愛弟子
ヘルギ先生には弟子がひとりいた。
名前を、ジュリアーノ・ヴィスコンティ。
ヴィスコンティ家と言えば、イタリアの名門貴族。
語らねばなるまい。
・・・・・・めんどうだが(笑。
ジュリアーノの過去は複雑で、彼は父親の領主スフォルツァが田舎町のパルマ村に追いやっていた、愛人メリルに産ませた子だった。
ところが気まぐれが生じて、スフォルツァはジュリアーノを跡継ぎにと言い出す。
急遽呼び出されたジュリアーノは、母親が病気で死んだことを怒りながら話す。
「お袋を見捨てたくせに、あんたはいったい、何を考えている」
ジュリアーノは父の死んだあとも、父親のことを認めようとはしなかった。
彼が心を開いたのはヘルギ先生だけ。
ヘルギ先生はジュリアーノが城にやってきた日から見守ってきており、ヴァイオリンを教えたり、フルートを教えたり錬金術まで教えてやった。
「先生はやっぱり、俺の先生だね」
ヘルギ先生は、ジュリアーノの口癖を想い出す。
アクセルくんに呼ばれ、王宮の庭でくつろぐヘルギ先生。
彼はそのことを懐かしんで瞼を閉じていた。
「俺があいつに、モーツァルトやワルツを教えたのも、いまとなっちゃ夢物語か・・・・・・」
アクセルくんはヘルギ先生が鬱々としている様子をいぶかった。
「悩んでおいででしょう」
コンラードがアクセルくんの肩をつかむ。
「なにをだ」
「さあ。ご自身でお聞き遊ばせ」
アクセルくんは舌打ちすると、ヘルギ先生のもとに歩いていった。
「悩みでもあるのか?」
ヘルギ先生は首を横へ振る。
「いいや。悩みではありません」
「じゃあなんだよ。言ってくれ。俺にできることなら・・・・・・」
ヘルギ先生はその台詞をきいて吹き出した。
「まさか、あんたの口からそんな優しい言葉がでるとは思いも寄らなかった」
「なっ、どういう意味だ!」
アクセルくんは恥と怒りとで顔が真っ赤。
ヘルギ先生は笑いがおさまると、
「すまない。しかし陛下。あなたはあいつに、よく似ているから・・・・・・」
「あいつ? だれ?」
「教えなーい」
アクセルくんはよっぽど、ヘルギ先生を蹴倒そうか悩んだが、やめておいた。
なぜなら、城壁から恐ろしいまでの殺気が渦巻いていたので・・・・・・。
「ヘルギ様になんかしたら、承知しない」
といったオーラというか。
いやはや、ヘルギ先生の言った恐ろしいこととは、このことですか;
だんだんシリアスになりつつ・・・・・・。
あるのか、これは^^;