深海で、私はもう外にはいない
きれいだ、と言ってしまうと、何かを取り落とす気がした。
それは花だった。
少なくとも、そのときはそう感じた。
淡く光る何かが、深海の闇の中で不自然なほどはっきりと存在していて、理由もなく意識を引き寄せられた。
危険だとか、近づくべきではないとか、そういう判断は、あとから思えばいくらでもできたはずなのに、そのときはできなかった。
ただ、きれいだと感じて、近づいてしまった。
次の瞬間、上下の感覚が、すっとほどけた。
水に押されている、という感覚があった。勢いはないのに、抗おうとした瞬間、その発想ごと溶かされるような流れ。
その中で身体の輪郭がほどけ、(にゅるん、と)内側へ滑り込まされていく感触があった。
その瞬間、ほんの一拍、息が途切れた。
吸うでも吐くでもない空白だけが挟まり、次の感覚へ押し出される。
少し間を置いて、意識がそこへ戻る。
根のような何かが、海藻のようなものに絡みついていた光景が、意識の奥で反芻される。
その中心に、口とも穴ともつかない暗がりがあった。
近づいた瞬間の引力が、時間差で身体に蘇る。
あそこが口だったのか、それとも——。
考えかけて、言葉を飲み込む。
どちらにせよ、戻る想像は成り立たなかった。
押されたのか、引かれたのかは分からない。
ただ、流れに預けられたまま、外ではなく、内側へと運ばれていく感覚だけがあった。
なにこれ。
……。
そう思ったはずなのに、声は出なかった。
考えようとすると、思考が途中でほどけていく。
気づいたと




