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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第三章 季節と心
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好きな人?



「よしっ。そんじゃあ帰ろっか♪」

「出せぇ!!」


 ユミは捕まえた兵士を浮かぶシャボンのような魔法を放って中に入れ、電光王国の城へと帰る事になった。

 あまりにもあっけなく終わってしまったので、少し拍子抜けだが、誰も犠牲は出さなかったからよかったと思う。


「それより、リク君ホントにいつの間にそんなに強くなったの?」

「そうだよ~。ビックリしちゃったよ~」

「いえ、今日の深夜にまた三人の神様と契約しまして……」

「「三人も!?」」


 驚きの表情をした二人が少し固まってから、怪しむように聞いてきた。


「ど、どんな神様?」

「えっと、残りの季節の神様……って言うか、女神様ですね」


 ボクがそう言うと、隣で黙していたキリが口を開いた。


「なるほど。冬の女神であるシラが居るから、それにつられて他のも来たってことか。だが何で未来では来なかったんだ?」

「たぶん、過去で。つまり今ボクが契約したからだと思います。過去に来る前の未来では皆さんと契約していなかったから……」

「そうか」


 キリはそう言うと、先を行くユミの後へと続いて行った。

 そっけないその態度にちょっと不思議に思いながらも、ボクはその後を追って城へと戻って行った。


 城へ入ると、とりあえず客室へと戻った。

 ただ、キリだけはちょっと用事があるとかで外へ出て行ったが。


「それにしても、リク君はそこまで強くなったら、ある程度目標は達成できたのではないかしら?」

「う~ん。それは無いと思うな~」

「どうして? マナさん」


 ソウナの推測に、マナが反対する。

 ちなみにボクはマナに賛成だ。


「だって、リクちゃんはユミさんに一対一で勝つ事が出来る~?」

「まだ勝つ事は出来ないと思います。魔力の扱い方や、剣術なんか、ユミさんの方が上ですから」

「つまりはそう言う事」

「…………どういう事?」


 ソウナは今の会話でまだわからないようだった。

 ならばと、今度はボクがソウナに説明してあげた。


「ソウナさん。以前、ボクが意識を失っている間、ユミさんが体を動かしていたって話していましたよね?」

「えぇ。でもそれが何か関係があるの?」


 まだ気がつかないのかなと思いつつ、仕方ないとも思う。なぜなら、現場に居合わせたのはボクは意識が無いとして、キリとレナ、そして微妙だけどアキの三人だけだからだ。


「その前の日。ボクが竜田に襲われて意識を失い、ユミさんに変わったって言ったじゃないですか」

「えぇ。……あっ」


 そこまで行ってようやくソウナは理解した。

そう。聞くところによると、あの時竜田を圧倒して倒した後、白夜とも戦っているのだ。

 しかもその時、ユミは押し切れずに逃げられたと言っていたらしい。白夜はユミと対等に渡り合える力を持っている。ならばボクはユミよりも強くならなければいけないだろう。


「大変ね。私達も、それだけの力をつければいいのだけど……」

「二週間でどこまで強くなれるかわかんないもんね~」


 そう考えると、ボクは剣術やいろんな特異魔法を見ていけば倍以上に強くなれるのだろうか。短期で強くなる方法がわからない二人に少し申し訳ないがボクの今の状況はとても良い状況なのかもしれない。


