力をしっかりと感じ取っているようだ。
『我が眷族よ、奴等を殲滅せよ!!』
王が叫んだ。手を差し出した場所に魔力が集まり、形をなす。それは全て緑色の巨大バッタとなり、襲い掛かって来た。
「って数多ッ!?」
その量は十や百なんて数では無い。千はいるのではないかと言うほどの量だ。
すぐさまルナとツキを抜き放とうとしたその瞬間に脳内に七色の魔力を思い出した。
(ごめん。ツキはまだ中に居て)
『ふぇ? 何で?』
(また封じられたら困るでしょ)
ツキを鞘から内側へと入れる。
「バッタかよ。めんどくせぇが、やってやるか。ミカヅチ」
「絶対、今度こそ認められるような戦果をあげないとね……」
「ユミさん、私達はバッタと戦えばいいの? ディス、メルム」
「お願い。邪神との戦いは私だけでやるから。ミユもバッタ掃討よろしく」
「オッケー」
「じゃあ、行くわよ!」
ユミの掛け声とともにボクは抜き放つ前だったルナの柄を握って魔法を放った。
「〈五の太刀 一刀両断〉!」
刀を一閃。目の前に見えるバッタをなるべく多く薙ぎ払う。
そして驚く事に部屋では一撃で倒せなかったバッタなのに数十匹を一撃で倒す事が出来た。
「〈雷迅〉! 〈雷剛拳〉!」
ボクの刀が通った後、キリが飛びだし、その後にマナが魔法を放った。
「最初からURUで行くよ! 〈螺旋焔球〉!!」
「軍神解放……はしなくていいわね。ウルフ、お願いね。〈ブレードブースト〉」
剣属性の強化魔法を発動したソウナが狼に乗って走って行った。狼に乗った状態での攻撃はとても素早く、手慣れて手つきで斬り裂いていく。
「動き回るのは好きじゃないんだよね~。〈ソウルボム〉」
ミユがその指を弾いた。とたん、数十はいた巨大バッタが全て爆破された。
やっぱりミユは強い。
ボクはそう思ったところに、襲ってきた巨大バッタを切り捨てる。次々と巨大バッタは襲ってくる。
そう言えば、ユミは何処に? そんなふうに思った直後に、近くで爆発音が起こった。
「〈絶刀技居合・神絶〉」
ギャリッ。
「え……」
ボクの目の前でユミが王を切り裂いた。
「ゆ、ユミさん!? 人を斬ってどうするんですか!?」
「だ~いじょうぶよ。リクちゃん。ユミちゃんはそんな事しないから」
ミユがそうなだめると、悲鳴を聞いた。
『ギェェェェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!』
まさか、邪神だけを斬って!?
そんな魔法まで使えるなんて、やっぱりユミはすごい……。
「ボクも、頑張らないと。〈神速〉!」
ボクはその場から飛びだし、次々襲ってくる巨大バッタを斬り裂いていく。
次に襲ってくる巨大バッタを二連撃で斬り裂いた。
あまりにも弱いので、ボクは一気に決めようかと魔力を一気に込める。
そうすると巨大バッタが同時に飛びかかってくる。
その多さに驚きながらも、ボクは新しく覚えた魔法を放った。
「〈四の太刀 雪時雨〉!」
ボクはルナに大量の魔力を詰め込み、その刀を横に一閃。
連続された刃が大量に向かって来たバッタに襲い掛かった。
バッタは全て細切れとなって斬り刻まれ、全てその場に落ちていく。
一太刀で数千の刃を刻む魔法。それが四の太刀。
――そう、ユミに教わった。
(まさか、この太刀の魔法を作った人が、ユミさんだなんて思わなかったけどね)
全部である数は十。ユミの使った〈次元刀〉。それは正式には十番目の太刀〈終の太刀 次元刀〉と言うらしい。
一応全部の種類は覚えた。今まで三番目までだったけど、今では九番目と十番目以外全てを使えるようになった。
ちなみに、ユミが使った〈絶倒技〉。あれは十ある太刀の魔法とは全くの別物と言っていた。
とりあえず、ボクへと襲ってくるバッタは全て斬り倒した。
後は……。
そう思ったボクは一方的に斬りつけているユミへと視線を移した。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




