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月日王帝物語~Requiem for the Empire~  作者: 花縫ゆりは
蘇る詛の終着点で月を見る
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第二章 Ⅴ

皆様、いつもお読みいただきありがとうございます!


秘密裏に行動するノクターン皇女とアイザック殿下は、ついに謎の倉庫に辿り着き、魔女家当主レイヴン様と対峙しました。


そこで語られるのは、長きにわたり「呪い」とされてきた宿命の知られざる側面。そして、魔女家が負ってきた歴史的な役割でした。

「宿命の記録」を前に、レイヴン様の真意、そして物語の核心がいよいよ動き出します。


緊迫感あふれる第4話、ぜひお楽しみください!

「ノクターン、この方は?」


「この方は魔女家当主のレイヴン様ですわ。ソフィーの母親に当たります」


「ソフィー、ああ手紙の」


そこまで言ったところで顔を上げる、レイヴンの顔を見た。


ソフィーという侍女をそこまで何度も見たわけじゃないけれど、言われて確かに似ているな。そうアイザックは思った。


「そうですわ」


「あら、うちの娘がどうかしたのかしら?」


敬う価値もないと思われたのか、それとも単に癖なのかはわからないが、レイヴンはもう敬語を使わなかった。

光の差さない暗い倉庫で、レイヴンの表情だけが確かに見えた。

やはり、この女は不気味だ。アイザックはレイヴンと出会ってから何度目かもわからないほど思ったことを再び考えた。


「わたくしたちがこの倉庫に来たのはソフィーがレイヴン様に宛てた文を拾ったためでございますわ」


「あら、ソフィーが?あの子がモノを落とすだなんて。珍しいこともあるものね」


「そうですわね。わたくしもそう思いますわ」


「その文とやらを見せてもらってもいいかしら?」


「ええ、わかりました」


頷いたアイザックは拾った文を取り出した。ノクターンに目で出していいかと聞く。出会って間もない、アイコンタクトで意思疎通ができるとはまったくもって思っていないが反射でアイコンタクトをしたアイザックの意図をきちんと読み取ったノクターンは小さく頷いた。


「こちらです」


「へぇ、見てもいいかしら?」


「結構です。ご自由にどうぞ」


手紙を受け取ったレイヴンはそれを開き目を通し始めた。この暗闇でよく文字が見えるものだ、そうアイザックは感心した。

だが、文を読むレイヴンにどこか違和感を感じて、見直すとレイヴンの瞳がほのかに光を放っていた。


彼女の表情がまったく読み取れないまま、その視線が文面を滑らかに滑るのを眺めていた。

しばらくして、その視線が一度止まった。そこ知れない瞳の奥で、かすかに何が揺れたような気がした。

気のせいだったのかも知れないが。


まもなく、レイヴンは文を閉じ、何を思ったのかは知らないがアイザックではなくノクターンへ手渡した。


「なるほど。あの子はどうやら余計なことを書いたようね」


「では、呪いというのは本当なのですか?」


隣に佇むノクターンが神妙な顔つきでそう口にした。


「ええ、まぁもしもこれが呪いによるないようならば、おそらくそうだと思うわね」


「呪いではない可能性もあるのですか?」


「ええ、二人の世代だと『太陽王と月の魔女』と聞くと、呪いをイメージすると思うけれど、そうでない場合もあるわ」


「まぁ、十中八九呪いについてでしょうけどね」


「では、月の魔女と太陽王が結ばれずに生まれた呪い、は実在するのですか?」


さっきから質問攻めにしてしまっているな。そうアイザックは感じつつも、口を止めることはできなかった。それほどまでに疑問が多かったから。

そんなアイザックとは対照的にずっと、ただ静かに内容を飲み込むようにノクターンはレイヴンの話に耳を傾けた。


「そもそも、呪いだなんて傲慢よ。これはある二人の人間の人生の終着点。惹かれ合いながら意地を張り添い遂げることのなかった太陽王と月の魔女の最後の足掻き」


レイヴンはそばの本棚にあった月が太陽を飲み込む紋様が刻まれた巨大な書物を手に取る。

そして、静かに口を開いた。


「アイザック殿下、貴方はどういう血筋の方かしら?」


「それは、どういう意味ですか?」


「サンスーンから来たのでしょう?貴方は王の息子かしら、それとも王の弟の息子?どちらかしらと聞いているのよ」


「王の息子です。まぁ、妾の息子ですが」


「そうね、大抵はそう。太陽王の地を継ぎながらもルナイトの血が極力流れていない男をルナイトに送り出すわ。」


「そうして、ルナイトは魔女家から養子に取った女性をサンスーンへと送り出すわ魔女家は王家の分家ですものね」


「お二人とも、ここまでは理解できるかしら?」


ノクターンとアイザックは同時に頷いた。

ただ、魔法だとか、呪いだとかとは縁遠かったアイザックには言っていることはわかったものの言わんとすることは理解することができなかった。

そう、これがどう呪いとつながるのかはまったくわからなかった。


「では、これがどう呪いにつながるのかお話致しましょうか。」


「そして、わが魔女家の役割もね」


「貴方たちがこの金烏玉兎の間へ入ってきたことへの小言は後して差し上げますわ」

第4話までお付き合いいただき、ありがとうございました!


秘密の場所「金烏玉兎の間」で、魔女家当主レイヴン様が、「呪い」についての真実の一端を語りました。


彼女の口から出た「傲慢」「最後の足掻き」という言葉。そして、ルナイト王家とサンスーン王家の間に代々行われてきた「血の交換」の事実。


宿命の全てを記録した「宿命の記録」を前に、レイヴン様の真意、そして二人の辿るべき道が、いよいよ明らかになっていきます。


次回、「宿命の記録」の謎が解き明かされます。どうぞお楽しみに!

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