「マナさんは今どうなの?」

「…………」


 マナの顔が急に暗くなった。

 そしてぽつりと、か細い声が微妙だが聞き取れた。


「…………。地獄……を見てるよう……かな……」

「「何をされてるの?」」


 それはもう気になった。

 そして、コンコンとドアをノックされる音。


「おい。終わったんなら行くぞマナ」


 ドアの外から聞こえる重苦しく、竦み上がるような声。その声には聞き覚えがある。

 一昨日の夜、セルスの部屋に行く前に転移陣の前であった人だ。声が独特なのでよくわかる。

 そして、その人が教えてくれたとしたら、なんとなくとっても厳しくなるような事も……。


「マナちゃん……」

「な、何……?」


 ボクは言った。言わなくてはいけないと思ったから。


「頑張って……」


 マナが肩から崩れ落ちた後、ソウナによって外へと連れて行かれた。

 だが、ドアを開けようとしたその瞬間にマナは「よしっ」と気合を入れて復活。ドアを元気よく開けて男の人に連れられて行った。

 ちょっと、自暴自棄になっていやしないかと思うがマナなりの強くなる方法なのだろう。


「さて、それじゃあ私はアリスさんの所へ行ってくるわ」

「はい。頑張ってください」


 ボクはユミが何やら捕虜にした人と話す事があるようでしばらく待機だ。

 だからソウナを送り出して、ボクは一人ここで静かにしている事にした。


 だけど、ボク一人と言うのは少しさびしい物なので……。


「ルナ、シラ、ソメ……かな? 今起きてるとしたら」


 ボクは三人を外へと呼び出した。

 金髪で灰色の服のルナに氷、もしくは緑や透明のティアラと羽を持つシラとソメが現れた。


「なんじゃ? 暇つぶしか?」

「『ユミ様』がもどってこられなくてひまならば『魔力操作』のれんしゅうとかはどうでしょう?」

「…………」


 ソメはちょこんとボクの膝の上の座った。その際、透明な羽が邪魔になるかと思ったけどそうでは無く、その羽は触れない為に邪魔にはならなかった。

 部屋には本来あり得ないであろうそよ風が吹いているが、おそらくソメを呼び出したからではないだろうか。


「そう言えば、楓属性って何系統なの?」

「なんじゃ? 知らぬのか?」


 どこかで聞いた覚えがあるような気もするけど、少し忘れている。


「『楓属性』とはふつう、『風系統』のぞくせいです」

[そして、異常状態の魔法しかない特別な属性でもある]


 ルナの後に続けてシラとソメが話して(書いて見せて)くれた。

 とすると……それはアキが得意とする属性なのかもしれない。


「時にリクよ」

「?」

「主はキリが好きなのか?」

「な、何言ってるのルナ!?」


 顔がまるで火にあぶられたように一瞬にして熱くなる。もちろん、ユミの言葉とキリの顔を思い出してしまったからだ。


「そのはんのうはもしや……」

「違うからねシラ!? 第一、ボクも、キリさんも男ですから!」

[だけど、ここだとそんな常識関係ない]


 ソメの出した紙がボクの目の前に持って来られる。

 だけど……だけど……。


「あのね? やっぱり、ボクは将来女の人と結婚したいと言うか……。正直、ボクがウエディングドレスを着るなんて考えられないし、ましてや子供なんて……」


 ユミの子供であるアイチやセルスを思い出しながら答えた。ボクとキリの子供とか、考えられない。


 ……白銀の髪か黒髪で、体格はボクより少し上になって、男の子だったらたぶんキリみたいにちょっと好戦的で女の子だったらおとなしめだけどちょっとわがままで……。って、ボクは何を考えているんだろう……。


「ならば、マナやソウナなどはどうなのじゃ?」

「え?」


 ルナに言われ、ちょっと想像してみる。


 マナは、なんだかんだで楽しい毎日になるのではないだろうか。ボクもマナもよく母さんのトラブルに巻き込まれているので、たぶんたくさんのトラブルを巻き込むんだと思う。それを楽しんでるボクとマナに、困ったように怒るのだけど思い出になって思い返したりする子供達。


 ソウナは、どうだろ。マナと正反対で落ち着いた毎日を暮らせるのではないかと思う。とても静かで、幸せに暮らせる。そんな気がする。その中で子供達に本を読んであげるソウナ。ボクはその間にご飯を作り終えてみんなを呼ぶ。そんな毎日を過ごす。


 一通り考えてから、ボクはやっぱりその毎日の方がいいなと思ってしまう。だけど、キリとそう大して変わらない気もした。


「どうなんでしょう……。やっぱり、ボクはまだそんな……。友達としてはみんな好きですけど、恋愛としては……」


 考えれない、と思う。

 キリに関してはユミが断定するように言っただけで、決してボクの本心ではない。ただの条件反射のような反応だと思う。もしユミがキリでは無くソウナと言っていたら、ソウナを意識するだろうから。


 コンコンっ。ドアが叩かれる音がして、声がした。


「リクちゃん。戻って来たよ~」

「はい! 今行きます! さ、みんな戻って」


 ボクは三人を元へと戻し、それから部屋の扉を開けた。


 そうして、異変を感じたのはお風呂に入って寝た後、夜中に目が覚めた時。





 ――深夜でもキリがベッドに居なかったのを見かけてからだった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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