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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第一章 タイムスリップ
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人攫い2



「やぁっ!」

「炎が居るのに氷かよ! こらおもしれぇ!」


 右手に持つ氷剣を囮に振るうと、それに合わせるようにして剣を振るってくる人攫い。更に左手の氷剣を振るおうとすると、その前に人攫いの足がボクのお腹をとらえてくる。


「ぐっ」

「おら、剣が緩んだぞ嬢ちゃん!」


 ピクッ。


「…………」

「うぉ!?」


 ボクの剣を振るう速度が速まる。

 黙ったまま、ひたすらその剣を振るう。何も考えずに振るわれる片刃の氷双剣の速度は加速し続ける。


「早ぇ早ぇ! だけど遅ぇ!」


 キィィンッ。


「……ッ!」

「次はしっかりとした武器持ってこいや」


 氷剣を一本折るとともに、拳が腹へと入ってくる。

 ギリギリでもう一本の氷剣で防ぐ事ができたが体はそのまま後ろへと飛ぶ。


「あんま傷つけるなよ!」


 縄を持っている人攫いが近づいてきた。

 ヒビの入った氷剣を投げ、氷剣を新たに作る。

 それを作るまでに少々時間がかかり、縄の人攫いがもうそこまで来たが、その間に入って来たソウナがそれを阻止する。


「〈武乱〉!」


 四連撃の魔法を放つが、縄を持つ人攫いは剣に斬られないように剣に縄を巻い

た。


「離しなさい! 〈武連〉!」

「おぉッと!」


 人攫いがソウナが魔法を放つよりも早く縄を引いたかと思うと、その縄はソウナの体に巻きつき、動かそうとしていた体を縛り上げた。


「!? な、何!?」

「捕縛術だが、しらねぇのか? 魔法も使う必要ねぇとか、こりゃぁ俺達本当にラッキーだな」

「〈黒炎渦〉!!」


 急に当たり一面に燃え上がる黒い炎の渦。


「何だこりゃ!?」

「悪魔憑きがやりやがったのか!?」

「汗んな! ただ周りに黒い炎が上がっただけじゃねぇか!」


 人攫い達に冷や汗がはじめて浮かぶ。

 気づいていないようだが、黒い炎は火炎旋風を渦巻きながら除所に近づいているのだ。〈黒炎渦〉とはそう言う魔法なのだが、いつもよりもゆっくりと近づいているために気がついていないようだ。


