消えた王様
「あいつは、永遠を望むことはなかった」
ヘルギ先生はコンラード相手にお茶をすする。
「あいつ、と言いますと」
「ジュリアーノ・ヴィスコンティ。一番の愛弟子だった男でね」
「さようですか」
コンラードはうなずいた。
「永遠を望むものは、かなり多いと聞きますがね」
「だから、錬金術師の活躍の場が広まるんじゃないか」
ヘルギ先生は苦笑した。
「賢者の石、別名をざくろ石。そして石を創る際にできる、エリクシル。エリキサとも言う。その液体を飲めば、不老不死の肉体を得ると言うが、ありえないね。使う物質はほとんど人体に有害な水銀や砒素、さらに亜鉛を使うことだって」
「それは恐ろしい」
「したがって、賢者の石は『神の石』つまり、神に選ばれたものしか手にすることがないのだ」
コンラードは、カツラをかぶりなおす。
「神に選ばれた」
「まあ、俗世間で言うところの、噂ってヤツ」
「まるで神話ですね」
ヘルギ先生は苦笑した。
コンラードは何もわかっていないと。
「神話じゃなく、現実に起きていることだから」
「は、はあ」
コンラードは咳払い。
「さて、それではアクセル様がどこに行かれたのか、考えてください」
「いなければ困るか? コンラード殿・・・・・・」
ヘルギ先生は試すような口調でものを言う。
コンラードは少々、冷や汗をかきながら、
「あ、いえ、もし戻られることがなければないまま・・・・・・」
「それもよかろう」
ヘルギ先生、ずるずると紅茶をすすった。
「いえ、ご冗談。やはり、この場にいてもらわねば・・・・・・その・・・・・・」
「その通り、冗談だよ」
コンラードはイスから転げ落ちそうになる。
「ヘルギさん」
「からかって悪かった。だがたまには、いいだろ?」
コンラードの視線は、何いってんだか、と言っているかのよう。
「そう怒るなよ! だいじょうぶ、行き先はわかっているから」
ヘルギ先生はにやりと含み笑いした。
いなきゃ困るでしょうが、そりゃ〜;
コンラード、頼むぜw