雨の図書館
あれは高校にはいってすぐの放課後
図書館で大好きな作家の新刊をみつけて
(ひょぉーーーミステリ系も充実なの?!
この学校の図書館!まじルァッキー!
少ないお小遣いでハードカバーの小説買うの大変だから超助かるわぁ…
図書館様々…!!)
と心の内で喝采しつつ、
図書館の端っこの席をゲットし、
はやる気持ちを抑え、
なめるようにじわじわ新作ミステリを味わっていたら
葛木秋夜がやってきた。
(おお、噂のイケメンかーーー。
これで乙女ゲーだと何らかのイベントがある事を期待しそうになるけど
私、ちゃんと現実とゲーム、区別できております!)
と心の中で一人つっこんで
また黙々と素晴らしいミステリの世界に戻った。
あぁ、今回も超最高です。すでに涙腺きてます。
そこから1時間は経った頃
ふと、声が聞こえた。
「雨、降ってきた…」
私よりも幾分か離れた席に座っていたらしい葛木秋夜だった。
まだいたんだ?という驚きもあったけど
思わず聞こえた声に反応した。
つられて窓の外をみたら黒い雨雲が空にひしめいていて
「ほんとだ…」
と呟いてしまった。
その声に葛木秋夜はびっくりしてこちらに振り返った。
その目は思いっきり「いたの?!」って言ってた。
口にせずとも目が雄弁に語ってた。
さーせん…存在感、なくて…。
気まずい中会釈して、葛木秋夜は図書館を出て行った。
その一件…。
あれ以来、気付けば睨まれている。
はーーー…やっぱこれかなぁ…?この一件かなぁ…?
一人だとおもってた図書館でうっかり言った独り言に
反応されたっていう、汚辱…?いやこれ、汚辱になるのかな…?
でも、ハイパーイケメンにとっては、
些細な事も許せない枠に入るのかもしれない。
完全にあのとき乙女ゲーでいう選択肢間違えたんだ。
・聞かなかった事にしてミステリを読みふける(好感度+-0
・おもわず独り言に反応する(好感度-1000000
だったんだ…。
でもさ、超グッドマン葛木秋夜なんでしょ…?
それくらい水に流してほしいです…。
でもまぁ。嫌われてるならしゃーないな、と!人の気持ちなんて、どうしようもない!
確かにあんだけのグッドマン評価のイケメンに嫌われるってダメージでかいけども!
それって合同体育の時間に突き刺さる視線が痛くていたたまれないだけで
言ってしまえば体育のない日なんかは全く意識せず過ごせるワケで…!
家に帰れば新作乙女ゲーとかあるし、図書館いきゃ新刊はあるわ、で
友達とだれそれ攻略した!とかあのシーン萌えた!とか話す事の楽しさと言ったら!!
それはもう彼氏なんて居らずとも楽しさマックスな毎日なんでね!
(言ってて悲しいけどマジで乙女ゲーあったら彼氏いらないって思ってる。
高校1年はほんと笑顔の絶えない、毎日、だった。
そう…1年は…
季節が変わってクラス替えしたら…
葛木秋夜と同じクラスて……………
…………あたし、顔面蒼白、なう。