「はぁ!」


 ボクはその隙にキリに巻き付いている縄を斬る。


「サンキュウ、リク。マジでやらねぇとヤベェみてぇだな。〈雷迅〉!」


 キリの周りに魔力粒子が色濃く現れ、蒼白い雷がキリを囲む。一段階上がった稲妻属性を発動。

 キリの速度は先程とは比べ物にならないほどに速くなり、先程圧勝された人攫いに拳を放つ。

 だが人攫いはそれが良く見えていたのか、その拳を回避してキリの真横に入る。


「〈アイシクルソード〉!」


 ボクはそこに横から氷剣を放った。

 人攫いはその剣をしゃがんで避けると、追撃できたキリの拳を剣でガードした。


「テ、メェッ!」

「ガキが調子に乗るな!」


 その人攫いがキリを蹴りあげると、ボクに向かって剣を投げてきた。


「!?」


 ボクはとっさに氷剣でその剣を弾こうとするも、氷剣がいとも簡単に砕けた。

 急いで身をかわすのではなく、その場から飛び退くと、剣が元の居た場所を通り過ぎていった。

 だが、ボクの横腹に激痛が走った。


「かわしたと思ったのにっ」


 ボクの目には何が起こったのか見えていた。剣を確実にかわしたのだが、その剣より半径数メートルに魔力の色が見えたのだ。


『こおらせて『痛み』をけいげんしますか?』

「ううん。大丈夫。でもまた剣をお願い」

『わかりました』


 その手にまた氷剣が作られる。だがそれもあまり意味がなかったかもしれない。

 その理由は――黒い炎の渦が人攫い達を襲い始めたのだ。


「なん、だこれ!? いつの間に此処まで!?」

「ぐ、ぁ! 頭ぁ! 助けて……」

「言われんでも助けてやるよ」


 パリィンッ。


 ボクは目を見開いた。



 ――ソウナの防御魔法が今まで動かなかった頭の振るった魔力粒子が渦巻く剣にいとも簡単に壊されたのだ。



「嘘!? 私の〈武盾〉が破られるなんて!?」

「そいつは悪かったなぁ」


 人攫いの頭は真っ先に中央に居たマナを狙い始めた。


「なんなのよコイツっ! 〈黒炎弾〉〈黒火球〉〈黒炎渦〉!」

「ほぉ。三連魔法が使えんのか」


 三連続で放つその黒い炎をいともせず頭は斬り払い、一瞬でマナとの距離を詰め終わった。


「ちょいと痛いが我慢しろや。〈震波〉!」

「――ッ」


 マナの身体能力では避けきれず、頭が剣では無く掌から放った衝撃波らしき魔法に直撃して意識を刈り取られた。

 力無くマナはその場に倒れ込むと、今まで他の人攫いを襲っていた黒い炎の渦が音も無く消えていった。


「さぁ。次は生意気な小僧だ。〈神速〉」

「クハハ……マジかよ、お前」


 乾いた笑いを洩らすキリに、頭が特攻した。

 本能的に勝てないと踏んだのか、キリは頭から振るわれた剣から逃げるように後ろに跳躍した。

 キリが避けた後に振るわれる剣。頭は逃がさないようにしっかりと追って来た。


「何だ? 逃げてるだけか?」

「クソッ。なんだコイツッ!? 俺の速度について来れんのかよ!」


 キリが頭に襲われている間。ボクはすぐさま加勢しようと走りだそうとすると、横から縄が飛んできてボクの体を縛り上げた。


「え!?」


 両手両足縛り上げられ、ボクは立つ事が出来ずにその場に倒れてしまった。


『このなわ、『魔力』を『封じる』ことのできるなわです。まほうがつかえません。もうしわけございません……』


 シラからの謝罪の言葉が聞こえる。どうやら魔法が使えないと言うのは本当のようで、先程からソウナが木につるされながら一生懸命もがいていた。


「ひひひ。頭、後そいつだけですぜ~」

「そうか。それじゃあ終わらせようか。〈震波〉!」


 キリは持ち前の身体能力を生かして、どうにか頭の掌に当たる事無く後方にジャンプして避けた。


「キリさんダメ! 横に避けて!!」

「な――ッ」


 だが、ジャンプした直後にキリの体が震えた。


「ぐ、ぁぁああああああああ!!」

「キリさん!!」


 後ろにある木に叩きつけられ、キリは崩れる。

 苦しそうにお腹を押さえ、立とうとすると頭が近づいてきてその肩を足で抑えつけた。

 何故キリが喰らったのは? それは魔力粒子が頭の掌からキリのお腹まで繋がっているのだ。

 つまり頭の魔法は直線を攻撃する魔法だったのだ。


「て、テメェ……ッ」

「まだ意識あるのか、タフだな。だが頃あいだろ。おい、誰か縛り上げろ」

「了解でっせ」


 縄を持った人攫いが苦しみながらフラフラと立ちあがるキリに近づいて行った。


「はぁ……はぁ……ふざけんじゃねぇぞ……。ぜってぇ、捕まってたまるか……〈雷剛拳〉!」


 キリの拳が空振る。その瞬間に、キリの両腕と両足が縛り上げられ、更に口まで塞がれた。


「キリさん!!」

「おい、そいつの口塞いでねぇじゃねぇか。さっさとしろ」

「了解」


 また先程ボクを縛り上げた男が近寄ってくる。


「こ、来ないで……ください……」


 ボクはその男から逃げるように少しずつだが確実に後ろへと下がって行った。


「ほぉら可愛娘ちゃん。そんな涙目で見上げちゃったらおじさんもっといじめたくなっちゃうじゃないか。ひひひひっ」

「おいおい、あんまりいじめてやるなよ」

「わかってますよ頭ぁ。大事な、大事な商品ですからなぁ」


 地面をすりながら逃げる。男が追ってくると言う恐怖にかられながらボクはとうとう、何かにぶつかって逃げる事が出来なくなってしまった。

 おそらく木か何かにぶつかったのだろうと特に木にできなかったボクは、目の前からくる男から逃げようと下がれないのに、足を執拗に動かした。


「さぁて、さっさと捕まえ……」



 ――男が、音も無く倒れた。



「!?」

「何だ!?」

「何があった!?」


 人攫い達が慌て始めるのを見て、ボクは逃げる足も止めて驚いていた。


 魔力粒子がボクの後ろから放たれているのだ。それが男の顔へと繋がっている。

 ボクはゆっくりと、後ろを見る。

 それは人の足。


 上に顔を向ける。

 森の中ではとても暗くて顔は見えない。

 誰か分からないまま、ボクはその人に脇を持たれて立ち上がり、胸に肩ごと抱きかかえられた。

 その細い腕とその人からの優しい香りから、女の人だとわかり、その顔を見た。


「君達。覚悟は良い?」


 白銀の髪が揺れた――。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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