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11話 修行の時間ですよ

「今日はよろしく頼む!」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 後日。

 サリーが騎士団長へ話をつけてくれて、王城の訓練場を借りて、稽古をつけてもらうことになった。


 一応、儂は王女。

 その王女が、騎士団長へ剣を教わるとなれば、それはもう話題にもなる。

 故に、見学の騎士がやたらと多い。


 王族の道楽に付き合わされて騎士団長も大変だ、という顔の者。

 いやいや、三歳児に木剣なんて危なくないか? と心配している者。

 反応は様々だ。


 まあ、予想はしていたこと。

 なので周囲のことはあまり気にしない。

 今は、ようやく得られた機会の方が大事だ。


「よし」


 訓練用の木剣を構える。


 その瞬間、騎士団長が目を見開いた。


「アリエル様は……木剣を構えることができるのですね」

「うむ?」


 首を傾げる。


「構えるくらい、誰でもできるのではないか?」

「いえ……それは三歳児には難しいかと」

「……そうかもしれぬな」


 言われてみれば、たしかにそうか。


 前世の感覚があるから、つい普通のことのように思ってしまう。

 だが、今の儂は三歳児なのだった。

 普通なら木剣どころか、おもちゃの剣も危うい。


「毎日鍛えておるからのう」

「そう……らしいですね」

「その途中、騎士達の動きを見ていたからな。見様見真似ではあるが、それなりに使えると思うのじゃ」


 試しに、軽く素振りをする。


 空気を裂く音がして、騎士団長の顔色がまた少し変わった。


「まだ三歳なのに……?」

「うむ」

「しかも、自分の体より大きい木剣を……?」

「む?」

「……いえ」


 騎士団長は咳払いをして、どうにか平静を装った。


「では、好きに私へ打ち込んできてください」

「よいのか?」

「はい。動きや癖を見て、今後どのような訓練にするか考えましょう」

「わかった、がんばるぞい!」


 最初の一歩だ、しっかり見てもらおう。


 儂は木剣を構え直して、呼吸を整えた。

 それから騎士団長をまっすぐに見る。


「……」


 放たれる闘気。

 その瞬間、周囲がざわついた。


「なんだ、これ……」

「急に空気が……」

「姫様の圧、なのか……?」


 圧。

 なるほど、そう感じるのか。


 だが、儂としては当然だ。

 剣を握る以上、相手へ届く前に心が負けていては話にならぬ。

 相手がどれだけ格上だろうと、ここで引くつもりは一切ない。


 前世の記憶と技術。

 赤子の頃から積み上げた魔力鍛錬。

 そして、ようやく動くようになった今の体。


 この三歳の幼女の身で、どこまで届くのか。

 少し不安で、同時に、それ以上にわくわくした。


「ふっ!」


 地を蹴る。


 竜が空へ飛び立つように、下から上へ、木剣を払い上げる。

 前世で何度も使い、何度も磨いた、もっとも基本の一撃の一つ。


 カァンッ!


 高い音。

 騎士団長の手から木剣が弾かれた。


「なっ……!?」


 騎士団長が唖然とする。

 周囲の騎士達も、一拍遅れてざわめいた。


「お、おい……今の見たか?」

「姫様が、騎士団長の剣を弾いたぞ……?」

「俺、なにをされたか見えなかったんだけど……」


 ふむ……ちゃんと通ったようじゃな。


 今の一撃は、前世からすれば基本中の基本。

 だが、今の体であれだけ綺麗に入ったのなら、まずは上々じゃろう。


 ……問題は、ここから先だ。

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