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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第二章 力の源
26/85

ディスと決着?

マナちゃんからソウナさんに視点変わります。



「えええええ閻魔、閻魔大王が居る!?」

「何だ、俺と会った事があるのか? それだったら話は早い。俺は眠いから寝に帰る」

「帰らせるかよ。前の借り、きっちりと返させてもらうからな」


 ままままさかこの城には閻魔大王まで味方につけているの!?

 悪魔も居たと言うし、天使も居るし、この城どれだけ人外が多いの!?


「俺は現界では基本的に眠いのだから仕方ないだろう。地界の住人にとって現界は眠たすぎる」

「だからと言って、クムイはしっかり起きてるじゃないか」


 クムイ!? それってウチに閻魔の指輪を半強制的に渡したあの!?

 体格がでかく、普通に立って居てもこちらを見下ろせるよな身長だったせいで記憶の中にしっかりと刻み込まれている。


「クムイは働き者だからな」

「お前も少しは地獄に帰って働けよ」

「それなら心配無い。夜に働きに出ている。夕飯後と寝る間にな」


 閻魔大王が近くの岩場に座る。

 それにしても、この時代の人達は人以外の天使や悪魔など、普通に信じているんだ。ウチ達の時代ではそんなのは神話の産物とか、信じていない人が多数なのに。


「さて、一体俺になにをさせるつもりだ?」

「あぁ、マナが呼んでいたんだ。内容がお……私よりも修似(しゅうい)の方があってるだろうと思ってな。炎の化身のようなものだろ?」


 確かに、未来では彼が使っていた炎は白かった。熱いなんて物じゃない。蒸発し てしまうほどの強い炎だった。柾雪の本気の炎は見た事は無いが、柾雪も白い炎を出せるのだろうか。


「確かに俺は炎なら天界の炎以外全て仕えるが……お前、今回来た客人に隠してるのか?」

「な、何の事だ?」

「おい貴様」

「ふぁい!」


 急に呼ばれたので変な声を出してしまった。

 ただまぁ……威厳のある重苦しい声に急に「貴様」などと呼ばれたら誰だって驚いて心臓の鼓動が速くなる事はあるだろう。


「俺の名は会議(かいぎ)修似だ。現界では閻魔大王なんて呼ばれないから、そっちで呼べ」

「は、はい! ウチは篠桜マナです!」

「マナか。ならマナ。俺を呼んで理由を教えてもらおうか」


 そ、そう言えば雪美には教えてとは言ったけど、まだ修似には一度も言っていないな~。……自分から言わないとダメか。




「う、ウチに炎の扱い方を教えてくだひぁい!」




 噛んだ……思いっきり噛んだ~~~~ッッ!!




 熱くなった顔をうつむかせてすぐさま両手で隠す。

 何でこういう時に噛むかな……。リクに桜花魔法学校で自己紹介した時も噛んだし……。


「おい。あいつのテンション戻しとけよ」

「いや、何でお、私が?」

「同じ女だろ?」

「は!? 違うし! いや、今は違わないけど……」


 人がこんなに落ち込んでいる時にコントのような事をしていないで欲しい。


「ねぇ。さっきから聞いてると、もしかして雪美さんと柾雪さんって同一人物なんじゃ……」

「当たり前だろ。柾雪は人間じゃなく龍幻種(、、、)だ。性別は元々関係ない種族」


 りゅう、げん……しゅ?


「お、おま……何で言って……」

「別にバレてどうこうなるわけじゃないだろう」


 聞き覚えの無い種族にウチは首を傾げる。

 雪美が柾雪であると言う事実にも驚きっぱなしだし、一体何が何だか……。


 雪美がたため息をつく。そして、雪美が一瞬ぶれたような気がした。

 次第にそのぶれがおさまって行くと、細かった腕、足、が太くなり、大きかった胸やくびれなどが無くなって行った。


「まぁ、龍幻種って言うのは一番初め、人間に見られた時に龍の姿だった先祖が幽霊のように消えたのが由来で龍幻種なんて呼ばれてる。元々希少な種族なため、俺以外の同種族に会った事は無い。一番の特徴は、どんな形にでも慣れる事だ」

「あ……あ……雪美さんが……柾雪さん……に?」


 そう言った柾雪の姿となった龍幻種の腕が急に剣へと変わった。


「!?」

「こんなこともできる。弱点らしい弱点は無いが、あえて言うなら質量保存の法則は守られるな。あんまり人に知られたくなかったが……まぁ、普通の人として接してくれ。龍幻種なんて信じる人はこの城にしか居ないから」


 何が何だか分からなかったが、言われたままの事実をウチは頭の隅に置いておく事とした。


「柾雪の事はわかっただろ。それで、マナは炎の扱い方を教えて欲しいって事だろう? それは、俺のやり方でいいんだろうな?」


 あ……。ウチ、ちょっと早まったかも……。



 それからウチは修似に今から十二時まで、こってりと絞り込まれました。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 マナがフィエロと話している間、地下四階では天井に切れ込みが入り、段差が出来たその後。

 マナにとっては案の定の私に歯向かって来たディスと話していた。


 そして私とディスは力のぶつかり合いを……。



「なるほど……そんな……そんな話が……」

「そう言う事なの。だからね、私は貴女の事を形見とも思ってるの」

「良い話だ……良い話だ……。よし! 思う存分この僕を使ってくれ!」



 ――せずに和解していた。



(ちょろいものね)


 和解……とは少し離れた単語になりそうだが。

 リクとかいたらディスを哀れんでいる頃だろう。


 私はディスが戻って来た時にはこの展開は何となくでわかっていた。

 私が初めて契約したときに彼は絶対と言っていいほど契約をしようと思わなかった。

 だけど私が父親の話をしたら、彼女は快く受け入れてくれたのだ。


(神様だものね。素はいい人だわ)


