『悪役令嬢アルベルティーヌの優雅なる日常・三 』―最強の侍女は北の熊です―
前作、前々作と読んでくださった方、本当にありがとうございます。
そして初めての方は、ここから入ってもだいたい「虎と熊が強い話」だと分かっていただけます。
今回はタイトル通り、主役は“最強の侍女”マルタです。
吠える公爵令嬢がいるなら、
その吠え声を成立させている存在もいるはずで、
じゃあその人はどんな顔をして、どんな判断をしているのか。
そこを一度、ちゃんと書いてみたくなりました。
アルベルティーヌは相変わらず優雅で、相変わらず強くて、
そしてちゃんと吠えます。
でもその裏で、
吠えなくて済む場を整え、
吠れる瞬間を選び、
吠えた後を片付けているのがマルタです。
派手さはないけれど、
いちばん現場を支配している存在。
そんな「北の熊」の仕事ぶりを、
少しだけ覗いていただければ嬉しいです。
夜会の一件から、世の中は妙に「音」に敏感になった。
正確には、音そのものではない。音が鳴る前に生まれる、あの一瞬の張り詰め――息を呑む気配、椅子の軋み、扇子が止まる間。社交界はそれを「虎が出る前」と呼び、何かの行事のように消費し始めている。
そして、その“行事”を最も冷めた目で見ているのは、当の公爵令嬢ではなく、彼女の侍女だった。
マルタは朝の廊下を歩きながら、屋敷の空気の重さを測っていた。音の反響、足音の散り方、使用人の視線の向き――荒れる日は、入口から違う。乱れる日は、茶葉の蓋の閉まり方から違う。
今日は、嫌な種類の軽さがある。
(見世物の日。……面倒だ)
マルタは心の中で短く吐き捨て、表情は一切動かさないまま、二階の私室の扉を静かに叩いた。
「お嬢様、朝です」
「ええ。入って」
返事は柔らかい。声は澄んでいる。疲れはない。――喉もまだ無事。
アルベルティーヌ=ヴァルモンは鏡の前に立っていた。白と薄藤の間のような淡いドレス。髪は低めにまとめ、刺繍も宝石も控えめ。いつも通り“完璧に優雅”だ。
ただし、目だけが少し鋭い。
「今日の予定を」
「午前は王宮図書館。午後、ローゼンタール公爵家の茶会に招かれております」
アルベルティーヌの眉が、ほんのわずかに上がった。
「……ローゼンタール。王都の」
「はい。お嬢様より二歳ほど年下の、クラリス様が主催です」
名前を口にした瞬間、部屋の空気が一段だけ締まった。アルベルティーヌが何を思い出したか、マルタには分かる。王都名門、正統、伝統、中央――そういう語彙を好む家。断罪騒ぎの直後に、あえて招くのは、好意か、値踏みか、あるいは別の目的だ。
アルベルティーヌは微笑んだまま、鏡越しに言った。
「噂好きね、皆」
「噂は、手入れをしないと増殖します」
「手入れ、ね」
「はい。放置すると腐ります」
アルベルティーヌが小さく笑った。上品な笑いだが、含意は鋭い。
「じゃあ、今日はあなたの仕事が増えるわね」
「いつも通りです」
マルタは淡々と答え、机の上に小さな包みを置いた。薄紙に包まれた硬い飴。蜂蜜の香りが微かにする。
アルベルティーヌの視線が、それに落ちる。
「……用意してるのね」
「備えです。出さないで済めば、それが最善です」
「出さないで済めば、ね」
アルベルティーヌは言葉を繰り返し、鏡の前で背筋を正した。まるで舞台に上がる前の役者のように。
マルタは彼女の首元に手を伸ばし、リボンの位置を整えた。指先は正確で、迷いがない。
(吠える必要がない場にする。吠える必要が生まれたなら、吠える価値がある瞬間にだけ解放する)
それがマルタの仕事だった。
午前の王宮図書館は平穏だった。司書は丁重で、書記官は無口。資料の写しも揃っている。アルベルティーヌは淡々と読み、必要な箇所に栞を挟む。
問題は、午後だ。
