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月日王帝物語~Requiem for the Empire~  作者: 花縫ゆりは
蘇る詛の終着点で月を見る
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第二章 蘇る詛の終着点で月を見るⅠ

皆様、お待たせいたしました!いつもお読みいただき、ありがとうございます!

本日より、いよいよ第二章「蘇る詛の終着点で月を見る」の開幕です!


第一章のテーマ「和平という夢」を追う。鳥籠の蝶・ノクターンの夢から一転、この章では、ルナイトに秘められた「月の魔女の詛い」。

その不穏な幕開けは、ノクターンの侍女長ソフィーの予知夢から。普段は決して冷静さを失わない彼女の焦りが、物語を大きく揺るがします。

どうか、ルナイト帝国の抱える闇の深さを、感じていってください。

窓から入り込んだ朝日でルナイト帝国侍女長ソフィー・ロザリア=ウィッチは目を覚ました。

夢に見た光景を思い出す。


普段は夢など見ない。 彼女の仕事は現実の厳しさの上に成り立っているからだ。だが、今朝は違った。夢に見た光景を思い出す。

遥か遠い空で、ルナイトの月が欠け、サンスーンの太陽が、血のような赤に染まっていた。


あれはおそらく予知夢。月の血筋を引く皇女に仕える者として、見過ごすわけにはいかない。

本家に報告しようと起き上がり、黒檀の重厚な机に紙を一枚おき、万年筆を取り出す。彼女は紙にペンを走らせた。



親愛なるお母様へ。

今日、王城に来てから珍しく予知夢を見ました。

戦争回避はできないかもしれません。

夢では、ノクターン様が血に濡れた剣を手に、悲しい顔で月を見上げていました。

大魔女と呼ばれるお母様ほどの精度は私の予知夢にありません。

あたるも八卦、あたらぬも八卦が良いところでしょう。

ですが、当たってしまったら。

それが恐ろしい。

お母様。どうにかなさっていただけませんか?

我儘な娘で申し訳ありません。

ソフィー・ロザリア=ウィッチより。

P.S.

太陽王と月の魔女の関係は繰り返されるばかりなのでしょうか。




封筒はこの部屋にはない。

アスタル様なら持っておられるだろう。

外交の仕事で手紙を送る宰相に封筒を一枚もらおうと、普段ならありえないほどぞんざいに書き終えた便箋を懐に突っ込み、部屋を飛び出た。

それを見た部下が驚く。


「ソフィー様!?何事ですか?!」


「なんでもないわ。気にしないでちょうだい。宰相様とお話しがあるの」


それだけ聞いた部下は私とアストル様の間に浮ついた話があると思ったらしい。

キャーと黄色い悲鳴をあげている。


普段なら否定するが、今のソフィーにはそんな余裕がなく、時間が経てば経つほど焦燥感が募っていく。

早く走ったせいで息が上がる。


だがソフィーはそんなこと気にせずに、走り続けた。

宰相室のある東棟へ走っていく、途中の曲がり角を、急ぎすぎたあまりぶつかりそうになりながら勢いよく曲がった。


その衝撃で、懐に雑に押し込んでいた手紙が、ふわりと宙を舞い、大理石の床に静かに落ちた。


ソフィーはそれに気づかず、そのままの勢いで宰相室へ駆け込んだ。


扉の前で膝に手をつき、肩で息をする。

息が整ったところでいつもの無表情の仮面を被った。

扉をノックする。


「侍女長のソフィー・ロザリア=ウィッチです」


「早朝に申し訳ありません。アストル様、お時間少々宜しいでしょうか?」


ソフィーが口を閉じるとタイミングを見計らったかのようにアストルが戸を開けた。


「ソフィー。どうした?」


「封筒を一枚」


そこまで言ったところで、何を思ったかソフィーは口を閉じた。


「いえ、少し宰相様にもお話ししておきたいです」


「宜しいですか?」


その言葉で何かを察したのだろうか。

アストルはソフィーを部屋の中に招き入れた。


「なんだ?」


「予知夢を見たわ。」


2人きりになったことでソフィーの口調が砕けたものに変わった。

元々王族と魔女家は血族、幼い頃から一緒に育ったソフィーは2人きりになった時でさえ、この幼馴染に敬語を使おうと思えなかった。


「内容は?」


「血と月と太陽」


「伝説が繰り返される。」


「月が欠け、太陽は翳る」


ソフィーは言葉を続ける。それは側から見れば呪文を口にしているようにも見えただろう。

ただ、魔法に理解のあるアストルはそれで理解した。


「和平は叶わないか?」


「わからない。私の予知夢は精度が低いの。でも、この夢が本当になるのならば。おそらく和平は無理ね」


「そうか。ご苦労だった」


「で要件は封筒だったか?」


「ええ、お母様に予知夢の内容を見せようと思って」


彼女は懐から手紙を取り出そうとした。

だが、いくら探しても出てこない。


「落とした?」


「ソフィー、何してるんだよ」


呆れ顔でそういうアストルと青い顔で明らかに驚いてるソフィー。




一方その頃落とした手紙は。


「これは?手紙?」


金色の髪をした殿下の元にあった。

開こうとして目に入ったのは「親愛なるお母様へ」そんな一文。

見ていいのか、疑問はあったが、アイザックは意を決し、その手紙を広げようと両手の指先に力を込めた。

第二章の導入にお付き合いいただき、ありがとうございました!


冷徹な侍女長ソフィーが、普段の冷静さを失って手紙を落としてしまうという、最悪のミスで第1話は幕を閉じました。

彼女がその手紙の中で見た「血に濡れた剣を持つノクターン様の予知夢」。そして、手紙を拾ったのは、他でもないアイザック殿下。

アイザックは、手紙を読んでしまうのか?


次回は、アイザックの視点。彼の胸中と、手紙の全貌が明かされます。

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第二章もどうぞよろしくお願いいたします!

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