 同情で力を貸してくれると言うのが少し納得いかなくて、いつかは自分の力で認めさせたいとは思う。


「それで、武器になってくれるのかしら?」

「あぁ、もちろん。武器だけじゃなく防具にもなってあげるよ」

「ぼう、ぐ?」


 私がそう言ったのもつかの間、ディスの体が光りとなって全体に纏わりついた。


「えぇ!?」


 そして右手にいつも握っているグラディウス。着ていた服が消えて新たに作られる白い魔法衣の外套に中は胸を覆う鎧と膝までまくるめたズボンを着ていた。


「え? え? えぇ!? こ、これは!?」

『知らないのか? 未来ではこれくらいの事をしているとばかり思っていたのだが……。何故だ?』


 体から溢れるいつもとは全く違う力強い魔力の感覚。

 未来ではここまで強くは感じない。

 何らかの事があって、神様の力が衰えたのだろう。


「わからないけど、一番よく知っているのはリク君よ」

『ほう。あの少女少年が。歴史の勉強でもしてるのか?』

「むしろ逆ね。リク君はヒスティマの歴史は弱いわ。知っているのは『古書』を読んだからよ」


 そろそろリクに『古書』の内容を全部教えてもらいたいわね。

 私は剣を構えて、一度だけ上段に構えて下段に振った。

 今までと違い、その速度が速まっているし、今まで見たいなブレも無い。


「補正? これは」

『そうだな。補正が無いとソウナはそもそも剣を振れそうが無いからな』


 それは今から練習をする意味が無いではないか。


「お願い。補正を練習する時だけでいいの。無くしてくれないかしら?」

『? 何故だ?』

「練習にならないでしょ」

『……あぁ、そう言えばそうだな』


 ディスがそう言った時、上げていた剣が急に重くなり後ろに倒れそうになった。


「きゃぁ!」

「おぉっと!」


 剣が手から離れる前に誰かに背中を支えられて何とか倒れる事が無かった。


「あ、ありがとう」

「いえいえ、たまたま見ていただけだから」


 振り向くと、そこにはシャインと言う悪魔の向かい側に座っていた女性だった。あの時シャインがこちらに微笑んだ時に怒っていたアリスと言うシャインの妻だったような気がする。


「見ていたって、どうして?」

「普通、地下四階に来る人は大抵誰かと一緒なんだよ。一人の場合は柾雪のように日々強くなろうとしてる人。どう? 後者だったらこのアリスがちょっと面白い事してあげるよ」


 右手を上げて、指を動かす。すると、なんだかデフォルメされた身長十五センチほどの金髪の人形と銀髪の人形がちょこちょこ歩いてきた。


「可愛いでしょ? アリスがアリスとなった日に徹夜で作った人形。金髪の方がモーニちゃんで銀髪の方がナイトちゃん。それぞれ朝と夜って意味でつけたんだけどね。我ながら単純……今まで男で生きてたからね……」

「そう。……へ?」


 今、なんと?


「いやぁ。実は人形に名前なんてつけ始めたのアリスになってからでね。それまでは人形にわざわざ名前なんて必要ないとか思ってたから」

「ま、待って。貴女、男の人……だったの?」

「そうだけど?」

「この城には……あなたのような人が何人いるの……?」

「アリスが知っている所だと……一……二人? アリスを抜かしてね。逆に女の子になった事がある人はシャインとセルスと修似を抜かした全員かな」


 この城では普通の事なんだ……。


 後二人って……誰だろう。昨日見たサラ、もしくはサヤではないだろうか。だけどサラは違うだろう。でもサヤはどうだろう……。昨日ちょっとオドオドとしていた。


「それで、どんな面白い事をしてくれるの?」

「簡単だよ。アリスが作った人形を相手にすればいいんだよ」


 そう言うと、左手の指を動かすと、ずらっと丸い円が作られた場所から先程の小さいモーニとナイトとは全く別の等身大の人形が現れた。


「魔力を通せば直るからいくらでも傷つけても良いけど?」


 そうは言われたが、私はアリスの申し出に首を振って断った。


「ごめんなさい。私は元々体力も力もなくて、剣をまともに振れないの。だから、それが出来るようになってからお願いできるかしら?」

「まともに振れない? さっきとても良い振りを見せてくれたでしょ?」


 さっきの良い振り、と言うのは一番初めに一度だけ上段から下段に振った物だろう。

 今やれと言われてもできるわけがない。


「あれはディスの補正を受けていたからよ。私が今まで走りまわっていたみたいな体に見える?」

「見えない」


 即答されて、肩をすくめる。


「わかった。それじゃあ鍛えるの手伝ってもらいたかったら三階の右に行った四つ目の部屋に来てね」


 アリスはそう言って魔法陣へと向かって行った。どうやら丁度変える所に私を見たと言ったところか。


「さて、まずは剣をまともに振れるようにならないとね」

『だったら何もこんな所では無く客室でも良いのでは……。体力がないなら外を走るとか』

「いいじゃない。ここだったら他の人の剣も見れるのだから」



 私はディスを構えようと腕に力を入れながら前に構える。

 だがそれは何十秒と持たず、すぐに金属音を鳴らして床へと落ちる。

 それを三回ほど続けた後……。




「…………ディス」

『…………なんだ?』

「…………とりあえず、剣を下げたまま外を走るわ」

『…………了解』



 頭の中から呆れたような声が聞こえてきたような気がしたが、とりあえずは無視をして鞘に剣を閉まって外へと行くべく一階の大広間に向かった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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