剣の雨
視点はソウナからイヴへと変わります。
「勝敗は雪美様の時と同様、ゲージが先に無くなった人が負けとなります」
「ま、待って! 本当に戦うの? それより、アンドロイドって?」
「私は元々、機械でありますのでアンドロイドですが、それが何か?」
機械? 見た目そんなのにはまったく見えないし、触ったらぷにぷにしてそうな肌をしておいて機械!?
「それでは、私とソウナ様の間にあるカウントがゼロになりましたら始めです」
こちらの話を聞かずにさっさと進めてしまうイヴ。
だが、これはこれでいい機会なのではないか?
きっと他の人もこうやって誰かしらにコーチをしてもらっているのではないだろうか。
リクはユミに、マナは雪美に。キリは分からないが、誰かしらに教えてもらっていると思う。
私は剣を正面に構える。
カウントが7、6、5……と減って行き……。
0。私は地面を蹴った。
イヴはそれを見ながらその場から一歩も動かず、手を動かす。
すると浮かんでいた剣がそれぞれ一斉に襲い掛かってきはじめた。
「くっ。はぁ!」
私は正面から行くのは危険と判断し、横へ走ると、そこに剣が突き立ってくるので走る方向を変えて回避、その方向が分かっていたかのように飛んできた剣を私は剣で弾くと、更にイヴへと近づいて行った。
「[三十 同時]」
イヴが手をこちらい翳すと、更に待機していた剣や槍などがさまざまな方向から降って来た。
「〈武盾〉」
私は上に天井が出来たように防御魔法を張り、そして真横から来た斧を剣で受け流した。
「〈セイントウルフ〉!」
私は聖獣の狼を召喚すると、それをイヴへと向けて走らせた。
「ガウッ」
「邪魔です。[全て 円陣]」
イヴが手を高く上げると、それを合図に全ての武器がイヴの周りにまるで台風や竜巻のように集まった。
これでは近づく事はおろか、攻撃魔法を使っても意味がない。近づけばこちらが細かく斬られてしまう。
「[全て 解放 攻撃]」
私が足を止めてしまった時、イヴはそれを見て回っていた全ての武器が流れるようなまま私や狼に向かってくる。
貫かれると直感し、私は横へと飛ぶが、狼はそれが遅れで全身姿が見えなくなるほどの武器に刺されてガラスが割れるような音を立てて消えていった。
あれ喰らったらゲージはたちまちゼロになるんじゃないだろうかと考えながら私は次の行動を考える。
どう考えてもあれをやられると近づけそうにない。
(だからって、私は遠距離魔法なんて無いものね)
『そうだな。私は武で武を制する。遠距離武器など私は使わない』
私は根っからの後衛タイプなのだけど。などと心で思いながらも、それを補うだけの強化魔法を今は発動している。
(これ、〈風土雷火〉同時発動使える?)
『い、いや……。同時に使うと体は持たないと思うぞ?』
「そう。ありがと」
私はそのまま走りながら迫りくる剣を避けたり受け流したりしていると、急ブレーキをかけてほぼ直角にイヴに向かって走る。
「[十拳の剣]」
幸い、イヴは円陣を使わなかった。
イヴは手を上に向けたかと思うと、その手に一つの片刃の剣が握られた。柄が蛇のような顔になっている少し気持ち悪い剣だ。
私はディスを振りかぶると剣をゆっくりと構えるイヴに向かって一閃。
激しい金属音。
私とイヴのそれぞれの剣がぶつかり合って静止。競刃釣り合いをしていると、イヴの肩から突如飛来する剣に驚きながら後退。
剣は私の肩をかすって後ろへと飛んでいく。
右腕を見るとゲージがほんの少しだけ縮む。
「剣解放〈大蛇の怒り〉」
イヴがそれに続いて剣を大きく振ると、尾が一つで首が八もある蛇が灼熱の業火を纏って迫ってくる。
「何なのよあれ! 〈武盾〉!」
『知らないのか? 一つの尾に八つの首がある蛇と言えばヤマタノオロチだろう。 スサノオに十拳の剣によって八つ裂きにされた事に怨念を持っている。 そんなヤマタノオロチなんかの魔法を喰らえばおそらくゲージはたちまちゼロだ』
私はなるべく広い範囲で防御魔法を発動するが、灼熱の蛇はそれをいとも簡単に突破してくる。
「何か他に防御の魔法って無いの!?」
『ある。〈軍神の城壁〉と言う魔法が――』
「〈軍神の城壁〉!」
私はディスが言い終わる前にそれを発動。
『は、早いぞソウナ!? 話は最後まで聞く物だ!』
目の前に現れる巨大な岩壁。その岩壁に灼熱の八蛇は体当たりを仕掛けた所、先程の様には壊れず、体当たりした蛇は形を崩して消えていった。