ローゼンタール公爵邸は、王都の中心に近い場所に建つ。門の装飾が派手で、庭の芝は刈り込まれ、花壇は左右対称。空間そのものが「正統」を主張していた。
馬車が止まると、使用人が一斉に頭を下げた。その角度が揃いすぎているのが、逆に怖い。訓練された家は、訓練された理由がある。
マルタは先に降り、足元を確認する。石畳の段差、客導線、サロンまでの距離。今日の会場は“舞台”だ。舞台は装置で勝敗が決まることがある。
アルベルティーヌが降りる。彼女が歩くたび、視線が集まる。期待と恐れの混じった視線。
(見たいんだろう。虎を。……見世物じゃない)
マルタは、内側の苛立ちを息ごと飲み込んだ。感情は現場の邪魔をする。必要なのは、整備と判断だ。
サロンに通されると、そこにはすでに多くの令嬢と夫人が集まっていた。扇子が揺れ、笑い声が浮かび、香水が重なって空気が甘い。甘い空気ほど、毒がよく溶ける。
そして、サロンの中央に立つ少女――クラリス=フォン=ローゼンタールが、来客を迎えるように笑っていた。
黒髪をゆるく巻き、深緑のドレス。装飾は多いが下品ではない。顔立ちは可憐寄り、それでも口元の線が強く、瞳に「私は正しい側の人間」という自信がある。
「ヴァルモン公爵令嬢様。お越しいただき光栄ですわ」
声は澄んでいて、品がある。だが、言葉の端に微かな刺が混じる。歓迎というより、確認。歓迎というより、審査。
「ご招待いただきありがとうございます。クラリス様のお茶会、楽しみにしておりましたわ」
アルベルティーヌは完璧な微笑みで返す。声も柔らかい。姿勢も揺れない。
クラリスの目が、ほんの少しだけ輝いた。獲物を前にしたような、若い好奇心の光。
「皆さまも、きっと楽しみにしておいででしたの。……先日の夜会のお話を」
サロンの扇子が、一斉に止まった。
マルタは静かに、サロンの端へ視線を走らせた。話題を誘導したのはクラリスだが、空気を作っているのは周囲だ。誰が頷き、誰が視線を交わし、誰が口元を隠して笑うか。それだけで「今日はそういう会」だと分かる。
(最初から目的が決まってる。主催の意図だ。……でも、意図の背後に別の手がある)
クラリスは続ける。
「王太子殿下のお立場もあるのに、あの場で……とても強くお言い返しになったと伺いました。勇気ある行動だと思いますわ。でも、少しだけ――」
少しだけ。言いかけて、わざと間を作る。周囲がその続きを待つ。煽り方が上手い。若いのに、技術がある。
「――少しだけ、方向を間違えたのでは、と。そう心配する声もございましたの」
空気が甘く、重くなる。これが“名門の言葉”だ。攻撃ではない。心配という形で相手を縛る。逃げ道を用意しながら追い込む。
アルベルティーヌは微笑みを崩さない。崩さないまま、指先でカップの縁を軽く撫でた。
「心配してくださる方がいるのは、ありがたいですわ」
「でしょう? 王都には伝統があります。正統があります。貴族は、貴族らしく在るべきですもの」
クラリスは、きれいな声で言う。言葉は柔らかいのに、内容は硬い。動かない石のように、「こうあるべき」を置く。
マルタはそれを聞きながら、別の“石”を探していた。
茶会の席順表が、給仕台の端に置かれている。マルタは目だけで確認し、心の中で一瞬止まった。
(……違う)
アルベルティーヌの席が、主賓の位置にある。通常なら礼遇だが、今日は違う。主賓は“見世物”だ。さらに、アルベルティーヌのすぐ隣に、エミリア=グランデ――あの夜会で証言を叫んだ男爵令嬢の名がある。
(仕掛けだ。隣に置いて、言葉を引き出す。虎を出させる)
マルタは静かに、給仕係に近づいた。声は出さない。視線と指先で合図する。給仕係が戸惑う。マルタは席順表を一度だけ指で叩き、首を横に振った。
