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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第一章 タイムスリップ
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二人で会話



 電光ユミと言えば『英雄姫』と呼ばれた電光王国を治める女王様だ。だがその身の振り方と性格から王女様、又は姫様と呼ばれていると『古書』には書かれてあった。常に城を抜けだし、城下町に降りる毎日など、いろいろと自由奔放な事が書かれてあったが、一方で強大な力と平和に対する人一倍想いが強い人。そして、生涯一人も殺めた事の無かったり、悪魔から世界を守ったり、崩壊する世界を救うためにその身を犠牲にしたためにつけられた『英雄姫』と言う名。


 そんな雲の上のような存在の人で、過去に居たかもわからない人が何故目の前に……目の前……に?


「にしても可愛い~♪」

「わぁ!? い、いきなり何するんですか!?」


 物理的に目の前に来たユミにいきなり抱きつかれた。身長差がユミの方がちょっと大きいぐらいなので胸に埋まると言う事は無かったり、元々あまり無いから死んでしまうと言う事は無いのだが、それでも抱きつかれるととても恥ずかしい。


「あ、顔真っ赤♪」


 顔を真っ赤にして何とか離れようとするも力が強くて離す事が出来ない。

 諦めたボクはもうどうにでもなれ状態だ。


「ねぇねぇ。私の妹にならない?」

「は、い?」


 さすがにこれには反応せざるをえなかった。


「だって可愛いし、私と同じ珍しい白銀色の髪だから妹って言っても誰もばれないって♪」


 ばれるとかばれないとかそういう問題では無いのハズなのだが!?


「いやいやいや、さすがに困るんですけど!? それに、ボク男です!!」


 ボクは仕方ないので最終兵器を投入する。

 今は指輪をしちゃってるけど、これを外せば男にいつでも戻れる。

 そう思って指輪を外そうとすると……。


「へ? それが? その指輪が性転換魔法が発動される指輪だって分かってるよ? その上での発言に決まってる♪」


 驚くが、あの『英雄姫』とまで言われる人ならば、これくらいは普通なのだろうかと心の中では頷いてしまった。


「それに、つけてるって事は女の子願望があるんだよね?」


 なんかいきなり決定付けられた!?

 早く否定しないと!


「ある訳ありません!! これはほぼ強制的につけさせられているんです!」

「え? そうなの? 今後ろに居る子たちには秘密だった?」

「みんなは知ってますけど、他の場所ではボクが女として認知されていまして……」

「そっか。じゃあ今外しても問題ないかな?」

「え……」


 ボクが承諾する前に、彼女がボクの指に嵌めてあった指輪が外された。

 とたん、光を放って元の姿に戻るボク。

 白銀の髪は肩ぐらいまでの短くなり、胸は無くなって下半身にある物の感覚がする。


 つまり男に戻ったのだ。

 だけど、それ以外ほとんど変わっていない為に、彼女から見たのでは胸が無くなった事と髪が短くなった事しか分からないのだろう。

 事実、彼女がちょっと首を傾げている。


「戻った……んだよね?」


 ――疑いの目を向けられて言われたのでボクは心の底から泣きたかった。


「ボクは男です……。こう見えても男の子なんです!」

「あぁ、なるほど。男の娘なんだね~」


 なんか若干ニュアンスが違うような気がしたが、とりあえず男である事の証明がすることができたので良しとする。


「そう言えばリクちゃん、キリ君、ソウナさん。君達はどこの国から来たのかな?」

「ライコウってとこだが、知ってるか?」


 ようやく意識を回復したキリが答えた。


「ライコウ? やっぱり(、、、、)聞いた事ないかな。ミユちゃんは?」


 首を振ったユミがミユに訊くと彼女も同じように首を横に振った。


「やはりな。それじゃあ、ヘレスティアって国も知らねぇよな」


 当たり前だと言うようにキリは答えた。

 二人の会話はまるでこう言う質問をすればこう言う回答が返ってくると知った上での質問だったのかもしれない。


「もちろん。やっぱり君達は未来(、、)から来たんだね」

「だろうな。やっぱりここは過去(、、)か。とすると何千年前だよ」

「さぁ? ヒスティマには時間があるけど地球と違って年号が無いからね。君たちも同じでしょ?」

「クハハッ。そりゃぁ違ぇな。一応俺達の時代には年号あるぜ? 時代は七千二十年ってとこか」

「え? ホント!? つまりあなた達の時代より私達の時代は少なくとも七千年以上ってことね。それはちょっと面白――」


「待った待った待った!!」

「え、えっと! ど、どういうことですか!?」


 二人の止まらない会話にミユとボクが慌てて止めた。


「え? どうしたのミユちゃん?」

「どうしたリク?」


 止めた理由が分からないと止めたボク達を見る二人。

 その中で、唯一冷静な一人が現状を説明してくれた。


「つまりこう言う事よリク君、ミユさん。どんな理屈かは分からないけれども、私達は未来から来たの。それもおよそ七千年以上も前ね。そして、私達は目の前に居る『英雄姫』とご対面をしていると言ったところ。……どういう事かしら? キリさんは何か知っているのでしょう?」


 完全には理解できていなかったソウナがキリに説明を求めた。正確にはまだ伝えていない場所なのだろう。


「あぁ。簡単にいえばカナの仕業だろうな」

「カナさんの?」


 どうしてそこで母さんの名前が?

