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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第三章 季節と心
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参考に

リクからユミになります



「それで? 魔法を作る事が出来たから見て欲しいと?」

「はい。ダメでしょうか?」

「う~ん。ダメじゃないけど……昨日の今日で出来るとは到底思えないんだけど……」


 ユミが困ったように頬をかきながら視線を逸らしている。


「それに、昨日の最後にギリギリ三つ目の魔法をユニゾン出来たんだよ?」

「はい。でも、昨日ユミさんの魔法を参考にしてもらいましたから、ちょっと似た物になっちゃったんですけど……」

「参考に!?」


 ユミが驚く。

 どうしたのだろう。もしかしてボクはマズイ事でも言ったのだろうか。


「ち、ちょっと待って。人の魔法を参考にって私まだ一回しかリクちゃんに見せていないよね?」

「え? はい。それを見て、魔力をどう動かせば似たようなのが作れるかなって思いまして……」


 なぜなら、一瞬しかユミの魔力を感じなかったとはいえ、放った後の魔力はしっかりと見えていたのだ。あとは、自分がそれになるべく似せれるように魔法を放てれば問題は無いはずだ。

 まだまだ改善する余地はあるだろうし、それぞれの季節の女神と契約出来たので改善した後ももっと強くする事が出来ると思われる。


「それじゃあ、期待しないで見てるね」

「そこは期待してて下さいよ……」


 ユミがパチンっと指を鳴らすと、床から現れる複数の大理石。そして、一つ明らかに材質が違うだろう物も浮き出てきた。

 色は青色だろうか? だがほんの少し透明感があり、とても綺麗な岩な事は分かる。


「あの、これは何ですか?」


 ボクがそう聞くと、ユミは自分の元に出てきた大理石に座りながら口元を緩ませた。


「RPGゲームとかでよく出るとっても貴重な物で、一番堅い物ってな~んだ♪」


 一番堅い物?


「えっと、ボク、ゲームとかあまりやらないですし……」

「え? そう? 仕方ないな~。オリハルコンって知ってる?」

「あ、それなら知ってます。結構有名ですよね」

「うん。それ」

「あぁ、これが……」

「…………」

「…………」

「…………」

「えぇぇえええええええええええええっっ!?」



 ボクは驚く。


 マナの入れ知恵だが、オリハルコンは世の中で一番堅いが、幻とも言われている超合金ではなかったか?


 そんな物が、目の前に!?


「私の魔法を参考にしたんだから、これくらいは出来るよね? あれは次元を斬るものだから堅さは関係ないはずだからね」

「いやいやいや! ダメでしょ!? だってとても貴重な物ですよね!?」

「余るほどあるから気にしないで~」

あ、余るほどってどれくらい!?

「さ、早く早く♪」


 な、なんだか急に自信が無くなって来た……。

 でも、やらないと。そして、ユミの言葉が本当だった事を自分自身が認めないと、ボクはきっと強くはなれない。


(ルナ。お願い……)

『うむ』


 ルナが答えてくれて、手に鞘付きの刀が現れる。

 ボクは複数出てきた大理石と一つのオリハルコンを視界へと入れると、目を閉じて壮大な量の魔力を込める。


「へぇ……。瞬時には出せないけど、大量の魔力を一つの場所へととどめるのか……」


 大理石はほぼ無視でもいいだろう。今一番大事なのは、世の中で一番堅いと言うオリハルコンを斬る事。それほどの切れ味の刃を形成する必要がある。

 魔力の量は大事かもしれないが、それ以上のイメージが大事。

 自分の魔力だけじゃない。ルナ、シラ、それから三人の魔力も少しずつ貰う。



 そして、ボクは今だと思ったその瞬間をねらって刀を抜き放った。



「〈一刀両断〉!」



 シュッととても簡素な音がしたその瞬間――ズゥンッと音を鳴らして全ての大理石が斜めに切り崩された。


 だが……。



「――っ」



 右手に残る強い痺れ。


 原因は簡単だった。


 前にはびくともしていないオリハルコン。

 それを打った時の反動が帰って来たのだ。





 オリハルコンは斬れる事はかなわなかった……。




 パチパチパチ。それを見て、ユミは拍手をした。


「…………ごめんなさい」

「初めから期待しないで見てるって言ったでしょ?」


 ボクは少し悔しく思いながら、鞘に刀を納めた。


『ぬぅ。少し妾にも衝撃が……』

『だいじょうぶですか?』


 ユミはボクのその様子を見てから、大理石から立ちあがり、ポンッと頭を優しく置いた。


「それに、簡単に私が作った魔法を完全コピーして貰っちゃったら私が困るでしょ?」

「え……?」

「あの魔法使えるようになるに何ヶ月費やしたと思う?」


 何ヶ月?