給仕係が青ざめる。彼は恐らく、命じられた通りに置いたのだ。命じたのは誰か。主催側の使用人か、もっと上か。
マルタは短く囁いた。
「この席順は使わない。代替を出して」
「で、ですが……」
「責任は私が取る」
それだけで給仕係は動いた。現場は、責任の所在がはっきりすると回る。
マルタは次に、サロンの壁際に置かれた楽譜の束を確認した。演奏者が待機している。曲目の中に、妙に派手な行進曲がある。場を煽る曲。空気を熱くする曲。声量が必要になる。
(虎を出させる装置を、最初から積んでる)
マルタは一つ、深く息を吸った。冷たい呼吸が肺に落ちる。こういう時、いつも思う。熱は敵だ。熱は事故を呼ぶ。
けれど、事故は止められない時がある。止められない事故に備えるのが、仕事だ。
アルベルティーヌは、クラリスの言葉に対して、柔らかく返していた。
「伝統は大切ですわ。続いてきたものには理由がある。けれど、続けるためには手入れも必要ですもの」
「手入れ……?」
「はい。伝統は飾りではなく、道具です。使ってこそ意味がある」
クラリスの眉がわずかに寄った。若い自負が揺れる瞬間。彼女は“伝統は存在するだけで価値”と思っている。道具扱いされると、怒る。
「道具、ですか。……随分、現実的な考え方ですのね」
「現実は、貴族を待ってくれませんもの」
アルベルティーヌの声は相変わらず柔らかい。だが、内容は鋭い。周囲の夫人が扇子の陰で小さく息を吐く。面白がる気配が増える。
そこへ、隣室から入ってきたエミリア=グランデが、わざとらしく声を上げた。
「ごきげんよう。……まあ、公爵令嬢様。今日は“お静か”ですのね?」
サロンが一斉に笑いを堪える。これが狙いだ。虎を出させたい。低い声を出させたい。そうすれば、彼女はまた“被害者”になれる。
アルベルティーヌの指先が一瞬止まった。
マルタは、その“止まり”を見た。見て、判断した。
(まだ出さない。まだ、出す価値がない)
マルタは給仕台へ戻り、新しい席順表を持った若い給仕係を受け取った。彼の手が震えている。
「落ち着け」
「は、はい」
「大丈夫。君は悪くない。動線を変える」
マルタは素早く、使用人たちに指示を飛ばした。声は低く、短く。誰も逆らわない。現場が動く。席の配置が微妙にずれ、アルベルティーヌの隣が入れ替わる。エミリアは隣に座れず、別の夫人の横へ押し流された。
それだけで、仕掛けが一つ潰れる。
だが、仕掛けは一つでは終わらない。
クラリスが、今度は真正面から切り込んできた。
「ヴァルモン公爵令嬢様。先日の件――もしも本当に手続きが不十分だったとしても、貴族としての品位は守るべきだったのではありませんか? 王太子殿下にあのような……強い言葉を」
サロンの視線が、アルベルティーヌに集中する。クラリスは、ここで“正統”の勝利を取りたい。若い名門として、王都の中心として、噂の虎を「品位」という檻に戻したい。
アルベルティーヌは微笑んだまま、少しだけ首を傾げた。
「クラリス様は、品位とは何だとお考えですの?」
「……それは、礼節であり、秩序であり――」
「秩序」
アルベルティーヌが言葉を繰り返す。柔らかく、丁寧に。だが繰り返しは刃になる。
「秩序は、正しい手続きの上に成り立つものですわ。正しい手続きが崩れた時、秩序を守るために声を上げるのは、秩序の敵でしょうか。それとも、味方でしょうか」
クラリスが言葉に詰まる。周囲の夫人が小さく頷く。アルベルティーヌは続ける。
「わたくしが黙っていたら、根拠の薄い断罪が“空気”で成立していた可能性がございます。空気で人を裁くことを、品位と呼びますか?」
クラリスの頬が赤くなった。怒りではない。焦りだ。理屈で、逃げ道を塞がれている。
そこへ、別の声が飛ぶ。
「でも、声が怖かったのは事実ですわ」
