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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第五章 黒い風
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ぼろぼろマナ



「んん……」


 ゆっくりと目を開ける。魔法の効果が切れたのか、睡眠から覚醒出来たようだ。

腕の中の感触を感じながら目を開けると、ライムがボクが寝る前と同じ態勢のまま、動かずにずっと眠っていた。

 相当疲れていたのか、そう思ったボクは首だけを動かして時計を見る。時計はそろそろお昼の時間になる頃だった。キリ達が客室に一度帰って来ても良いだろう時間だ。


 いつまでも布団の中に入っている訳にはいかないので出ようとすると、やはりライムがしっかりと握ってくるので布団の中から出る事が出来ない。だけど、お昼になったらライムも一緒にお昼ご飯を食べなくてはいけないからその時は起こさなければ。

 窓を見てみれば、すでに穴は丁寧に塞がれており、ここからだと切れめなど一つも見れなかった。いや、近くに行ってもきっと見る事が出来ないだろう。窓に掛かっている魔法の粒子が始めこの部屋に来た時よりも強くなっていることから防御を開ける事は出来たのだろう。


 カチャ。客室の扉が開き、中に入ってくる気配がする。その足取りが物凄く重い事から、おそらく中に入って来たのはマナであると思われる。またこっぴどくやられたのだろう。そう思ってボクは見ていると、案の定赤いツインテールの先っぽが始めに見えて、その後にぼさぼさの髪と、頬に焦げ跡が付いたマナの姿が見えてきた。


「マナ……ちゃん?」

「何~……」

「だいじょう……ぶ?」

「もう、ダメ~……」


 ドサッ。マナがボクの方も見ずに自分のベッドに突っ伏した。

 大丈夫ではないと言うマナに、ボクは近づきたく思い、ライムが外れないので仕方なしに胸に抱いたままマナの元へと歩いた。


「髪ボサボサ……」

「魔法でね~……何度も喰らったから~……」


 声に力が無いが、午後からハーロン国に行くので体力は残しておいた方がいいのだが……これでは少しも残っているとは思えない。

 仕方なしに、ボクは回復魔法を掛けた方がいいのではと思い、魔法を発動する。


「〈ルナ・キュアー〉」


 ツキの魔法を使い、マナをできるだけ回復させるけど焦げ跡は何とか無くす事が出来た。髪の毛のぼさぼさが無くなる事は無かったので、手に櫛を持ってくる。


「マナちゃん、起きれる?」

「うん~……」


 マナがゆっくりと手をついて起き上がる。

 片手でライムを抱えているので、もう片方の手でマナの紐をほどく。すると髪が広がったので、ボクはライムから手を離して片手で髪を掴みながら梳き始めた。


「〈ホットウォーター〉」


 ユミの仕込みで、一応全属性が使えるようになったボクは一番弱い水魔法を発動し、髪の毛に潤いを保たせながら梳かす。


「ありがと~。ところで、さっきっから気になるんだけど、その子は……?」

「ライム君の事ですか?」

「ライム……くん~?」


 魔法を屈指して髪を梳かすとすぐに髪が整うのでこれは便利だ。

 ボクは櫛を元に戻すために底から立ちあがり、ドレッサーの所に戻すと同時に自分のベッドに座った。

 マナは少し興味を持ったようにこちらを見ている。


「パトロール中にあったんです。雷鳴の峪であった黒い魔物に取りつかれていたから助けたんだけど、場所が分からなくて、親も分からないからこうして保護してるんです。見つかるまで一緒に住む事になりました」


