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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第五章 黒い風
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開戦



 近くの森に身を潜めてハーロンを眺める。


「さて、あの塀を登るわよ?」

「登るわよっつったって……いくらなんでも高いだろ?」


 柾雪がそう呟く。ボクもそう思う。

 ハーロンの城下町は外の町と違って山の上に作られている。つまりハーロンは山の斜面に作られているような感じだ。

 そしてその山の頂上に城がある。だけど城から城下町と正反対の場所は絶壁と言っても良いだろう崖となっており、あそこから登るのはとても大変そうだ。登ろうとすれば登れるのだろうが、今回の目的は城下町と城だからわざわざあんな場所を通る必要は無いと言う事だ。

 とは言っても城下町に入る場所もかなり高い。山の土台と、高い塀があるために山は登れるが、何の凹凸も無い塀を登るのは大変すぎる。


「さて、私達潜入部隊は初めから〈インヴィジブル〉で透明になって行く。決して攻撃してはダメよ? 囮部隊の後を追って行くだけ」

「魔法を使うのは、ボクですか?」

「俺の事は無視か」


 セレクトに教えてもらったし、もうしっかりと使える。置くタイプの結界式では無く、纏うタイプの膜式どちらも使えるから大丈夫だ。


「いえ、作戦一まではセレクトが透明魔法をお願い」

「あたしの魔力が囮中に無くなったらどうするの?」

「セレクトの魔力はそんな物じゃないでしょ。天使や悪魔。神と契約している人を抜かすとこの中で一番魔力あるでしょ。何倍も差をつけて」


 そう言えば、セレクトの魔力を一番強く感じる。柾雪やガイア、サラとは何倍も差をつけて魔力を感じる。『ル・レイラ』一の魔法使いと言うだけの事はあるのだろう。


「あ~はいはい。仕方ないな~。それだったら、あたしも作戦一は抜けさせてもらうよ? 透明魔法、認識出来てなかったら持続しないんだから」


 そうなんだ。とすると透明魔法使う時は気をつけて使わないと。


「なるべく音出しちゃダメよ?」

「わかってるよ。ガイア、龍の声出させんなよ?」

「いや。龍は作戦一では使わん。召喚する時必ず咆えるのでな」

「じゃあ塀はどうやって登るんだよ」

「ジャンプ」


 せめて跳躍とか言って欲しかった。とは思う物の、ガイアのような頭以外全身鎧を着込んでいるのにジャンプ出来るのだろうかと思う。


「ユミ。他に作戦は?」

「そうね。作戦一が終わって気づかれてなかったら一度集まる。気づかれたらそのまま作戦二に。作戦二は潜入部隊はそのまま城に向かい、囮部隊は城下町で派手に暴れて。全員逃がしてはダメよ? 私達の方に着たら少し厄介だから」

