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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第三章 季節と心
43/85

ユニット

視点はキリからソウナです



「魔力を取り戻すって……どうやってだ?」


 俺は少し胡散臭く思いながら理菜を見る。

 魔力は先程レインが言ったように時間経過か魔力切れをするか神と契約するかしかなかったではないか。

 そのほかの方法は俺には想像できない。瞬時といってもジーダスの時見たいな儀式しか思い出せない。だが人の命を踏み台にしたような儀式は正直論外だ。まずあり得ない。

 理菜はそんな俺の顔を見ながら漂々とした態度で話し始めた。


「私は【理想郷《エリュシオン》】、だから……。想像すればなんでも作れるの。それこそ、失った魔力を戻す事も……だから……」

「――ッ!」


 魔力を、戻す事が出来る!? そんな事が出来るのか理菜は!?

 身体強化など、体に関する事は強化できる魔法はいくらでもある。

 だが魔力自信を強化できたり、増やしたりする事が出来る。つまりは魔力に関する事のできる魔法なんてまず無いはずだと考えていた。

 魔力が無くなれば勝ちも同然。そんな考え方だったのに、理菜と言う人物は魔力を強化できたりもすると言う訳か!?


「キリ。あんまり理菜を働かせるなよ。理菜は体が弱くて、特別な魔法が使えるが……使いすぎると、倒れる事があるんだ。だから言わなかったんだが……。理菜だって、始め言わないって。と言うか理菜が言いたくないって言ってたじゃないか」

「そう、だけど……。なんだか、キリさんが似てるから」

「「似てる?」」


 似てるって、誰にだ?

 俺はそう思うと同時、理菜が俺を指差してから、レインへと指差した。


「お、オレ?」

「うん。キリさん。レインに似てる。一生懸命、何か一つの事に対して真剣な所とか。あ、もちろん、レインの方がかっこいいよ? //」

「ば、バカ! 今言うなよ……」


 お前ら、マジで刺されろよ。


 にしても、俺がレインに似てる、か……。


「それで? 魔力を戻そうってか?」

「そ、そうだけど……。ずっと黙ってて、怒った?」

「怒んだったらオレが今すぐにでも殴り飛ばす」

「あほか。怒るかよ。魔力が元に戻るんだからな。むしろ吉報だ」


 そうすれば、魔眼も使えるようになるしな。


「それじゃあ、目を瞑って」


 俺は理菜に言われるまま目を閉じる。


「忠告しておくと、次目をあけた時は――」

「ベッドの上ってか? 分かってる。いいから始めろ」

「……わかった」


 力を抜き、その時を待った。



 ――すると、風が吹き抜けたと共に、理菜の声が聞こえてきた。



「想像して。貴方が。貴方の魔力の限界を」


 限界? そんなの……。





 ――ある訳ねぇだろ。





★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「はっ!」

「こちらです」


 剣は全て避けれるも、私は自分に掛けた強化魔法を屈指して何とか反撃で来る数十本も同時に来る剣を避けれるようになっていた。

 イヴ自身は一撃もこちらを攻撃する事は無く、辺りに漂わせている数十本もある剣で攻撃してくる。

 それは前から来るのだけでは無く後ろからも襲ってくるのでイヴだけに集中するのではなく、他の場所にも視線を巡らせなければいけない。


「くっ、やっぱり一度にこれだけ襲われると――きゃっ」


 少し油断した隙に剣が私の足に突き立つ。それを見たイヴは一斉に剣を襲わせ

る。


「〈武盾〉!」


 私は全方位に防御魔法を展開。それに全ての剣が刺さるかと思ったがいくつかがそれを突き破って侵入。

 ディスで剣を三つほど弾くが、残った数本の剣が足、腕、腹へと突き立った。

 右腕に映るゲージは瞬く間に減って行き、全損した。

 その時、全ての剣は消えて、私はその場に座り込んだ。


「はぁ……はぁ……」

「昨日よりも動きは上々。少し休憩しましょか」

「ありがとう……」


 呼吸を整えながら、手短な岩に体を預ける。

 今日も負けたと少し落ち込みながらも、それでも昨日よりは剣を避けれている。

 やはり、身体機能は大切だ。単純な強化魔法でも強くすればちゃんと強い相手と渡り合える。まだ少し弄ばれている感はあるが。


「それしても、イヴさんのその足は……?」

「これですか? 脚部の補助ユニットです」


 イヴが見せながら答える。


 その見せた太股の部分からちょっと浮いた所に機械的な物がある。そして足の踵を守る様にしてあるユニットと、それを保護するように後にあるユニットと、昨日つけていたユニットとプラスでつけていたのだ。


