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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第五章 黒い風
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東口



「東口って、ここでいいのか?」

「たぶん……」


 ボク達四人とも、城から出て東口へと歩いてきたが、まだ人の姿が見えない。

 一般人が交通する姿は見る事は出来るが他のメンバーである電光王国の人の姿が見えないのだ。

 まだ来ていないのか、それとももう行ってしまったのか、そう思った時に後ろから声をかけられた。


「早いな」


 ボク達が振り向くと、そこにはアリスの夫であり、悪魔でもあると言うシャインの姿があった。黒いベルトコートを着ているので若干暗く見える所もあるけど、雰囲気がそうはさせず、とてもよく似合うように見える。コートの内側にはひっそりと剣が見える。柄の部分は赤く、鞘にも赤黒い焔のエンブレムが描いてある。


「早いって事は、まだ行ってねぇンだな?」

「当たり前だ。ユミは置いて行くつもりなど無く、毎回のんびりとしたくしてはここに来るからな。それよりも早く来ればいい話だ。全員がのんびりしながらここへと向かうハズだ」


 のんびりって、どれぐらいの時間なのか疑問に思う所もあったが、その前にと、自己紹介をしていなかった事に気がついた。


「そう言えば俺自身はまだ自己紹介をしていなかったな。ユミの説明されたようだが」

「あははは……。シャインさん……でいいんですよね?」

「ああ。シャイン・マン・カインだ。好きに呼んでくれてかまわないそれより……」


 シャインはそう言うと、東口の隅の方を指差した。


「こんな所に居ては目立つだけだ。隅に行くか」


 そう言えば、ボク等少し目立ってたのかな。

 周囲の一般市民がちょくちょくこちらに目線をやってくるのを感じる。

 ボク達は全員隅の方へと移動すると、そこに新たに二人やって来た。


「お早いですね。リク様」

「なんだ。オレ達が始めじゃなかったんだな」


 見ると、一人はよく知るサラ。もう一人は知り合う機会のなかった頭以外全て鎧で包み、背中に西洋にありそうな槍と盾を持っている騎士のような人が現れた。


「いえ、ボク達もさっき来たばっかりです。それよりも、その人は……?」


 顔からすると二十代前半だろうか。柾雪とまた違ったツンツン頭で眉毛は濃い。ずっしりとした雰囲気よりも、なんだか明るい雰囲気の方が勝っている。


「オレか? オレはガイア・ドラン。二つ名で【龍騎士】を名乗ってる。今回は別行動になると思うが、よろしく頼む」

「一言でいえば柾雪様同様のバカで御座いますから、あまり畏まらなくてもよろしいですからね?」

「はぁ!? 酷くねぇか義姉(ねえ)さん!? オレはあそこまで突っ込まねぇよ!?」


 今の会話に、ボク達四人とも少し疑問に思う。

 だって今、サラの事を……。


「えっと、義姉(ねえ)さん……とは?」

「その呼び方ですか? それは……」


 サラが気まずそうに目を逸らす。そうすると、ガイアが満足げに頷いた。


「いずれそうなる!」

「早くサヤも折れればいいのですが……」


 あ、なんだか公認みたい。


「サラさんは認めてるって事~?」

「そうですね。わたくしは認めております。こんな頭の悪いバカ(・・)と一緒になれば、きっとサヤは今よりもしっかり者になると考えておりますから」

「義姉さぁん……」


 やけにバカを強調した言い方にガイアが泣きそうな顔になっていたがサラはそれをことごとく無視した。


「自分よりもアホな人と一緒になると、自分がしっかりしなければ。そんなふうに思う人の当たり前の感情を使おうってことね」

「でも、もしその人と一緒に更に堕落して行ったら~?」

「その時は……」


 マナの質問に、サラが間を開けて話した。


「ガイア共々、成敗という名の特訓を受けさせます」

「だだだ大丈夫だ! サヤの分までオレがしっかり者になるからさ!」

バカ(・・)には期待しておりませんので安心してください」


 ガイアが崩れ落ちた。

 それほどまでにガイアは頭が悪いのだろうか。ちょっと気になって問題を出してみた。


「ガイアさん。洗濯物の洗い方ってご存知ですか?」

「洗濯物? 水につけながらこすれば良いんじゃないのか?」

ほ、本気で言ってるの……かな?

「料理の『さしすせそ』って知ってますか?」

「料理のさしすせそ? サンマ、シイラ、スズキ、センネンダイ、そ……ソソルダイ?」


 ……何だろう。スズキまではわかったんだけど、センネンダイと、ソソルダイって何かわからない。たぶん、魚類なんだとは思う。思うんだけど、ヒスティマにしか居ない魚なのか、もしくは珍しい魚なのか……。


「窓を拭くのってどうやります?」

「窓拭き? 雑巾でこすれば良いだろう」


 うん。とりあえずこの人に家事をさせてはいけない。


「ガイアさん」

「なんだ?」

「少しは家事の仕方、学んだ方がいいですよ?」

「なっ!?」


 ず~ん、と暗い空気が落ちてきたが、それでも言っておかないと将来酷い事になりそうだ。もしガイアがするとするならば。


「なんだなんだ? ガイアが落ち込んでんじゃん。面白い絵だな」

「柾雪。貴様オレを怒らせたいのか?」

「おおいいぜ? 今からバトるか?」


 バチバチバチ、火花を散らせながら柾雪とガイアがにらみ合う。


「あれ、大丈夫なんですか?」

「こんな所でやるつもりなら俺が今すぐにでも地に這わせるから安心しろ」


 シャインがそう言うと、二人ともビクッと肩を振るわせて火花が散るどころか氷の吹雪が吹いているように見える。


「おろ? みんな早いね~。あたしがのろいみたいじゃん」

「セレクトさん。私達は十分は遅いと思いますよ……?」


 セレクトの冗談に苦笑しながら現れるアイチ。ユミを母と言っていた少女だ。ボクと同じぐらいか、それ以下にしか見えないのだが。たぶん、彼女もセルスと同じように成長したのだろうか。

 そんなアイチがボク達の目の前までくると、頭を下げた。


「この前は慌ただしく、自己紹介も出来ずにごめんなさい」

「いえ、良いですよ! あの時は仕方ないですし……」


 頭をあげたアイチは、にっこりとほほ笑んで自己紹介をした。


「ユミはお母さん、セルスは弟にあたります、電光アイチと言います。普段は潜入捜査ばかりだから、今回も一緒に行動する事になると思うけど、よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 セルスよりも年齢容姿が上だと感じていたから、姉と訊かれて納得した。

 それにしても、アイチは潜入捜査ばかりしているのか。今回の作戦も彼女が提案したし、かなり得意なのだろうか。


「あれ? なんだ全員揃ってるじゃん。これじゃあ置いていけないよ~」

「置いていこうとしないのユミちゃん」


 ほぼ全員がそろったその時。ユミとミユの声が聞こえてきた。

 周りの一般市民達がチラチラとこちらを見たり、憧れのような目で見ている。

 やっぱり人望が厚いんだな、なんて思っていると、ユミはボク達の前に止まるのではなく、そのまま進んで外へと歩いて行った。


センネンダイは一応いますが、ソソルダイはヒスティマ特有の魚ですのでいません。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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