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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第二章 力の源
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癖と指輪



 うっすらと目をあける。

 なぜか目元が熱い感覚がする。

 不思議に思って手を当ててみると、濡れた。


 ボクは涙を流している? しかし、何故?


 ゆっくりと起き上がる。すると頬を涙が伝って行く。


「あ、リクちゃんおは……どうしたの?」


 洗面器の方から出てきたマナが顔をタオルで拭きながら出て来てボクを見たところで立ち止まった。

 髪を縛っていないので腰下まで伸びているマナはボクに近づいてベッドのわきに置いてあるドレッサーのイスに座った。


「どうしたの~? 何か辛い事でもあった~?」


 マナの質問に、ボクはゆっくりと首を振った。泣くような事は無かったはずだ。なのに自分自身が泣いている事が良くわからない。


「もしかして、何か悲しくなるような夢でも~?」


 ボクはゆっくりと首を振る。

 確かに知らない夢ではあった。でも悲しい夢では無かったはずだ。

 何かと訊かれたら……思い出。それだろう。


「とりあえず、顔洗ってきなよ~」


 首を縦に頷いて、ベッドから降りる。

 洗面器まで歩いて行き、水を出して顔を洗った。

 冷たい水を浴びてぼやけていた視界がクリアになり一気に目が覚める。


 もう夢で起きた事はぼやけてきたのだが、それでもまだ新明に残っている部分がある。

 四つある歯磨きの内、濡れていない物を選んで歯を磨く。うがいをしてからベッドの方へ戻るとマナが丁度赤髪をツインテールに結え終わったところだった。


 ボクもドレッサーの前に座って櫛をとり髪を梳かす。櫛に魔法がかけられているようで、髪に当てて滑らせると潤いを染み込ませるような感覚を覚えて、一回だけ通すとそれだけでいつものようなサラサラに――。


「って、今男だからそんなのやる必要無いじゃん……」


 あれか。習慣としてついてしまった癖を治す事は難しいのか……。


 とりあえず、いまさらやめるのもどうかと思ったボクはそのまま再開して最後まで梳かし終えた。

 櫛をドレッサーに置くと、不意に髪を後ろから触られた。


「ふぁ!? ま、マナちゃん?」

「むぅ……いつ見ても触ってもリクちゃんの髪ってサラサラしてるよね~。女のウチからすると羨ましすぎるよ~」

「ちょ、ちょっとやめてくださいよマナちゃん」

「いいじゃん別に~。減るものじゃないし~」


 確かに減りはしないが、せっかく梳かした髪がまたぼさぼさに……。


「そう言えばリクちゃん、指輪は~?」


 指輪? それだったらドレッサーに……って、そう言えば指輪はパジャマのズボンに入れたんだった。


「えっと、指輪がどうかしたんですか?」


 ボクが指輪を出すと、マナがその指輪を受け取り……。



「えい」



 ――ボクの指輪を指しだした右手の人差し指に嵌めた。


 次の瞬間、ボクの胸が一定まで膨らみ、くびれが今以上に作られ、髪の毛が足裏まで届きそうなほど伸びて、男にとって大切なあの場所も無くなってしまった。


「マナちゃん!? いきなり何するんですか!?」

「やっぱり髪の毛気持ち~。リクちゃん自身の柔らかさも魅力的~」


 ボクが叫んでもマナはボクの髪の毛に夢中でなかなか手を放してくれないだけでなく、体まで密着する始末。小さいながらも他よりも柔らかい感触がしっかりと背中に当たっている。

 男に戻ろうとしてもマナの手がボクの手を握りしめて離してはくれない。


「まままマナちゃん!? あああの! 当たって――」

「ん~? 何が~?」


 まるで気づいていないと言わんばかりの反応だ。

 もしかして、わざと!?


