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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第一章 タイムスリップ
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お出迎え

あなたならどうします?

目の前にいきなり矛先があったら(・・;



 ガ、キンッ!!


 目の前に見えた矛先はいつの間にか前に出ていたユミが剣で斬り払い、奥で十文字槍を操っていた何者かを部屋の中へと押し込んでいった。


「さすが姫さん!」


 その相手は笑いながら槍を振り抜く。そこへユミが剣を入れるも、なぜか振り抜かれていた矛先が剣を防いでいたのだ。


 良く見るとしっかりと十字になっている矛先は後ろへと向いており、先程振り抜いたのは嘘ではなかった。

 つまり、相手が使っている武器は槍と言う種類では無く、ダブルブレードと呼ばれる剣だ。


 懐に入られた相手はそのダブルブレードの中程を持ち、二つに分割してユミに振るった。

 剣はまるで水晶のように綺麗なためか振るった後の雪のような軌跡が残り、その凄まじい剣技を披露していた。

 一方、ユミの方はと言うとまるで赤子でもあやすかのようにヒラヒラと避け、時折その手に持つ天使のような剣を撃ち合っていた。

 ボクがあの場に立って居たら、必ずと言っていいほど相手に完敗をしていただろう。それほどまでに剣の振るわれるスピードがケタ違いだったからだ。


「チッ、全く当たらねぇ!」


 悪態をつきながらも笑いながら攻撃の手を緩めない相手は、ユミに徐々に押され始めて行くのを楽しんでいた。


「まったく。これから夕飯だって言うのに、少しは落ち着いたら?」

「腹が減ったら戦はできないってか?」


 ギィンッ! と一際大きな衝撃音が鳴ると同時、動画を一時中断したかのように止まった二人。



 ――ぐぅ、と腹の虫が鳴った。



「それもそうだな」


 それが戦闘終了の合図かのように特に何事も無かったかのようにそれぞれの手に逆手に持っていた剣を繋げると、背中に戻した。

 そこには斜めにベルトがかけられており、その間にそのダブルブレードを納めたのだ。

 初めは刃が出ているためにケガをするのではないかと思ったが、いつの間にかダブルブレードの刃は無くなっており、一本の棍のような状態になっていた。


「まったく、お客様が来ていることぐらい聞かされていないの?」

「ん? 聞いてたぞ? それよりも俺は戦いを選んだまでだ!」


 誇らしげに語る男にユミが頭を抱えていた。

 小さく「なんでこの男は……」と呟いていたが、ボク達にはおろか、近くに居た男にも聞こえていなかったようだ。


「二人の休戦が入った事だし、改めて歓迎しようかな」


 ボク達は何が起こったのかもわからないまま、広間のテーブルにそれぞれついている男女全員が立ち上がっていた。






『ようこそ、お客人様。そして、おかえりなさいませユミ様』






 統率のとれたその動きに、ボクはあっけにとられているけど……。


「いや~。みんなそんな畏まらなくてもよくない? いつも通りでさ~」


 と、ユミが言った瞬間。


「だよな」「ってかエクトが言うんだもんな」「自由国だし、なんでも良いよね~」「堅苦しいの嫌いだもんね、みんな」


 口々に話し始めていた。

 見た所全部でニ十と数人しかいない。これでこの城に住む人全員……?

 あまりにも数の少なさにボク達は驚いていた。


「あははっ、驚いた? この城物凄く自由気ままな人達しか居ないからさ」


 ミユが笑いながら言っている。

 視線を巡らせると、テーブルに座り直している人達の中に、すでに目を瞑って寝ている者、隣同士で話している者、目の前に出された食べ物をすでに食べている者、そんな様子を見てオドオドしている者など様々な人が居た。多くは隣同士だったり集まって喋っている人が多数だ。一番少ないのは寝ている人が一人だと言う事。寝不足なのだろうか。

