パンドラの箱
視点はソウナさんです。
「誰……。箱を開けた愚か者は」
向こうから来た顔を見せない女性。その理由は薄い黒い布を両手で持ち、顔の半分以上を隠しているからだった。
「ソウナさん。あれは……?」
「〝パンドラ〟よ。ちょっと大変な事になるかもしれないけど」
私がそうしている中で、リクが刀と腕輪、だけでなく透明な羽も顕現した。
私はすでに準備状態で、回復魔法を剣に付加させている。
「私を……開けた時の毒や麻痺は解いたのね……。悪い事は言わない。後ろにある光の向こうに帰ってすぐに箱を閉めて」
「その理由を、聞かせてもらってもいいかしら?」
私が言うと、目の前に居る〝パンドラ〟は口を閉ざした。
だが、次の瞬間。布を掴む右手を離して口元に持って行って泣いた。
「私と関わると……全ての人が不幸になるのです。私は拒絶されているのです……。世界に。そして、都合で私を生みだした神々に……」
涙が頬を濡らし、その場にうずくまる〝パンドラ〟。
確か彼女を作った神々は〝ヘパイストス〟〝アテネ〟〝アプロディテ〟〝ヘルメス〟だ。彼女は『パンドラの箱』としてかなり有名なのである程度はわかっている。調べるために図書館に行って簡単に見つかるぐらいだ。あまりにも有名なので逆に試練は難しくなっているのではないかと感じる。
しかし、確かに彼女は人類にとっては災厄の根源のようになっている。
天の嵐にせよ、不治の病にせよ、そのすべてが彼女が箱を開けた事により振り撒いたと言う話だ。そしてそれは、〝プロメテウス〟が天界から火を盗んで人類に与えた事が原因だ。
「あなたは私と契約を求めているようですが、残念ながら私と契約は出来ません」
「いいえ、出来るわ。要するに、あなたのその最後の箱を開ければ、少しは楽になると思うから」
彼女は気がついて、そっと首から下げていた小さなロケットを服の内へと隠した。
「いけません。これ以上、新たな災いを起こすつもりですか」
彼女の雰囲気が変わった。先程みたいな弱々し雰囲気では無く、明らかに敵意に色を染めている。
「違うわ。それは、少なくとも人類にとって怖い事では無いわ」
「そんなの。誰がわかるの。けど、いいわ。力づくで来ればいい」
彼女が両手を布から離した。布は決して落ちる事は無くて顔は見れなかったがその手から多くの魔力がただ漏れて下へと落ちる。ドライアイスの様に靄がどんどん広がって行くのに対し、私はその剣に回復魔法を込めてただ待っていた。
「リク君。〝パンドラ〟は状態異常の魔法ばかりを掛けてくると思うから気をつけてね」
「わかりました」
刀をしっかりと握って魔力を込めているリクに対し、私は絶対にリクが前に出ないように釘をさしておいた。
「それと、リク君はなるべく後衛でお願い」
「え? それはどうして……」
「私が〝パンドラ〟を倒したいの。じゃないと、リク君に頼ってばかりじゃダメだから」
私は剣を振り上げた。光を纏った剣。
私が剣に回復魔法を付加させているのはあの状態異常の靄を乗り越えるための魔法。自分は攻撃の防御に長けて居ても状態異常には防御をできない。
だから、状態異常を受けたその瞬間に回復する。
「行くわよ。〝パンドラ〟」
私は地面を蹴って走り出す。強化魔法も掛けてるのでその速度は風を切る。
そして、走るその先に靄が襲ってくるも剣を振る事によって全て斬りはらわれる。 私の後にリクが続いて行こうとしたら……。
「〈カーズデーモン〉」
私の前に黒い靄から多数の影が現れた。
「!?」
私にそれぞれ襲い掛かって行くも、白刃の一閃が通った。
「ありがと!」
「いえ、ソウナさんは〝パンドラ〟だけに集中してください! ボクが他を倒します!」
もう一度、リクに心で「ありがと」を言いながら真っ直ぐ〝パンドラ〟に向かって行く。
彼女は止められないとわかったのか、別の魔法を放ってきた。
「〈プレーステール〉」
それはもう巨大な竜巻が現れた。
さすが災厄。体がそれに引っ張られると感じた瞬間に地面に剣を突き刺して飛ばされないように固定。リクも動けないでいる中、〈カーズデーモン〉は風に影響されずにリクに攻撃をしようと接近する。
「〈デッドポイズン〉」
そこに、彼女が風に影響されない靄を放出し、近づいてくる。
剣を抜けば飛ばされ、抜かなければあの振れたら死ぬかもしれない魔法にさらされてしまう。最悪の状況。
だけど、私は落ち着いてその状況を打破する。
「〈グラィウス〉!」
私の強化魔法として使われていた全ての眷族が解放された。
もちろん、巨大な竜巻に全ての鳥は飲み込まれていくが、狼や甲冑は地面へとしがみついている。
私はその剣を抜いたとたん。体が吹き飛ばされそうになるも人型甲冑に体を支えられて飛ばされずに済む。
「はぁぁ!」
近づく靄に向かって剣を掲げ、斬り裂くと同時に眷族を支えとしながら彼女に近づいて行く。
「〈キューマ・ハザード〉」
竜巻が治まり、次に来たのは巨大な波。
「〈イスキューロン・エテレイン〉」
再び騎士や狼を強化魔法として使い、襲ってきたその波を横に斬り裂く。
だが彼女の魔法がそれで終わるハズも無く、それは私を囲むようにして飲み込んだ。
「――ッ」
素早く息を吸って肺に酸素を残す中、彼女がまた新たな魔法を放ってきた。
「〈デモンズ・シャーク〉」
波にさらわれ、上も下も分からなくなってきた中で放たれた魔力のサメはスイスイと素早く接近してくる。その中で私はおちついて剣が当たる範囲に入って来たその瞬間をねらって振り払った。
(〈武乱〉!)
海の中でも素早く振られた剣技にサメは斬り裂かれ、消え去ったのを確認した直後に飲み込まれていた波が斬り裂かれた。
「〈一刀両断〉!」
縦に斬り裂いたのはリクだ。病魔と戦っている合間を縫ってこちらへと魔法を放ったのだ。
床へと足をつけた私は彼女に向かってまた走り始める。
「ぶ、〈ブロンデー〉!」
さすがに焦ったか、〝パンドラ〟が声を震わせながら魔法を放ってきた。
それは雷のようで、雲が急激に現れたかと思うと蒼白い雷が襲ってきた。私はディスの加護である冷静を受けていなかったら焦っていただろうと思ったが、剣を振り掲げ、軍神自慢の強化魔法を使って一気に駆け抜けた。
「あなた、どうして災厄を――ッ」
「私は【治癒天使】。リク君のためなら、魔法による死や災厄なんて奇跡で払ってやるわ! 〈軍神の刃〉!!」
一気に全魔力を剣に集中。
パキィィィン、と何か壊れる音を立てながら私の剣が〝パンドラ〟の胸元から斬り裂いた。
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