 急いで離れようとするも決して離れる事が出来ずに慌てることしかできない。


「ま、マナちゃん離れてっ!」

「え? う、ウチの事嫌いなの……?」

「そんなことは無いです! マナちゃんの事は大好きですけど、今はそんな場合で無くてっ!」

「だったら良いじゃ~ん」

「だ、だからっ」


 ハグされるままボクは一生懸命離れようとしていると……。













「な、何してるの!?」













 聞き覚えのある。と言うか今の声は明らかに今抱きついているはずの人の声、つまりマナの声であった。


「え? マナちゃん?」


 でも、その声は明らかにボクについているマナから発せられた物ではなく、その後ろから聞こえてきたような声だった。

 後ろに抱きついているマナごと、ボクは後ろへと振り返ると、そこには確かに赤髪をツインテールにしたマナが居る。


 ……あれ?


 ボクは抱きついている人を首だけ動かして見る。

 同じく赤髪をツインテールにしているマナが居る。


 ……どういう事?


 だけど、よく見ると、後ろに居るマナよりも、今抱きついているマナの色が若干薄く見え……じゃない!

 抱きついているマナとボクの間に何かある!? 無色の、粒子。魔力!?

 無色の粒子。これは見た事がある。森で助けてくれたユミの魔力の色。空白色!


 つまり今抱きついているのは……。


「あらら。本物登場じゃさすがに騙せないか~」


 目の前の空白色の粒子が消える。

 すると、そこには白銀色の髪の毛で、くせ毛を生やした女の子がボクにくっついていた。


「おはようリクちゃん♪ 抱きついた時の反応、ピュアで可愛かったよぉ。やっぱり妹にしたいぐらいっ! なんだったら娘でも!」

「なりませんよ!? って言うか早く離れてくださいよ!?」

「そうだよ! 早く離れてよ!! と言うかウチの姿で何してたの!?」


 ボクとマナは顔を赤くしながら講義するが、これがなかなかユミが離れてはくれない。

 ちなみにボクが顔を赤くしている理由はマナからユミに変わったために当たる範囲が広くなって、先程よりも柔らかくなったのだ。


「じゃあ、マナちゃんの姿でならもうちょっとくっついても良い?」

「「ダメ!!」」


 ボクとマナの声が揃い、その息の合いようと力強さに当てられて、ユミは渋々と、本当に渋々としながらようやくボクから離れてくれた。




「まったく。もうちょっとぐらい抱きついてても良いじゃない」

「よく無い!! なんだってウチの姿をして抱きついてたの!?」

「その方が警戒心無いかなって思って」


 なんだか先日見たような光景が目の前で繰り広げられている。その時はマナでは無くてエクトだったが。

 でもマナは正座を強要していなかった。と言うか口にすらしていなかった。


「それよりも、今の魔法って一体……」

「幻惑魔法に類する〈変化〉だよ? これを使えるのは適性のある人だけだから正直覚えようと思って覚えれるような魔法じゃないね」


 適正、か。


「魔法の種類ってたくさんあるんですね……」

「たくさんじゃないよ? 無限大だよ?」

「無限……大?」


 無限大ってあれだろうか……。英語に訳すとインフィニティーで、数える事が出来ないほどとか言われる。


「そう、無限大。人間なんだってやればできるんだから」

「えっと……世界を変えれるような魔法でも~?」

「もちろん」


 ユミが腕を組んで得意げに頷いた。

 でも、世界を変えれるほどの魔法って相当な魔力を必要としないだろうか。


「でも……世界を変えるほどの魔法だなんて、余程の事が起きない限り使えないよ。それこそ、今契約してる神様全員の力を解放しないといけないしね」


 今契約している、か。


「あの、ユミさんってどんな神様と契約しているんですか?」

「私? 私はねぇ……秘密♪」


 口元に人差し指を立ててウインクするユミ。


「じゃあ、もっとも使う神様は~?」

「どうしよっかな~。って言うけどそれぐらいだったら別にいいかな。一番使うのは〝トール〟と〝ガルダ(、、、)〟と〝インドラ〟。次に〝アマテラス〟と〝ツクヨミ〟。そして本気だったら私は〝スサノオ〟と〝ゼウス〟を呼ぶかな。といっても普段使わないけどね」


 ボクとマナが固まった。


 ユミの行った中に、マナがフィエロと呼んでいた〝ガルダ〟。〝大鵬金翅鳥〟の名前があったために。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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