ハイイケ降臨
二年生になって一週間
新しくできた友達の優香ちゃんとダーヤマ(山田だから)とは
共通の趣味があるお陰でとても仲良くなった。
クラスの休み時間は
一軍の軍団と二軍の個々でもそれなりに目立つ人たち、と
三軍の私たち、で三分割されそれぞれの領域で
みな楽しく過ごしていた。
一軍の中心はやっぱり葛木秋夜で
彼らはどうやら今度の週末、有名テーマパークへ行くみたいだ。
あ、盗み聞きとかじゃないよ、
一軍の彼らは声のボリュームがでかいんで聞こえちゃうんです。
不可抗力です。
一軍の中心である葛木秋夜がピンポイントで私の事を嫌ってるとなると
それが引き金になって、クラス全員に私いじめられるんじゃねーの…
って、おびえていたんだけど
それは杞憂に終わった。
なんというか葛木秋夜のたまーーに感じる鋭い視線は健在だけど
それをうまく他の人には隠してるみたいなのだ。
おかげで周りには嫌われてるってわかんないみたい!
いやぁ、やっぱいい人なんじゃね?
嫌いな奴にも気遣いしてくれてるってことかな!?
いや、でもあんだけ睨んでくる人間なのにいい奴って、
どうなんだろ。
でもまぁ、いじめられるよりはましだよなぁ…。
うんうん〜
「…え、ねぇ!杉ちゃん!きいてる?」
「え、ごめ、きいてなかった、なんだったダーヤマ」
「…ねぇ、俺ダーヤマなの…?
圭、とか呼びやすい名前あんだけど…かっこ良く、Kとかでもいいんだぜ?」
「K。て、完全に中二病じゃん…。
あ、じゃぁ…ダーマ神殿とかにする…?」
「ちょ、それなんてジョブチェンジするとこ?
てかそれも充分中二じゃねーか」
「あっははははあ!
もーーーかつみちゃんとダーヤマくんの会話、すっごい笑える」
じつは今週末せっかくみんなゲームすきだし
ゲーセンに三人でいってみないかってなっている。
ゲーセン久しぶりだし、超楽しみです。ぐふふ。
あのオンラインでクイズに参加するやつとかおもしろいよねぇ〜!
そんなこんなで盛り上がっていたら一軍の方から
「えーーー!ほんき?!」
「え、なんで?!」
と一軍女子の『アリエナーイ』と言わんばかりの声が教室中に響いた。
「え、なんだなんだ?」と
興味津々そうに身を乗り出すダーヤマ。
「ば!ダーヤマ、みちゃいけません!
こういうのは見たらとばっちりがね?」
やっかい事に違いない…!と、
第六感が働いた私はダーヤマの軽率な行動を諌めようとしたんだけど…
「ちょちょちょちょちょちょちょちょ…」
ダーヤマが、あちらをむいて口をパクパクしだした。
「ちょちょちょ、って、ダーヤマ?
酸欠状態になってるけど…」
「きゃ、きゃ、ちょ、え、ちょ、」
え、ちょ、優香ちゃんもなんか酸欠?
え、一体なんなの、と観念して振り向いたら
そら確かに酸欠にもなるわ。
葛木秋夜が笑顔満面で(けど目わらってないですよ)
こちらに向かって歩いてきてた。
そして私たち三人の前に立ったのである。
ハイイケ(ハイパーイケメンの略)が
降臨した瞬間を私たちは口をぱくぱくする事でしか
迎え入れる事ができなかったのは…
致し方ない事だとおもってる…。