若い令嬢が笑い混じりに言う。誰かが同調する。「貴族の女性が出してよい声ではない」。言葉が繋がり、噂が現実を塗り替える。
アルベルティーヌの目が、一段だけ冷たくなった。
マルタはその変化を見て、心の中で一つ、手順を進めた。
(ここからが本番だ)
マルタはアルベルティーヌの背後へ、半歩だけ寄った。誰にも気づかれない距離で、包みを差し出す。蜂蜜飴。
アルベルティーヌは一瞬だけ視線を落とし、受け取った。
そして――マルタは、最小の声で言った。
「今です。短く、確実に」
アルベルティーヌが飴を口に含む。舌の上で甘さが広がる。喉が守られる。呼吸が整う。
微笑みは消えない。だが、声の温度が変わった。
「……声が怖い、ですか」
低い。落ちるような低音。だが方言ではない。切り落とすような標準語。言葉の角が、磨いた刃のように鋭い。
サロンが静まり返る。扇子が止まり、笑いが消える。これが“虎が出た”瞬間だ。
「怖いのは、結構。怖がってください。――ただし、怖がるべきものを間違えないで」
アルベルティーヌは、ゆっくりと視線を動かした。ひとりひとりの顔を見て、逃げ道を塞ぐように。
「声が低いことが問題ですか。あなた方は、声の高さで人を裁くのですか。――それは、品位ではない。怠慢です」
クラリスが息を呑む。周囲の令嬢が硬直する。
「本当に怖いのは何か。根拠のない断罪を“空気”で成立させること。伝聞を証言と呼ぶこと。確認を怠り、責任を取らず、誰かを吊るして満足すること。……それが怖い」
アルベルティーヌは一拍置き、最後にとどめの一言を落とした。
「名門を名乗るなら、負けた時の振る舞いまで含めて名門です。――確認もせずに石を投げるのは、ただの野次です」
野次、という言葉が刺さった。貴族のサロンで最も言われたくない言葉だ。クラリスは唇を震わせた。彼女は“正統”の側に立っているつもりだった。だが、今の言葉で、正統が“野次”に転落した。
沈黙の中、伯爵夫人がやっと咳払いをした。
「……皆さま。紅茶が冷めてしまいますわ」
場を収めるための声。だが、空気は戻らない。戻らないほど、アルベルティーヌの言葉は効いた。
クラリスはしばらく黙っていた。若い名門は、折れない。だが、折れないことと、学ばないことは違う。
彼女はゆっくりと口を開いた。
「……ヴァルモン公爵令嬢様」
声が小さい。勢いがない。だが、真剣だ。
「私は……伝統を守ることが正しいと信じていました。けれど、伝統が誰かを傷つける道具になるなら、それは……」
アルベルティーヌは、微笑みを少しだけ戻した。低音は引っ込める。虎は檻へ戻す。必要な仕事は終わった。
「クラリス様。伝統は守るものですわ。ただし、守り方を間違えないこと。伝統は“勝つため”ではなく、“続けるため”にあるのです」
その言葉に、クラリスの目がわずかに揺れた。続けるため。――彼女はその観点を持っていない。王都の名門は、勝つことが当たり前だと刷り込まれる。続ける苦労を知らない。
マルタは、その揺れを見て、心の中で小さく頷いた。
(育つ。……この子は育つ)
茶会が終わり、馬車で帰る道中。アルベルティーヌは窓の外を眺めながら、飴の余韻が残る喉で言った。
「吠えたわね」
「必要でした」
「あなたが“今”って言うと、体が動くのよね。不思議」
「条件が揃ったからです」
「条件?」
マルタは淡々と答えた。
「相手が“声”であなたを裁こうとした。あれは、理屈の領域では止まりません。空気を燃やす者には、空気を切る刃が必要です」
「刃、ね」
「はい。短く、確実に。長引かせない。喉も守る」
アルベルティーヌが、少しだけ笑った。
「あなた、まるで戦の参謀ね」
「現場は戦です」
それだけ言って、マルタは視線を前に戻した。馬車の揺れは一定。車輪の音は落ち着いている。今日の“試合”は終わった。