「昨日ソウナ様と戦った後に、今日また戦うためにマスターに使用許可を出していただきました」


 まさか……ね……。

 私はつい思ってしまった事を口にした。


「徹底的に実力差を見せようと……?」

「心外です」


 しかしイヴは私の言葉を否定した。

 それからまた口を開いた。


「私はそのような事は致しません。ソウナ様に敬意を称して、動く事のできる脚部の補助ユニットを使用したまでです」


 確かに、今日の決闘ではイヴは昨日より私の剣を大きく避けれていたり、その場から動いていたりした気がする。

 それにしても、私に敬意を?


「昨日。ソウナ様が放った一撃。あれの所為で私はソウナ様に負けたのです」

「……え? え?」


 昨日。イヴが、私に、負けた? それは初耳だ。だってあの時は私が斬られたと思ったのだから。

 ドッドしか残っていなかった私があの場面から、どうやって?

 いくら考えてもおそらくイヴが言った最後の一撃。〈軍人の刃〉を受けてなのだろう。あれはイヴのゲージを全損させるだけの力があったって事だろう。


(ディス。それだけの力があったのね……。最後の魔法)

『え? あれはソウナが作った魔法だろう?』



 …………え?


 魔法を、作った?


「それ、どういう事……?」


 確かに、魔法と言うのは想像をして作る物だとは知っている。

 だけど神様の魔法まで作れる物なの?


『だから、元々〈軍人の刃〉なんて魔法は僕は持っていないんだよ。僕の魔力を込めた事は誰よりもソウナが知っているけど、魔法自体を知っているのもソウナだけなんだよ』


 てっきり、私はディスにそう言う魔法がある物だと思っていたのだが……。

 確か昨日はなったあの魔法。あれは自分に溜めた、つまり強化に浸かった魔法を全て剣に注ぎ込んで放った魔法なハズだ。

 それほどまでに威力を残していたかどうかはわからない。


「どうされましたか?」

「いえ、なんでも無いわ。でも感謝するわイヴさん」


 昨日も今日も戦ってくれて少しは強く慣れた気はする。だけど、これらを何度も繰り返さないと強く慣れないんだろう。

 始めは地下四階で武器の扱いなどやってみても何年かかるかわかった物ではないと思っていたけど、こうして相手が居ると短時間で少しでも上昇する。


 ……そう言えば、あの時にあったアリス……と言っただろうか。彼女の場所にでも言ってみようかと考える。

 彼女が何か手伝ってくれると言っていたし、彼女の人形、と言うのは興味がある。

 確か、三階の右に行った四つの部屋だったような気がする。


「また相手してもらいたかったらいつでも言って下さい。私はこれから、マスターに呼ばれておりますので」

「ええ。そうさせてもらうわ。それより、アリスさんの部屋は三階の右四つ目でいいのかしら?」

「はい。あっています。ですが、説明不足です。正確には三階の右四つ目の外側。つまりは右に行って右手にある部屋がそうなります」

「右手ね。ありがとう。感謝するわ」


 私は礼を言って地下一階の決闘出来る訓練室から外へと出た。

 イブと一緒に魔法陣へと乗り、三階までは案内してくれたのでまた礼を言い、私は右側の通路を歩いて行った。


「一つ……二つ……三つ……ここね」


 たどり着いたドア。

 他のと同じ純白のドアだが、少し叩くのにためらわれる。

 一度深呼吸をしてから、私はそのドアをトントンと叩いた。すると「はーい」と奥の方から聞こえてくる返事。

 私は一歩下がって中から出てくるのを待った。


 そして……。


「誰ですか?」


 開かれた扉から顔を覗かせたのはシャインでもアリスでも無く、小さな女の子だった。

 つまりはナナと言う少女。


「あれ? あなたは食堂に居た二番目に綺麗なお姉さん?」


 誰と比較しているのかわからないけど、とりあえず二番目らしい。


「ありがと。でも、一番目は誰なの?」


 ちょっと気になったので聞いて見た。予想外な答えが帰ってくるなんて知っていたら誰だって聞かなかっただろうと後になって後悔する。





「昨日いた綺麗な黒髪のお姉さん!」




 キリ。女として生まれていたら友達には慣れなかったかもしれないわ。今も少し友達と言うよりは敵対しているのだけど。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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