 天然トラブルメイカーこと赤砂カナの名前が出てくる理由が分からなかったが、とりあえずキリが話してくれるまで待ってみた。


「お前ら、此処に来るときに何か見なかったか?」

「何か、ですか? ボクは白夜さんと戦ってからの記憶が曖昧で……」


 実際、気絶していて記憶が無いのだろう。


「そう言えば、此処に来る前に水色の何かを見た気がするのだけど……」

「水色の何か? それってこの魔法の事かしら?」


 そう言ってユミが丸い円をかくと、その場に水色の楕円形のゲートのような物が現れた。


「たぶん、そうだと思うけど……」


 ソウナが自信なさげに答える。


「いや、この魔法だ。俺はカナからいろいろと訊いていたんでな」

「そう」


 ユミはそう言うと、そのゲートを閉じる。


「結局、そのゲートは一体何なの?」

「この魔法? この魔法は時空魔法よ」

「「時空魔法?」」


 名前からして、時間とか、空間とかに関する魔法を使えるのだろうか。


「ま、此処で話すのもなんだから移動しましょう」

「こいつ等はどうすんだ?」


 キリが人攫い達を指すと、ミユに任せると言って先に歩いて行った。「しょうがないなぁ」とミユはその人攫い達を集めて、親指と人差し指を立ててVを作って向ける。それから反転させるように指を動かすと、何事も無かったように追って来た。


「今何をしたの?」

「ちょこっと魂に干渉して人を攫う事ができなくなるようにしたの」

「軽く言っているけどそれって余程の事じゃないかしら?」


 ソウナの意見に激しく同意できる。

 簡単に魂に干渉してしまうとは、それは余程の事ではないか。魔法を受けてしまえばその人の思い通りになる、ある意味究極の操作魔法では無いのかと考える。


「あぁ、ミユちゃんね? 世間では【霊魂神姫】って呼ばれてるの」

「ちょ、その名前で呼ばないでよ!?」


 慌てて止めるもミユは間にあう事は出来なかった。

 二つ名を言いたくなかった理由とは、その名前が恥ずかしかったから?

 それとも、自分の手の内をさらしたくなかったからであろうか。

 などとかんがえていると、ミユが話題を変えるように慌てて質問した。


「そ、それよりも! ユミちゃんが『英雄姫』って呼ばれてるってどういう事?」

「え? 私そんな名前で呼ばれてるの?」


 ミユが興味本位に。ユミが目をキラキラとさせて聞いてきた。


「え、えぇ。でも、『古書』や『神話』でしか語られてないわ。それに、一番詳しいのはリク君だと思うのだけれど」


 そう言えば、ソウナは『古書』は見た事が無い。白夜から借りて『古書』を見た事があるのはボクだけだ。


「へぇ。でも、どうしてそれでしか語られてないのかな? やっぱり電光王国だとやっていけない?」

「そ、そんなこと無いです! むしろすごいんです! でも、最後はか――」


 悲しい物語で閉じてしまう。そう言おうとして急に声が出なくなった。


「――? ――ッ??」


 いくら声を出そうとしても出す事が出来ず、しまいには他の人に心配をかける始末だった。


「だ、大丈夫? リク君」

「大丈夫じゃ……え?」


 ソウナの心配にボクは普通に答える事が出来た。先程まで話す事は出来なかったのに今は普通に話す事が出来た。

 これは一体……?


「あ~。制約が掛かったんだね~」

「制……約?」

「それはなんだ?」


 キリが無遠慮に訊くと、ユミが簡単に答えてくれた。


「様はこれから起こる事を知らせない為。世界的な物は許されると思うけど、個人の事は伝える事は出来ない。未来が誰も知らないように、知らせないようにするための〝クロノス〟の仕事の一つよ」

「へぇ。そいつは面白い話を聞けたな。〝クロノス〟と関わりあんのか? さっきの時空魔法と言い、俺達を未来人だと信用できる部分とよ」

「ちょっとあんた! ユミちゃんに向かってケンカ売ってんの?」


 キリの挑戦的な態度にミユが突っかかる。


「ご、ごめんなさい! キリさんの普通がこれなんです。許してもらえませんか?」

「う……」


 何とかボクはキリを許してもらおうと見上げると、なぜか口元――いや、もう少し上の方だろうか――を押さえて顔を赤くさせていた。


「ミユちゃん……」

「ちょ、ユミちゃんその顔何!? 何でにやけてるの!?」

「ううん。なんでもな~い」


 からかわれているミユを尻目に、どんどん先に進んでいるユミ。

 なんだかこうして見ているとやはり目の前に居るユミがあの『英雄姫』だとはにわかに信じられない。


「あぁ、そうそう。もう一つ聞きたい事があるの」


 急に立ち止まって振り返るユミ。

 ボク達も立ち止まると、次のユミの言葉を待った。








「どうしてリクちゃんの魂は半人半神プラス四分の一黒なの?」







「「「は?」」」


 ボク達三人の言葉が重なった。


 いや、だってボク自身そんなこと知らないからね?


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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