アスモデウス
「ジュリアーノ。そしてリュー。・・・・・・ふん、ホムンクルスの分際で、人間に媚びすがろうなどとは」
眼鏡を押し上げて、アグリッパがつばを吐いた。
「リューをそんな風に、呼ぶな!」
真っ青な刀身をしたジュリアーノの剣は、アクセルくんが知る限りでは、並大抵の代物ではない。
きっと錬金術で加工したんだろう、と思った。
「リューはそんな、ちゃちな生き物じゃない!」
「ほう、ではどういうのだ。ホムンクルスは所詮、人間の道具にすぎない」
赤いルビーがはめ込まれた杖をふりかざし、アグリッパは鼻を鳴らした。
「わたしが最強の悪魔を召喚し、ジュリアーノ、きさまをつぶす。そして・・・・・・リューをいただいて、実験体にするのだ」
「させねえよ!」
アクセルくんが素早く発砲した。
アグリッパの腕を貫通した銀の弾は、彼のもつ杖をウマイ具合に落下させる。
「リューはたしかに人間だぜ、ジュリアーノ!」
ジュリアーノは、想わずその言葉に、
「ありがとう」
と返した。
「貴様、なぜその弾を・・・・・・」
アグリッパは腕から流れる鮮血を見て青ざめ、アクセルのほうに顔を上げ、牙をむいた。
「ちくしょう! 油断した・・・・・・。まさか選定候の隠しアイテムを持つものがいたとはな!」
「なに、選定候?」
ジュリアーノはアクセルを振り返る。
「アクセル、おまえ!」
「だったら、何だ? くそ魔術師! もう一発、くらいてぇらしいなぁ、遠慮しないでいいぜ」
アクセルは照準を再び合わせると、アグリッパめがけて撃った。
「ははは、二度は喰らわぬ!」
漆黒の外套をバリケードにし、弾をよけるアグリッパ。
「ちっ」
アクセルくんは腰からサーベルを抜いて、斬りつけた。
「あ!?」
ところが、ちぎれたのは外套だけで、アグリッパは姿を消していた。
「ははは。どうした」
アグリッパがアクセルの後頭部を杖でしこたま殴りつける。
「てめえ!」
頭を押さえ、アクセルは闇雲に発砲した。
「目で見るんじゃなく、気配で倒せ」
「お、なるほど!」
アクセルはジュリアーノの助言に従い、目を閉じて気配だけでアグリッパを追った。
「目で見なければ、何もつかめまい」
ところが今度はヒットし、アグリッパの左腕を貫通!
「貴様、よくも・・・・・・」
両腕から滴る、鮮血。
アグリッパはそれを見て、青ざめた。
「アクセルとかいうたな、貴様、殺す! アスモデウスを呼ぶぞ?」
ジュリアーノは顔面蒼白になっていた。
そのアスモデウスは、悪魔の中でも最強最悪の性質を持つものだったからだ。
銀の弾。
ジュリアーノはアクセルのもつそれを、じっと凝視した。
選定候ファルツの子孫でもあるアクセル。
アクセルのもつ銀弾は、魔術師、特に邪心を抱くものに対し、力を増幅させるという。
「俺の先祖は、何とありがたいものを残してくれたことか」
アクセルは拳銃を改良し、単発式を連射式に変え、おかげでアグリッパは憔悴しきっていた。
「たちの悪い! 連射銃か」
「うるっせーっ、黙ってコイツの餌食になりな!」
「お、おのれ」
アグリッパは印字を結んでアクセルの陰を縛った。
身動きのとれぬ身体に、アクセルは歯ぎしりする。
「て、てめー、何しやがった!」
「はっはっはっは。貴様の陰を縛り、動きを封じた」
アグリッパはジュリアーノに向き直り、呪文を詠唱した。
『我招く、その力は強大で、世界を二手に分かつだろう。召喚、アスモデウス!』
ジュリアーノはリューを背中にかばいながら、アグリッパの召喚に脂汗を流した。
「せ、先生、どうしよう;」
ジュリアーノは自分が悪魔を呼べることすら忘れて、ただただ苦悩し、立ちつくすのであった(汗。
まあ、こんなもんでしょう。
前回の内容とホント違うねぇ。
ユーリでてこないし(汗。
ていうかアグリッパはいつ壊れるんやろ;