夏の女神
ツツがその手を上げると、呼応するように四つ浮かぶ火の玉が回りながら集まり、放たれる。
「行け!」
それらはすべて自由自在に行動し、それぞれが別々の方から攻めてくるのをボクは身体強化魔法を発動して避けるも、避けても避けても次から次へと火の玉が舞うようにして襲ってくる。
ボクはそれらを避けながらルナの刀で斬り裂き、それぞれを無力化していく。
「魔術の神が居るっていうのは厄介だぜ。〈ファイアストーム〉!」
火炎の渦が接近するも、ボクは避けずに魔力を練った。
「〈ファイア〉〈アイス〉」
『リク様~。こちらで制御するので風も追加しましょう~』
頭の中でそう聞こえ、ボクは頷く。
「〈エアロ〉!」
一度昼間に達成する事が出来た。そのためにどんな感覚かは何となくで覚えている。
そして、今は魔力を入れる量を気にしなくていい。この場ならツツが倒れる心配は無い。
「いっけぇ! 〈フロストバーニング〉!!」
巨大な魔法陣がボクの目の前に展開。そこから魔法陣と同じぐらいの大きさである冷気の火炎が吹き出て、接近していた火炎の渦を飲みこむようにしてツツへと急接近した。
「少しも抵抗が無いってありえないぜ!?」
ツツは危険だと察知し、火の粉を撒き散らして消えた。
ボクがどこ行ったかと探すまでも無く、ツツはボクの後ろの方から火の玉を放っていた。
「〈ファイアウェポン〉!」
だけど今度は四つばかりでは無く、八つ。同時にそれらが攻めてくる。
「くっ」
全部をさばき切れるかどうかわからない。
ボクは初めに迫って来た火の玉を斬り裂き、そのすぐ後ろにあった火の玉を姿勢を低くして切り裂きながら前に。同時にせめてきた二つの火の玉の片方を斬り裂き、もう一つは避ける。片方が避けられたので後ろから接近し、そこに前から次の火の玉が接近するので何とかガードしようと魔法を放つ。
「〈氷対壁〉!」
刀を上へと軽く投げ、両手を立っている前と後ろに押し当て、氷の壁がそれぞれ顕現。二つの火の玉はそれにぶつかるも相性が悪いのか火の玉一つに付きそれぞれ氷の壁が壊れてしまった。
だがそれすら考えていたボクは投げた刀を受け取り壊れたその隙を狙ってツツへと跳躍。いまだ残っていた三つの火の玉がそれぞれ三方向から攻めてくるのに対し、ぶつかる直前でボクは上に跳躍。火の玉が火の玉に当たり、一つの火の玉となったその瞬間をねらって切り裂いた。
「なかなか動くぜ。〈フレア〉!」
そこで、奇妙な魔力を感じた。ボクとツツの間の丁度中間に赤い玉が出現。それは次第に凝縮されていくかと思いきや……。
――大爆発を引き起こした。
「!? 〈氷柱〉!」
ボクは氷の壁を顕現するも瞬く間にヒビが入りこのままではまずいと思い、一度後退して距離をとる。
氷の壁が壊れたころは少し離れた所に居たために何とか爆風に巻き込まれずに済んだ事に安堵する。
「まだまだだぜ!」
今度は火の玉を数倍も大きくした魔法。それが現れて凝縮されていく。
「何、あれ?」
『おそらく、『太陽』のちからをとりいれた『爆発』をさせるのかと』
「え!? それとても危なくない!?」
『斬ればよかろう。近づければ』
『神様四人も居れば、太陽の爆発を受けても普通に生きていれますよ~』
『痛いの大歓迎……はぁ、はぁ』
一人は放っておこう。それと、今気がついたがソメの声があまりにも幼い。
「さぁ、受けてみなだぜ!! 〈サン・バースト・エクスプロ―ジョン〉!!」
大きい火の玉が急激に縮まって行く。
それから、巨大な力が眩しいほどの放射線を放ちながら大爆発を起こした。
ボクは衝撃を出来るだけ防ごうと考え、自身に身体強化魔法を更に強め、刀を地面へと刺して前に壁を作る。
「〈氷対壁〉!」
二つの分厚い氷の壁を前へと展開して、魔力を送り続けた。
そして来る衝撃。
ボクは歯を食いしばって魔力をその氷の壁へと送り続けた。
「氷系統は火系統に弱いんだぜ? 壊れるに決まってるぜ!」
ツツが言う通り、氷の壁にはついにヒビが入り始め、それが一分しない内に破壊寸前になる。
その時にボクは右手を地面から離して刀を掴む。そしてそちらにも魔力を送った。
「大丈夫……一度見てる……。出来る……」
『リク?』
自分に暗示を掛けるように呟く。
今日の昼間聞いたユミの話を信じ、ボクは魔力をありったけ込める。
どれだけの魔力を込めてユミは放ったかは分からない。なぜなら放つ直前に魔力を一瞬で溜めたような感覚だったから。
だからボクは今ある魔力の大体を込める。
ユミとまったく同じ魔法は放てない。自分なりにオリジナリティを掴まなければいけない。
ボクが今まで一番得意として来た事。
氷系統の魔法。これは火系統には分が悪すぎる。
神独特の太刀魔法。これは今使っても意味は無いだろう。
なら何か?