「注意する所はそれだけか?」

「うん。そんな所」


 ユミがそう言うと、質問していたシャインが立ち上がった。


「それじゃあ、行くか」


 ギュンッ。風を残してシャインの姿が消えた。


「うわっ。あの野郎、待ちやがれ!」

「一番槍はこのオレだ!」


 続いて柾雪とガイアが走り出した。


「それじゃあ私達も行くわよ。作戦一は五秒以内」

「〈インヴィジブル〉」


 ユミがこちらに顔を向けてくるのでコクリと頭を頷かせると、走り出す。

 山まで来て、その塀を登ると言うのだが、一体どうすれば……。


「おいリク」

「キリさん? どうしたんですか?」

「あの塀だが、これだけ速く走ってれば普通に登れるぞ。慣性の法則でな」


 そっか。これだけ速く走ってれば塀に張り付いたように走れるんだ。


 ……とは言っても、それって走るのにかなり疲れるような気が……。

 いや、考えるのはやめよう。ボクよりもソウナが心配だし。

 キリは普通に登れるのだろう。マナは飛んでいる。ソウナは狼の上に乗っているだけだ。落ちないようにしがみついているとは思うが……。


 その時、塀に辿り着いた。


 ユミは速度を落とさずにその塀に向かってジャンプ。そして登って行った。よく見ると、その足に少し魔力を張っていて、落ちないように登っている。

 それを見たボクは同じように足に魔力を纏わりつかせて壁を走った。

 真上に走っているためにちょっと恐怖心が芽生えるが、それでも、今走っているここが地面だと思い込んでボクはその塀を走った。

 少し後ろを振り向くと、キリは足に纏わりつかせずにホントに慣性の力だけで走っており、マナは飛んで、ソウナは一生懸命、狼にしがみついている。

 そして塀を完全に登りきると、そこでは仕事をやり遂げたと言った顔をした三人が武器を抜き放って待っていた。


「丁度いい場所ね。セレクト、結界式お願い」

「あいあいさ~。〈インヴィジブル〉」


 カンッ。杖を地面へと叩いて結界を張った。

 そうすると柾雪達がこちらを向く。


「遅かったな」

「そんな事は無いと思います」

「って言うか義姉(ねえ)さん。何気に作戦一に参加して無くないですか?」

「気のせいです。ちなみに掛かった時間は三秒ほどだと思われます」


 ボク達の周りではたくさんの兵士が倒れている。たぶん、登りきった場所に居た兵士だけでは無く、この左右の塀の上に居た兵士も全滅させてきたのだろう。


「さて、じゃあ作戦二ね。セレクト。ここで暴れられると困るから町の中心とかまで透明魔法使って行って」

「え~。また~?」


 セレクトは嫌がるような素振りをするけど、ユミはそれを軽く無視。と言うか、いつもの事なのだろう。この風景は。セレクトは声や仕草で嫌がっていても顔は笑っている。


「街の中心についたら、魔法を解く。ある程度兵士が集まってくると思うからそしたらガイア。相棒を召喚なさい。それを合図にして私達もここから動き始める」

「了解。簡単な仕事だな」

「もちろんその後からは兵士を一人も逃しちゃダメよ? あ、でも派手に暴れて、城下町と城に居る兵士をあぶり出して欲しいから一人か二人くらいは無視って良いわ」

「わかりました。戦い方はこちらで決めても?」

「どうぞどうぞ」


 ユミがそう言うので、柾雪とガイアの表情が笑ったように見えた。自由に暴れる気なんだろう。最低限の約束は守って。


「それじゃあ、俺たちは行くか。セレクト、頼むぜ」

「了解であります柾雪殿! 〈インヴィジブル〉」


 相変わらず口調が整わないセレクトの声を最後に、シャイン、柾雪、ガイア、サラ、セレクトの全員が姿を消した。後に残ったのはボク達四人とユミとミユとアイチだ。


「さてと、まだ結界式は張ってあるけど、リクちゃん。準備しておいてね? 龍が咆えると同時に私達全員に透明魔法を掛けるの」

「わかりました」


 ボクは魔力を練っておく事にした。


「さぁて。邪神ってどんな形してるか楽しみだな」

「〝パズズ〟はライオンの頭と腕、背中に四枚の鳥の翼にサソリの尾と言うキメラのような姿だそうですよ?」

「おいおい。先にそれ言ったらつまらねぇじゃねぇか」


 アイチにそう返すキリだが、よくそんな事を知っていた物だと思う。

 もしかしてわざわざ調べてきたのだろうか。


 それからしばらく待ち続けると、何処からともなく聞き慣れない鳴き声が聞こえた。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッッ!!」

「リクちゃん! 魔法を放って!」

「はい! 〈インヴィジブル〉!」


 聞こえづらかったがユミに魔法を放つよう言われたのでボクはすぐさま魔法を発動。それと同時に辺りに浮かんでいた透明の粒子が消え去った。


「移動するよ。なるべく足音は立てないようについてきて!」

「「「了解!」」」


 電光王国にお世話になって二回目の戦争が今。始まった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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