 エクトを横目で見てみると、頭を抱えていた。しかし「仕方が無い」と呟いていた。統率が出来ておりませんが、本当に仕方無いで済ましていいのだろうかと疑問に残る。


「みなさん、お腹すきましたよね? どうぞこちらの席へ」


 ボク達は何をしていればいいのだろうと考えている中で、前掛けをした女性が前に来てくれて先導してくれた。


「彼女、雪姫(ゆきひめ)って言ってね。雪一族のお姫様なの」

「「「「え?」」」」


 ミユが軽く説明したが、一体どういうことなのだろうと疑問に思う。


「ユミちゃんの志とかに惚れちゃってねぇ。あと恩義もあって、この城に住んでるんだ」

「城に住んでる~?」

「うん。今此処に居る人達は全員城に住んでる人達だよ。ユミちゃんがね? 一人で城に住んでるとかやだ! とか言って家臣まで住ませちゃってね」


 なんだか……一番初めに思っていた『英雄姫』像とか、そう言う物が見事に砕かれたのだが……。


「それは保身から?」

「ううん。わがまま。だってこの国で一番強いのユミちゃん本人だからね」


 ソウナの質問に即答するミユ。

 今まで聞いてるに、本当にユミと言うのは、わがままな性格のお嬢様って感じがする。でも、人を殺さずに無力化できる力も持っている。

 なんでも持っている気がして、ボクは少し彼女が羨ましくなった。


 雪姫に先導されて座った場所は三つほど並んでいる長いテーブルの真ん中のテーブル。その開いている席に座らされた。順番的に、ボク、ソウナ、エクトで向かい側にキリ、マナ、ミユだ。

 場所的にも部屋の中心なので一番他の人達が見える場所だ。

 雪姫は一礼すると、奥に見える厨房へと入って行った。その奥からすでに用意されていただろう料理を持ってくる。

 パン、スパゲッティ、タンドリーチキン、多種の刺身、マカロニサラダ、スープ、その他など、庶民的な料理がたくさん出てきた。ボクは全部は食べれそうにない。


 一国の城の料理と言うのだから、口に合うか少し恐れていたがこうしてみるとユミも地球人なために庶民的な物がいいのかもしれない。


 そう考えているとユミがボクの隣へと座った。

 そして席に着くやいな――


「それじゃあみんな、今日もお疲れ様~! いただきます!」

『いただきます!!』

「い、いただきます」「「「いただきます」」」


 ユミの号令により一斉に料理に群がった。

 ボク達も一瞬遅れて挨拶すると、まず手短にスパゲッティを受け皿にとって食べてみた。

 すると、口の中に入れた瞬間から、柚子の風味が一瞬にして溢れた。


「! こ、これどうやって作ったんですか!?」


 柚子の香りが口の中に広がるだけでなく溢れ、かき集めるようにボクは更にそのスパゲッティを口の中に入れていく。


「あまり急がなくてもまだたくさんあるから大丈夫です。それと、レシピは秘密です」


 いつの間にかキリの隣の隣に座っていた雪姫が人差し指を唇にあてて秘密と言われ、ボクは少ししょんぼりする。

 普通に作ったのでは柚子が此処まで効いた物は作れない。それでも柚子が主役となっているのではなくしっかりと麺が主役となっている。

 柚子の味と、その上に乗っている大草を麺をからめ、しっかりと味を出している。

 夏のようなさっぱりとした味がボクを虜にする。元々麺類が好きなのもあったが、これは別格だ。


「ユキちゃんにはね。いつも料理を任せているの。まぁ私はできないし、作れる人があまりいないって言うのが本音なんだけどね」


 照れた様子で笑うユミ。


「そうは言っても、ユミ様は少し常識無さ過ぎです。『料理のさしすせそ』も分からないなんて……」

「ごめんごめん」

「ごめんで済む問題ですか。お米を洗うのに塩化カルシウムを使う人がいますか!」


 いや、何で塩化カルシウム? 水道水が嫌なら天然水とかを使えばいいのに……。と言うか、お米を洗うのにそんなの使って手が危なくならないの!?


「洗剤を使っちゃダメなら原材料を使おうと……」

「洗濯物や食器を洗う訳ではないのですけど!?」


 どうやらユミに料理をさせてはだめらしい。


「じゃあ……王水?」

「全部溶けます!! 水道水を破壊するつもりですか!?」

「ただの水! お米を洗うのに水で十分ですよ!?」


 ユミがあまりにもおかしい答えを返してきたので雪姫と同時にツッコミをしてしまった。


「そ、そう?」


 ダメだ! この人は何が何だかわかっていない!


「力とか容姿とか持っていても、抜けてる所は抜けてるんだね~……」

「完全無欠な人なんていないってことよマナさん」


 感傷に浸っているマナと、それをフォローするソウナ。キリに至ってはユミを白い目で見ていた。

 だがその口は次々と目の前に置かれている大皿の上に乗る料理を運んでいた。


 ボクは先ほどなんでも持っていると考えたが、否定せざるといけなかった。


どうだこのグタグタ感満載の城の内部は!!

これが電光王国の上層部だ!(笑)

ライコウの方がまだましだったね……(ノシ;)


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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