『バカか! 城壁は最大の防御力を誇るが向こう側がまったく見えなくなるんだ! 説明は最後まで聞け!』
ディスは、城壁の上から無限とも言えるほどの数の剣が飛来してくる光景を目に焼きつけながら頭の中で怒鳴って来た。
「し、仕方がないでしょう! 一つ目の魔法がいとも簡単に破れたのだか、ら!」
数々の剣を受け流しながら私は返す。
だが、無限とも言える剣は次第に私の場所が定まってくると、そこを中心とした円内を集中して降り注ぎ始めた。
さすがに受け流しきれなくなった私はその場から逃げ始めるも剣にまるで目でも付いているかのように私に降り注いでくるのは変わらない。
避けたり、うけきれなくなった剣がどんどん私の体へと突き立ってくる。
「い、たっ……ッ。〈武盾〉!」
魔法を発動し、剣がこれなくなったかと思いきや何度も剣がしつこく突き立ってくるせいで持った時間は十秒ぐらい。
城壁は魔法の効果が消えたのか、解けるようにして消えていき、私は見えたイヴに向かって最大限の加速をして走った。
右腕のゲージはもうほとんどない。かすり傷でも追えば負けだろう。
私はその前に一矢報いるために剣に力と魔力を入れて放った。
「〈軍神の刃〉!」
「〈大蛇の怨念〉」
私の剣からは輝かしい光を発し、イヴの剣からはとても熱い業火が発生した。
「斬りはらえ!」
「焼き尽くせ」
私の剣とイヴの剣がそれぞれ交差した。
ケージが真っ白になり、終了のブザーがなる。
「負けたわね……」
負けた。私はディスに教えてもらった強化魔法を解くと、どっと疲れが回って来て……。
「……目が、開けて……」
視界が暗転した。
「…………」
完全にソウナは寝てしまった。負けたとか言ったが……。
右腕を見る。ゲージは無い。
ソウナの右腕を見る。
そこにはゲージがまだかすれば削り取れるだろう残りがあった。
「負けたのは、私でございますね」
最後の剣の交差。
私は横に振ったのに対し、ソウナは縦に振るってきた。
――と言う事をせずソウナも横に振るって来たのだ。
身体速度では勝てないと踏んでいた私は到底その剣を避けきる事や剣でカバーする事が出来ず、まともに腹に入れられてしまった。
私の剣は動揺した結果、ソウナの頭上を通って行った。
私は機械。強化魔法は使えない。その代わりに人間には本来出来ない事が出来る。岩を砕けるし、速度はマッハ速度まで出せる。
だけど加速しなければ意味がないし、今は補助ユニットを持っていない。装甲ユニットは持っていたが補助ユニットがなければ速度は出ないし動けないのだ。
装甲ユニットは防御を高めるはずだが、それほどまでに最後のソウナの一撃が強かったのだろう。
「ソウナ様、魔力切れでしょうか? でしたら、部屋まで運びませんと……[コードシフトチェンジ]」
戦闘型から給仕型へと変えた私は全ての戦闘モードが休止になった事を確認した後、気絶してしまったソウナの肩を持つ。
部屋を出て端末を片手で操作して休止状態にすると、隣に現れた光が人型となった。
「僕が持とう。ボク等は契約者と書いてパートナーだからね」
「感謝いたします〝マルス〟様。ですが、私は大丈夫でございます。ですから、〝マルス〟様もお休みになられてはどうでしょう?」
「そうかい? それじゃあ、お言葉に甘えようかな」
「おやすみなさいませ」
やはり〝マルス〟も疲れていたようだ。
魔力の出力が常時保って居たり、ずっと私の剣を受けていたので疲れが出ていないとは思えなかった。
光となりソウナの体の中へと戻って行った〝マルス〟を見ながら私は客室へと向かった。
客室へと入った私は、ここで問題が起きた。
「…………。どのベッドでしょう?」
四つあるベッドのどこに置けばいいのか迷っていた。
ソウナは意識がない。〝マルス〟は寝てしまった。
そんな私を、救ってくれる人が居た。
「イヴさん、どうしたの?」
客室のドアは開いたまま。その向こう側からセルスの声が聞こえてきた。
私は振り向くと、わからない事を聞いてみた。
「セルス様。ソウナ様が使っておられるベッドはどれで御座いましょう?」
普通ならば知らないと答えるだろう。だがセルスは千里眼を持っている事はみんな知っている。
「それなら右お……くじゃなくて、左手前だよ」
不敵に笑ったセルスはそのまま歩いて行ってしまった。
その様子を不思議に思いながら、私は左手前のベッドへとソウナを寝かせると、地下一階へと戻って行った。
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