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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第二章 力の源
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二週間で

視点はリクちゃんに戻ります



 正午十二時過ぎ、ボク達は昼食をまた同じ席で食べて、それから一度客室へと戻ってきた。


「それで、神様たちの力が失われてしまったんです」

「なるほど……。悪い悪魔を還すために、ね……」


 ボクはソウナに『古書』の内容を教えて欲しいと言われたので、知っている範囲で教えてあげていた。


「そして、神様たちの力が衰えてしまったせいで世界の崩落が始まったんです」

「どうして?」

「神様の中に世界を維持するための神様も居たらしいんです。その神様を使わないと、まずヒスティマ全土に同時に攻撃なんて事はきっとできないと思います」


 いくら神様と言えど、全土に広げられるような魔法を撃てばおそらく何の罪も無い市民に対しても影響があったのだろう。

 そのために世界を維持している神様の力を借りずにはいられなかったのだろう。


「神様の真名を解放するのは諸刃の剣。解放した彼女自身もただではいられず、二度と立てない体になってしまっていた彼女は決心しました。自分が世界の柱となれば、世界を維持する事が可能だと」


 でもそれは、自分の命を投げ出さなければいけない。


「人柱……じゃないかしら? それは」

「はい。もちろん、市民達や仲間も止めましたが……彼女の行動を全てお見通しだった十二人の剣士と夫を連れて、世界の柱となったんです。これが古書の大体の内容です」

「そう……。ありがとう、リク君」


 ソウナに礼を言われたのだけど、ボクは見た事を話しただけと言っておく。


「かなり奇想天外な人生送ってんな。ユミの奴」

「前代未聞、でもあるよね~。他国に一桁の人数で立ち向かうって話も信じれなかったけど、この城に居る人数を見ると信じるしかね~」


 キリもマナも一緒に、ユミという人物がどんな生涯をえたのかを聞いていた。

 そして、ボクは今まで無視して『古書』について話していたけど、気になっていた事をソウナに聞いてみた。


「あの、ソウナさん朝と服変わってませんか?」

「ちょっとディスが張りきるものだから……」


 着ていた服は先程とは違った服で、白いマントのような魔法衣が透き通る青色の髪を目立たせていた。お腹は出てたが、胸は鎧で隠され、ズボンを履いていた。


「ソウナの見た目がまるで高貴な騎士っぽいな。見た目だけ強そうだ」

「見た目を強調しなくてもこれからなるつもりよ」

「とは言っても、いつまでもここでのんびりもしていられないよね~」


 マナの言う事はもっともである。

 いくらここが過去だからと言って、いつまでも居ていいはずがない。

 早く未来へと戻ってヘレスティアの人達と戦ってライコウを助けないといけないのに……。


「まぁ落ち着けよお前ら。今考える事はもっと別の事だろ? それに、ここは過去だ。だったら未来に戻る際に俺らがカナに飛ばされたその時間に戻ればいいじゃねぇか」

「それは……そうかもしれないけど……」


 実際、そうでも出来なければボク等は今すぐにでもライコウへと戻るのだが……。返り討ちになる事は明白だろう。

 むしろ、あのヘレスティアの人達、白夜が話していた会話から察するに、ボクの守り人と言う人達をなぜかヘレスティアの王が欲しているとか言っていた。

 欲していたってアキとかは絶対に協力しなさそうだし、意味がなさそうだが、もっと別の事に利用するのかもしれない。


 ボク達が今戻っても、返り討ちにされて、生け捕りになって何かしらに利用されるだけだろう。ボクは例外かもしれないが。

 聖地を持っていない今、ヘレスティアがボクを生かしておく必要がないのだから。


「でもキリさん。私は一刻でも早く戻ってライコウを解放したいわ。あそこは私達が育ってきた国なのだから」


 ソウナの発言に、みんなが口を閉じて押し黙る。


「キリさんだって、早く帰って助けたいって思うのでしょう?」

「……クハハッ。さぁな」


 誤魔化そうとキリはそう言うけど、おそらく内心ではソウナと同じ気持ちだ。


「だけど、力をつけるための最短の距離なんてボクは無いと思います」


 そんな一日や二日でヘレスティアの人達の力に追いつけるのなら別にこんな所にはいないだろう。

 それこそ、へレスティアが攻めてくる前にやっておけば良い話だ。


「力をつけるための最短の距離……な。お前ら、寝ている間ずっと魔力解放してるだろうな」

「当たり前でしょ」

「もちろん~」

「ボクは元々……」


 自分の魔力を確かめる。

 大丈夫。ボクは無意識かでずっとこの状態で居たのだから、魔力は未来の普通の人よりも数倍もある自信がある。


「一晩でそれなりに最大値が上がったな。これだったら、魔力の心配は二週間もすれば問題ないんじゃねぇか?」

「二週間も!?」


 二週間、ボク等は未来の事を忘れて強くならないといけないの!?

 そんなこと、出来る訳……。


「逆に考えろ」

「え?」


 逆に? それって、二週間しかないって考えるって事になる訳で……。




「二週間だ。たった二週間で今までよりも何千倍も強くなればいいだろうが。ヘレスティアの連中に、負けないぐらいによぉ。それ以上は何より俺が我慢できねぇからな」




 キリが拳を強く握りしめる。

 それなりに思うところがあったのだろう。




「そうだね~。ウチも、早く帰りたいもんね~。おばあちゃん心配だもん~」




「「「……ッ」」」



 マナの何気ない言葉。

 だけど、ボク達三人はその言葉に息を飲んだ。


 マナの祖母。篠桜真陽。

 桜花魔法学校校長にして英名である彼女の命は……もう……。


 マナはその事を知らないんだ。

 ボクの視線がソウナと重なる。

 ボクもソウナも言いだせなかった。

 だけど、唯一、未来に戻れば隠蔽していてもバレるだろうと、キリが話を切りだした。


「マナ……」

「何~?」

「その……悪い」


 え? 何? とでも言いたそうにマナが驚いて目を丸くする。


「ど、どうしたのキリ~? いきなり謝るなんて……キリらしくないよ~?」

なだめようと必死になるマナ。


 だけど、キリが真陽が死んだ事を知らせようと口を開いた。



「真陽はも――」

「やっほ~! 地下二階と三階が直ったから迎えに来たよリクちゃん!」



 バタンッとドアを開けながら笑顔で入って来たのは女王とは思えないほど活発なユミ。

 くせ毛をぴょこんと動かしながらユミはそのままボクの背中へとひっついてきた。


「うわぁ!? いきなり何するんですか!?」

「単なるスキンシップでしょ! ほら、早く行くよ! リクちゃんの魔力には私も興味があったのよ~。ほらほら、早く!!」

「あ、え、ちょっと、待ってくださいよユミさん!」


 ボクが強引にユミに手をとられて立ち上がり、そのまま部屋の外へと出て行く羽目となってしまった。



 部屋に残った三人は……。


(空気が)(読めない)ってカナさんを指しているだけだと思っていたわ」

「え、えっと……それで~? キリ、話は~?」

「……悪い。また夜にしてくれるか?」

「う、うん~」


 突如到来してきたユミの活躍(?)により、未来人の密会は終了。夜に引き継がれる事となってしまった。


過去から未来へと戻る時、過去で過ごした日数分、時空魔法で操らなければ日が立つことはないのですよ。

つまり、過去に行ったその日に帰って来れるのです。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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