屋敷に戻ると、若い侍女が廊下の陰から小声で訊いてきた。
「……今日、虎、出ましたか?」
マルタは立ち止まり、侍女を一度だけ見た。視線だけで黙らせる。侍女が背筋を伸ばす。
「出ました。だから仕事は増えます」
「え……?」
「噂が増える。対策も増える。――あなたは備品庫を確認しなさい。蜂蜜飴の在庫を二倍にする」
「は、はい!」
侍女が駆けていく。マルタはそれを見送り、静かに息を吐いた。
夜。マルタは自室で灯りを落とし、机の上に並べた小瓶を確認した。蜂蜜ではない。異世界に“北海道産”は存在しない。だが、北方の寒冷地で採れる濃い蜜はある。喉に効く薬草もある。保存性の高い樹脂もある。
産地が違っても、条件は同じだ。
(寒い土地の蜜は濃い。苦い草は効く。保存が利く素材は管理が楽。……どこでも同じ)
引き出しの奥には、古い記憶がある。前世の冬。雪。球場。勝っても大騒ぎしない人々。負けても投げ出さない人々。育つ選手を、育つまで待つ人々。
あの空気を、マルタは今も覚えている。
(勝つことより、勝ち続ける方が難しい)
彼女は小瓶の蓋を閉め、整列させた。道具を整えるのが仕事だ。道具が揃えば、戦は短く終わる。短く終われば、喉は守れる。喉が守れれば、虎は次も吠えられる。
翌朝、ローゼンタール公爵邸から手紙が届いた。封は丁寧。文字はまだ若いが、真っ直ぐだ。
アルベルティーヌが読み、少しだけ目を細めた。
「クラリス様から。……謝罪、ね。あと、“次は学びの場として、手続きと証拠の話を聞かせてほしい”ですって」
マルタは頷いた。
「育ちます」
「あなた、昨日からそればかり言うわね」
「育つ者は、いずれ戦力になります」
アルベルティーヌがふっと笑い、マルタの方を見た。
「あなた、どこでそんな考え方を身につけたの?」
マルタは一瞬だけ迷い、それから、いつも通り淡々と答えた。
「寒い土地です。長い季節を越えるには、派手さより整備が要ります」
「……北の熊ね」
「ええ。虎を飼うには、熊の我慢が必要です」
アルベルティーヌは、微笑んだ。優雅な微笑みだ。だが、その奥に確かな信頼がある。
「じゃあ、これからも飼ってね。わたくし、吠えたい時があるから」
マルタは、表情を変えずに答えた。
「吠えるべき時に、吠えられるように。――それが私の仕事です」
そして彼女は、机の上の蜂蜜飴を一つ、いつもの場所へ置いた。
見世物にするためではない。
勝ち続けるために。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は「最強の侍女は誰か」というより、
「最強とはどういう在り方か」を書いた話でした。
前に立って吠える虎も強い。
でも、その虎が吠えられる場を整え、
吠えるべき瞬間を選び、
吠えた後まで責任を持つ存在もまた、同じくらい強い。
それがマルタです。
アルベルティーヌが“切り札”なら、
マルタは“戦場そのもの”。
戦わなくて済むならそれが最善、
戦うなら最短で終わらせる。
その思想は、派手さはありませんが、物語を一番安定させる力だと思っています。
あと、今回はクラリスという「若獅子」も登場しました。
悪役ではなく、間違えた方向を向いていただけの存在。
だからこそ、ぶつかることで少しずつ“育つ側”に回れるキャラクターです。
このシリーズは誰かを叩き潰す話ではなく、
強さの形を更新していく話なのだと、改めて実感しました。
アルベルティーヌには、これからも吠えてもらいます。
正しく、鋭く、必要な時だけ。
そしてその背後には、必ず北の熊が控えています。
優雅な令嬢と、静かな侍女。
この主従が揃っている限り、
彼女たちの日常は、きっと今日も“最強”です。