そんなのは簡単だろう。
今、魔法を作ればいい。
地球人の強みは常識にとらわれない想像力。
ボクは左手を地面から離し、ルナを鞘へと納めた。
『りく?』
『目の前に迫っておりますよ~?』
『…………?』
目を閉じる。壮大な魔力が鞘とルナの刀に集まったその時……。
――氷の壁が二つ割れたと同時に目をあけて抜き放った。
「〈一刀両断〉!」
刀は下から上へと振り上げられ、強大な魔力が放たれた。
「なっ!? 爆風をっ!?」
『『『『斬った!?』』』』
ツツの放った太陽エネルギーの爆発を真っ二つへと斬り裂き、ボクとツツの一本道が文字通り斬り開かれた。
ボクはルナを鞘へと納めてその間を縫うようにして走りだした。
「マズイぜ!? 〈ファイアウェポン〉!!」
このまま近づかれると厄介だと慌ててツツが火の玉を顕現してそれを身に纏おうとし始めた。
『りく! あれをまとうと『ツツ』はてんいされます!』
「大丈夫。ルナ、使える?」
『妾を誰じゃと思っておる。魔術の神じゃぞ?』
ボクはそれを聞くと足に魔力を込めた。
「〈神速〉!」
グンッと周りの景色が置いて行かれたような感覚を覚えながら、ボクはその刀を鞘ごとツツの横腹を持って行った。
「きゃぅ!」
ズバァンッ! と派手な音を立てながらツツはボクが鞘を振り抜いたその先へと飛んでいった。
『勝気なツツから可愛い声が聞こえましたね~』
『羨ま……はぁはぁ』
誰か頭の中で興奮している人を止めて。
ボクの思いもむなしく、ソメは治まる事が無かった。
「な、なんて強烈な一撃だぜ……。刀で攻撃しなかったのは一体なんだぜ?」
「もちろん。斬りたくなかったからですし、力を認めさせるならこれでもいいかと思いまして」
神具をそれぞれ光から人型へと戻していく。
ルナも、シラもサオも満足そうに。一人、ソメが頬を高揚させて興奮していたが無視した。
「ツツ~。これだけの実力があるんなら、いいんじゃないかしら~?」
「…………(コクコク」
「……はぁ、分かったぜ。ったく……。四季の中でアタイだけ反対していたのがバカみたいになってくるぜ」
え? 実力? 反対?
ボクは今のやり取りの意味がわかっていないとシラへと視線を送っていた。
「わたしたち『四季』のなかで、『夏』の『ツツ』だけがはんたいしていたんです。かこにきてからの『リク』のじつりょくがないとかんがえたのでしょう。わたしたち『三人』はりくの『人格』がとてもやさしいひとだったので『問題』なかったんです」
シラに説明されて、ボクは納得していた。
ボクが過去に来てから戦ったと言えば始めの人攫いの時。城の地下一階で雪美と戦った時だけだ。
ユミに魔力を教えてもらうまではまともに戦えて無かったしルナも居なくて、シラに頼ったやり方だった。
その事が気に入らなかったのだろう。ボク自身に実力が無いとみなされて。
「おら、手を貸しやがれだぜ」
ツツが歩み寄って来たので、ボクは左手を差し出した。
それから、ツツの唇がボクの手の甲に振れた。
ボクの左肩に熱い痛み。少し片目を瞑ってしまうも、しっかりと刻まれた。夏の太陽を思わせるような紋章だ。
「ふむ。これで四季全ての神と契約したのじゃな。二つ名を【四季】に変えてみたらどうじゃ?」
ルナに別の二つ名の提案をされる。
だけど……。
「ううん。ボクの【金光の白銀蒼】って、ちょっと思い入れのある二つ名だから……」
「そうなのかの? ならば無理強いはせん。それでは、妾はそろそろ寝るからのぅ。夜はまだ明けぬからのぅ」
「おやすみ」
ルナがボクの中へと光となって消えていく。
残ったのはボクと四季の女神たち。
「ここからは電光王国へと戻りましょうか~」
「そうですね」
パチンっと指をシラが鳴らせると、何も無い無の世界から妖精が遊ぶ電光王国へと戻って来た。
夜風が涼しく、景色が綺麗だ。
「それでは、私は季節が間逆なので秋眠に入りますね~。戦闘や、何か聞きたい事がありましたらツツかシラにお願いします~」
マイペースな春のサオはさっさと光りとなりボクの中へと入っていった。
しかも話があったら他の人に訊いて欲しいだなんて……。とりあえず他の人に訊いて見て、サオしか分からない事があったら仕方ないのでサオを起こすとしよう。
「アタイはまだ眠りに入らないけど、一番眠らないのソメだと思うぜ?」
「そうですね。いまは『秋』ですから、『四季全体』にかかわることでしたら、かのじょと『話す』といいとおもいます」
「…………(コクコク」
話すといいと思いますと言われても、ソメ。無口で話せそうにないのだが……。
「あぁ、リク。ソメは基本話したがらなくて、ドが付くほどMな奴だけどアタイやサオよりは常識人だぜ? シラには負けるけど、十分だと思うぜ」
「ほそくするなら、『ソメ』は『紙』、もしくは〈念話〉ではなしてくれます」
「…………(コクコク」
話したがらない神様って、一体……。
それにしてもと、周りを見回す。とても暗く、いつの間にか遊んでいた妖精たちも自分の家へと帰って行っているように見える。
「それでは、わたしたちもかえりましょうか」
「そうですね。帰って早く寝ないと」
じゃないと、明日は起きられそうもない。
そんなことを考えながら、ボクは城の客室へと向かって夜の空の散歩を楽しんだ。
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