一人の為と巫女
視点はソウナさんのままですよ~
「ところで、綺麗な水色のお姉さんがどうしてナナ達のお部屋に?」
「ちょっと、アリスさんに様があったのだけど……。今は留守?」
「お母さんなら今お外行ってるよ? 人形の材料が切れたから買いに行くって! ホントは付いて行きたかったけど、ナナ、これから千里眼のお兄ちゃんにメディカルチェックがあるから……」
「メディカルチェック? どこか具合でも悪いの?」
とてもそうは見えないが……。
「ううん。お父さんが千里眼のお兄ちゃんに頼むの。ナナ、どこも悪く無いのにね!」
そう言えば、彼女は悪魔の分身のようなものだってユミが説明していた事を思い出した。おそらくそれの事なんだろう。悪魔は精神面で狂乱しないようにとしか考えれない。
ナナはそう言うと部屋から出て来て奥の方へと足を向けた。
「たぶんいつもの素材屋さんの所に居るから言ってみるといいよ!」
元気に言いながら奥の方へと走って行った。
私はついその元気さに手を振ってしまった、が。
「そのいつもの素材屋さんって、一体どこなのかしらね……」
そう言いつつ、私は後を追うのも忍びないだろうと感じてとりあえず外へと向けて歩き始めた。
いつものと言っている所を見ると、どうやらアリスはたびたびお世話になっている店とは予想が付く。
人形に並々ならぬ熱意を入れている所からすると戻ってくるのを待つよりは行った方が何千倍も速いと推測する。
私は城の外へと二回目の外出をすると、まずはどちらに行けばいいのかさっそく迷った。
「昨日みたいに屋根の上を渡る、と言う方が早い気もするけど……」
『それだと、アリスが入った店すら超えてしまう可能性があるな』
ディスの言い分に頷く。
とすると選択肢は一つ。
「地道に訊いて回るしかないわね」
『それも人の道なり』
「私のコミュニケーション能力を舐めているのかしら?」
『…………そんなにダメか?』
「少なくとも九年間は人と話したことが無い時期があったわ。自然と話すのが下手になるのが普通でしょう? 人との付き合い方なんて知らないもの」
『まぁ、それはうすうす気がついてはいた』
私は城下町、と言ってもいいかどうか分からないが、とにかく町の人々の話を聞くべく歩きだそうとした時、後ろから声がかけられた。
「あれ? そこに居るのは……確かソウナさん?」
振り向いた先に居たのは丁度外へと出てきた所の青色の巫女服を着ている少女が出てきた。
「ええ、サヤさん……だったわよね?」
「そうそう。みんなを客室に案内したサヤだよ」
それにしては……かなり砕けた口調だが……。もしかして、こっちが本当のサヤなのだろうか?
「城に居た時と少しイメージが違うわね」
「そりゃぁそうよ。だってあれは……半強制的にサラにやらされてて……家訓がどうたらとか。いくら代々巫女の家計だからって、あたしは自由に生きた……って、ソウナさんに言っても意味無いね」
自分の家の事が気に入らない、といった所だろうか。それであんなオドオドしていたと言う事ね。
客室の前で何か音がしたと思ったらあれはおそらくサラがサヤを裏で殴るなり蹴るなり、とにかく何かした音でサヤが痛がったとわかった。
「とにかく、この事はサラには言わないで! 言ったら、あたしが死ぬ!」
怒られるとかじゃなくて死ぬんだ……。
ともかく、別に言っても言わなくても私にメリットは無いし言わなくてもいいと考えた私はその代わり、と考えて聞いてみた。
「別に言わないけど、アリスさんが良く行く素材屋を知らない?」
「素材屋? えぇっと確か、この道を真っ直ぐ行って、大きい十字路があるからそこを右に曲がって左手に見える小さな通路を通って、更に……」
「ちょっと待って。そんなに遠いの?」
てっきり、近場だと思っていたのにサヤの話を聞いていたら段々といけるかどうか心配になって来た。
「アリスさん。人形作りにはホントうるさくて、材料もアリスさんが納得した場所にしか買いに行かないの」
「そう……」
待っていた方が迷わなくていいかもしれない。その間、地下四階で素振りとかでもして……。
「あ、なんだったらあたしが途中まで案内する? 丁度、あたしが行きたかった場所も同じ方角だからさ」
「え?」
突然の誘いに、私は動揺した。
まさか一緒にと言われるとは思わなかったのだ。関わりも無かったし。
だけど、案内してくれるなら越した事は無いだろう。
「そうね。お願いしようかしら?」
「うん!」
それから私達はおそらく一番一通りが多いであろう大通りを歩いて行った。
初めてきた時や走っていた時はあまりみなかったが、いろんな店がある物だと感心する。
ほとんど、出店と言う所は無く、しっかりとドアのついた店ばかりだ。
立ち入る人達はみなその店を開いて入って行く。
ヘレスティアよりも、私達ライコウに似た国だろうと分かる。
