第一層 続きの始まり
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―『層の国』建国記
序章より
旅をするもの、宝を求める。
求めたものは、未だ帰らず。
抱きし骨は旅を導く。
示す光は宝を目指し、
旅をするもの、いしを求める。
1
国一番の治安の悪さを誇る最下層街に朝が来た。面倒くさいけれど、起きることにする。
「いってぇ…ここどこだ?」
何故か身体中が痛い…って、あぁ…そういえば、昨日殴りあいのケンカしたんだっけ…
「こんなとこにいた」
と、陰に包まれた俺が顔をあげると、そこには俺が所属する盗賊ギルド長、知がいた。
「あ、やべっ」
知は俺を見てため息を吐く。
「どうしてそう、他ンとこにちょっかい出す?おかげで朝から謝ってばかりだ」
「昨日は向こうからケンカ売って来たんだ、俺じゃない」
「殴りかかったのはお前が先みたいだけど?」
「先に触ったのはあっちだ!」
我ながらガキっぽい言い訳だなぁ…
「…というか」
知はいったん言葉を切って、俺を睨んだ。
「戦闘ランク5位であるメンバーのケンカを買わない。名乗ったそうだな、相手は」
押し黙るしかなかった。それは本当だからだ。
「対するこっちは、戦闘力では常に中くらいだ。お前が勝てるわけないことくらいわかるだろう」
知はそういうと、俺の後ろ襟を掴んで引きずっていく。全く、こいつの怪力ときたら…
「ぽろぽろこぼれてるぞ、思ってることが」
更に強い力で引かれ、首が絞まる。
「ご、ごめんなさ…歩くから離してくれッ」
かなり真剣に頼んだけれど、知はしらん顔だった。
―あ、世界が白く…
次に見たものは、俺の部屋の天井だった。木で出来た、暖かい感じのもの。次に、慌てた顔の知が俺を覗き込んでくる。
「ご…ごめん、強く絞めすぎた」
確信犯かこいつ。
「別にいいよ、いつもの事だし」
知のある種の暴力?は今に始まったことじゃない。知がギルドの長になる前から、俺に対してだけはいつもこうだ。
「う…」
っと、あんまりいじめ過ぎるとまた泣き出すかな?
「冗談、俺は強いから大丈夫だ」
俺と2人でいるときは、長ではない知がいる。出会った頃から変わらない知が、そこにいる。だからちょっとからかうとすぐ泣くし、すぐ怒るし、すぐ笑ってすぐ優しい表情で俺を抱きしめる。
名残惜しいけれど、時刻を確認、知に告げることにした。
本当はもう少し、この知と一緒に居たかったけど…
「もうすぐ『戒』の時間だろ? 行かなくていいのかよ、お頭サン?」
スイッチを、入れる。
スイッチが、入った。
「煩い承知している。あとお頭と言うな、したっぱのクセに」
にぃっと笑って、部屋を出ていった。扉が閉まる直前、小さく
「ありがとう」
という声が聞こえた。
今日も1日、楽しい日になりそうだ。
「…その前に、手当てしてもらおう…」
ヤセ我慢は体によくないからな…
2
午後、俺はいつも通り市場をふらふら歩いては、果物を掏って食べていた。そんなことがばれたら、また長に何を言われるかわかったものではないけれど、やめられない止まらない〜という奴だ。
俺の所属する盗賊ギルドには名前がない。というのも、名前があったところで意味がないからだ。その名を口にするものは誰も居ない。居たとしても、すぐに居なくなる。
ギルドが恐れられる理由。それは、この国のギルドランキングというシステムにある。ランキングは毎月更新され、仕事の出来や信頼度を数値化し、今までのものにプラスしていく。新たに出来上がったギルドには創設時に100ポイントが与えられ、仕事に応じて加算されていく。勿論、減算されることもあるわけで、0ポイントになってしまった場合には、即刻解散が言い渡される。ポイントが高いギルドから順に報酬の多い仕事を多く受ける事ができる。
兎に角そんなランキングにも種類がある。職業で分けられたランキングで、戦士・騎士・魔術・盗賊・商人がある。ギルドと名乗るためにはそれなりの条件があるため、他にも様々な職業に従事している人たちもたくさん居る。
と、教え込まれたことを復習していると、なにやら人だかりが出来ていた。
「あ、心さん!」
「ああ、バンダナと包帯のキミか。私はホラ、担当じゃないから良くわからないけれど、キミなら判るだろう?」
心さん―俺の所属ギルド(仮に無名とでもしておこう)の探索&治療係。変な能力を持っているとの噂が立っている。いつも黒のポロシャツにジーパン、その上から白衣というよくわからないセンスの人だ。
「…たしかにバンダナも包帯もつけてますけど」
その呼び方はどうかと…
「見てくるといい。判るだろ、キミなら」
さて、どういう意味だろう。
俺は人ごみを掻き分けて円の中心まで行く。
「あいつ…」
円の中心には、私服のときにそれと判るように、騎士ギルドの腕章をした男達が検証をしていた。テープが張られ、奥にいけないようになっている。
そして、その中央。
昨日、俺とケンカをした戦士ギルドランキング五位に位置する『くれない』の幹部メンバーが倒れていた。仰向けで、自らの自慢の得物が、心臓の位置に突き立っている。深くまで突き刺されたそれによって、彼は土に磔にされていた。他に外傷はなさそうだ。血は流れていない。―何かが、おかしい。
俺は人混みを出ると、心さんのところへと向かった。
「如何だった?」
「内部抗争かもしれないし、暗殺かもしれない」
「その問題点は?」
「内部抗争だとしたら、殺し方がおかしい。くれないは獰猛で残忍なのが特徴だったはずだから、流れ出る血の量が圧倒的に足りなさ過ぎる。でも、暗殺だとしたら、こんなところで殺すのはセオリーに反している」
うむうむと納得したように頷いて、糸のように細い眼をゆっくりと開いた。
「私の眼を、直視しちゃ駄目だよ?」
俺は言われたとおりにした。多分、それは本当だから。
「どうです?」
「見えた視えた。多分、あいつだろう。厄介だから、早く帰って知に言わなけりゃ」
「同感です」
歯車は静かにその時を待っていた。
間違えて途中のものを投稿してしまうという最悪の失態をしてしまい、申し訳ないです…。
この話は、暇つぶしのためにカタカタとやっていた話なので、またもや適当っぽい感じではありますが、投稿にあたり手直しをしています。どこで区切ろうかな〜とか、ここ変えちゃえ!とか、そんな感じに…。
大分前の作品なので、かみ合っていなかったり伏線張ったにもかかわらず回収も触れもせずに放置していたりと散々なものでした…。
なので、手直ししてからの更新になります。滅茶苦茶遅くなるとは思いますが、読んでいただけると嬉しいです。
次の更新日は、やっぱり未定です;