 ボクはそう説明すると、マナはふんふんと頭を頷かせていた。


「そっか~。ライム君は迷子、ってところかな~?」

「そう言う事ですね。今はユミさんやセルスさんが探しているからあまり長くは掛からないと思いますけどね」


 ボクがそう言うと、腕の中で眠っていたライムが目を覚ました。


「あれ……お兄ちゃん?」

「おはよ。そろそろご飯だから起きようね」

「うん……」


 ボクからようやく離れ、今まで膝の上に居たのをベッドの上に移動する。

 すると、また客室の扉が開いて、中に二人同時に入ってくる。


「お疲れ様です。二人とも」

「ええ。と言っても、これと言って私は疲れてないわ」

「俺もだな。なんせ今日は筋トレだけだったしな」


 と、中まで入って来た所で、やはりマナ同様、ボクの隣で唖然として見上げているライムへと視線が移った。


「さらったのか?」

「ボクがそんなことする人に見えるんですか!?」


 まさか見て早々そんな事言われるとは思わなかった。


「大丈夫よリク君。誰もそんな事を持ってないわ。リク君が産んだんでしょ? 誰との子?」

「産んでませんよ!?」


 いくらボクが連れているからって、そんな考えは酷いと思う。そんな時、ソウナはもう一つついでとばかりに訊いてきた。


「ちなみにリク君。子供がどうやって産まれるか、知ってる?」

「え? えっと……コウノトリさんが運んでくる?」






 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ…………。




 なんだか、すでに窓が塞がっているはずなのに風が吹いた気がする。


「「「…………そう(か)」」」

「え!? なんですか!? なんですかみんなのその目は!?」

「「「ううん(いや)。そのままのリク(ちゃん)(君)で居て(くれ)」」」

「なんですか!? 逆に気になるんですけど!?」


 かなり慈愛に満ちた目で三人から見られたボクは一体自分は何を言ったのかさっぱり分からなくて聞き返して見ても決して三人とも答えてはくれなかった。


「それよりも、お昼だからってここに来る途中に呼ばれたわ」

「それじゃあ行こ~」

「ちょっと待ってください! どうして答えてくれないんですか!?」

(((答えれる訳が無い……)))


 みんなの反応を見れば大体ボクが言った事は間違ってはいる事がわかるのだけど、正しい事を誰も言わないなんてなんだか納得いかない。

 その後も一度だけ聞いたけど誰も話そうとはしないので、ボクもそれ以上は聞く事はしなかった。


 食堂に入り、席に着くと、いつもの恒例のユミの食べる前の挨拶を終え、食べ始めた。


「さて、今回は食べながら聞いてくれて良いよ! 我々電光王国、実は攻撃されてます。それはこの前一部の人が許可も何処に行くかも知らさずに行ったときにあった黒い魔物の話ですが、あれは邪神の眷族でした♪」


 ぶふぅっ。


 数人が口から食べ物を噴き出した。マナも噴き出した。その人達は咳き込んだ後、せっせと近くにあるナフキンでテーブルを拭く。

 攻撃を受けていると言う所では出さなかったものの、邪神の眷族だと聞いてから吹き出した。

 ユミさん。もうちょっと気を使って話した方がいいのでは……。そんな軽い話では無かった気がする。


「邪神の眷族? お前らが倒したってあれか?」

「そ、そうみたいだね~」


 キリは食べながら話しているがマナは完全に食べる手が止まっている。驚いて食べるどころではなかったのだろう。ちなみにソウナはディスがいるのでそこまで驚いてはいない。


「それで、相手がわかったからちゃっちゃと倒そうって話なんだけど……こちらで人選したからそのつもりで♪」


 バーンッ。壁に手を叩いたと思いきや、そこはボードで、そこには名前が書かれてあった。

 視線を巡らせると、右側の方にボク達四人とも名前が乗ってあった。たぶん、全員神と契約しているからだろう。


「さて、出発時刻はお昼を食べたらすぐよ。電光王国東口へと全員集まりなさい。集まらなかったら置いてくから」

「了解」


 ユミはそれだけ言うと、自分も席について食事を取り始めた。


「こうげき、されてる?」

「ライム君は気にしなくていいからね? はい、あーん」


 ボクはライムの口に適度な大きさに切った肉を入れてあげる。

 おいしそうに食べる姿が可愛らしくて、何度も口に入れてあげる。


「ンで、その子供は置いてくんだよな?」

「え? あ、はい。そう、なりますね」


 一人にするのは心配だけど、誰かに預ければ問題は無いかな。ライムは良い子だから迷惑を掛けずに待っててくれるだろう。

 でも誰に面倒を見ててもらおうか。

 そう思ってボートの方に目を向ける。


[ユミ・ミユ・アイチ・シャイン・柾雪・セレクト・サラ・ガイア・リク・ソウナ・マナ・キリ]


 ボードに乗っていない人で知っている人。

 ……誰だろう。雪姫ぐらいだろうか。初めに挨拶しただけだが。


「キリさん、誰か知ってる人いませんか?」

「レインと理菜だけだ。どちらも俺らと同じぐらいの年齢だ」


 一度レインとはあった事があるけど、ちょっと信用できないかも。ライムがもし、キリやレインのような筋トレにハマっちゃったら……。


「えっと、ソウナさんは……」

「そうね。アリスさんならどう? 娘もいるし、子供の扱いには慣れてる筈よ?」


 アリス、か。確か男から女の人になったっていう……。それでシャインと結婚しているのだったか?


「そうですね。後でアリスさんに言ってみます」


 アリスなら大丈夫だと思うし、娘もいると言う事で信用できる。

 という事で食事が終わった後、ボクはさっそくアリスの所まで行き、ライムを預かってくれるかどうか聞いてみた所、快く引き受けてくれたので、ボクはライムにアリスの所にちゃんと居てくれるように言って、それからボクは三人と一緒に東口に歩いて行った。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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