道行く人は楽しそうに話したり笑いあったりしている。この国の治安がいい証拠だろう。
時折裏路地を遠目に見てみたりしても、特に怖い人達が屯っている訳でもなかった。
「なんだか、町のみんなが楽しそうね」
「それはみんながみんな。ユミ様の事を好きだからね。自分達が治安を悪くしてユミ様に迷惑をかけたくないからだよ」
「信頼の、厚い人なのね」
本人はとても女王のなりではないのに、こんなにもみんなに愛されているなんて、世界を探しても居ないことぐらいわかる。
逆に、その女王のなりでない性格が市民を元気付けているのかもしれない。
「だからなんだけどね。みんながみんな、自分たちで出来る事は自分たちでやろうとして、城に来る町内の依頼って無いんだ。大抵困ったモンスター退治や国外の依頼ばっかり。まぁ、金融関係や政治関係はユミ様がやらないといけないんだけどね」
ちょっと呆れた笑いをこぼしながらサヤが話した。それもしょうがないだろう。彼女からはカナのような雰囲気を感じる。仕事をせっせとやるとは全く持って思えない。
「それでも、いくら時間掛かってても市民はみんなユミ様の決定を待つの。なんでって言ってもとっても困るぐらいにね」
「ホント、すごい人なのね。一緒に居るとそうは感じられないけど」「ま、まぁね……。それがユミ様の変なところかなぁ……」
そのサヤの反応に、ついくすりと笑ってしまった。
すると、サヤもそれにつられるようにして笑った。
世間のユミに対する想像はおそらく働き者で、それでいて性格が良く、市民の事を第一に考える最強の女王様とかになるだろう。
だけど、近くまでくるとそんなのはありえないと断固否定できる。
彼女はなんて事は無い普通の人間で、ただ普通の人よりも強いってだけな人なのだ。
「あたしはユミ様に出会えてよかったなって思ってるかな。じゃなかったら、いつまでも巫女だなんだって言われてただけだから」
「もしかして、その事もう解決しているの?」
それにしてはサラに昨日どつかれていたではないか。
「まぁね。解決した……って言うか、和解? 交渉? とにかく、あれでもサラは昔よりは優しくなったよ? 今は神楽を舞わなくていいし、祈祷しなくてもいいし、占いも、神託もしなくていいから」
「それでも、サヤさんの着ている服は巫女服よね?」
「そ。ほとんど巫女の仕事をしていないんだけど、それでも昔から着てるこの服になれちゃって、他の服だと落ち着かなくて……。いやぁ、恥ずかしい事だね。たまに舞いたい時もあるんだよね。例えば、失敗しっちゃったりした時とか、大人がお酒を飲んで忘れるように、あたしは神楽を舞って忘れるの」
それって結局……。
「結局、完全には巫女はやめれていないんだな~これが。昔からあったから、捨てられないってどこかで思ってるって、ユミ様に言われちゃった。あたしが巫女をやめるって事は、家族を捨てるって意味とほとんど同等だったから……」
なんだか、ふっきれている顔をしている。
それほどまでにユミの存在が大きかったのか、もしくは家族が一番と分かっているのか。
「ま、あたしだけがこんな思いしたんじゃないんだけどね」
「他にも?」
「うん。城に居る人は大体ね、ユミ様に助けてもらった人達なんだよ。初めは大概他の国の捕虜だ~って人達なんだけど、他の国よりこの国の方が断然いいの。でも向こうの国に弱みを握られてるって人が多くて、大概ユミ様が解決。だから城のみんなの信頼も厚いんだよ」
「そう……。これから行く、アリスさんも?」
私はついそう聞くと、サヤは少し戸惑う表情をした。
「いや、彼女の人生を変えたのは……シャインかなぁ……。シャインの人生を変えたのはユミ様だけど……その辺の事聞きたかったら、本人たちに聞いてみたらどう? 正直、あまりオススメしないけど……」
「じゃあやめとくわ。パンドラの箱を開ける勇気は私には無いもの」
「その代わり隣にシャインが居たらシャインが顔を真っ赤にして面白い反応をくれる」
「今日帰ったらアリスさんとシャインさんとナナちゃんの三人の時に話してみようかしら?」
「あははっ。やっぱりみんなおんなじ反応するなぁ。あ。あそこの路地裏入って行った所の『モンスター雑貨屋』だよ」
私はサヤが指をさした方面へと顔を向ける。いつの間にそれだけ歩いていたのだろうかと思ったが、それでもとても面白い話を聞いた。
「ありがとう。今度は私が話してあげたいところだけど……」
「部屋は四階の奥から二番目の左側の部屋だよ! サラと二人部屋だから、未来のお話を期待してるね! それじゃあね!」
サヤは手を振りながら、人ごみの向こう側へと走って行った。私も手を振り返して、それから路地裏へと入って行った。
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