 えっと……ボクがユミの魔法を見て真似れたから……。


「一ヶ月か二ヶ月……でしょうか?」

「ばか。ヒスティマに来てから十四ヶ月。つまり一年と二ヶ月掛かってるの」


 予想外の言葉に、ボクは言葉を失った。

 ユミはボクの頭の上から手をどけて、それからオリハルコンの場所まで行って、膝を抱えてまじまじと見つめた。


「でも、リクちゃんは私よりも想像力が強いかもね。あ、いや。意志が強いのかな?」


 ユミはそのオリハルコンを優しく撫でる。それからちょいちょいとボクを手招きした。

 ボクはその行動に首を傾げて駆け足で近くまで走って行った。

 それから、ユミが指で示した場所を見た。

 遠くからでは何の変哲もないオリハルコン。

 だけど、近くで見たらまるで何かに傷でもつかれたかのような後が残っていたのだ。


「これ……」

「さっきリクちゃんがつけた物でしょ? 〈一刀両断〉。なかなかに侮れないじゃない」


 楽しそうに笑うユミが屈んでいた上半身を起こして、指を鳴らす。

 大理石は全て無くなったが、オリハルコンだけがその場に取り残された。まるで、まだ終わっていないとでも言っているようで悔しい。


「まぁ今日はこれを斬る事は諦めて、魔法の練習でもしましょうか。あ、神様に自分の魔力を操らせて楽しようと思わないでね?」

「…………はい!」


 今日は。そう言われてボクはユミが言いたい事がわかったような気がした。

 いつかはオリハルコンを斬れと、暗にそう言っているのではないかと考えたのだ。


「それじゃあ、魔法を使うに出来るかどうかは心しだい! って事をよく理解出来たみたいなので! 今日は少しは進み具合が速度アップすると信じて全属性の第一段階を覚えれるようにしようか!」


 ぜ、全……属、性?


「リクちゃん。全属性が使えないと、いざという時に困るし、時空魔法も覚えれないよ?」

「そ、それは困ります! 分かりました。全属性、大変かもしれないですけど、頑張ります!」

「よぉっし、その意気! それじゃあまずは、昨日の復讐からね♪」

「はい! お願いします!」




 後々になってから気がついた。


 ――時空魔法に必要な属性は時属性であり、決して全属性を使う事は無いのだと……。







(どう考えてもおかしい。

 人の魔法を一回見ただけであれだけ近い魔法を放つ事が出来るだなんて……。

 普通ならば一回見てもさっぱりという反応だ。少し説明しただけでもこうも簡単に発動なんてできない。しかも私が作ったオリジナルである特異魔法。同じ魔力を持つとしても中身まですべてわからなければ……適正がなければいけない。

 もしかしてリクちゃんは……。リクちゃんが得意な魔法は時空魔法なんかじゃなく……。

 いや、ここで決定付けるわけにはいかない。もしかしたら、単なる偶然かもしれない。第一、そんなのが得意な人が居るならば……そんな人が特定の人と戦っていけば必ず、私よりも強くなる……)


 私はオリハルコンを見てやる気を出しているリクを見ながら考える。

 ありえないと言えるほどの考えだが、ありえないという考えを否定しているのは私自身だ。

 だからこそ、私はありえないという事を無しにして、本当にリクが『それ』が得意なのだと前提を置く。


(午後は私だけじゃなく、理菜……じゃまだ危険だ。サラかサヤにでも手伝ってもらう必要がありそう)


 私は午後の予定を記録しながら、リクに魔法を教えるのだった。

誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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