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月日王帝物語~Requiem for the Empire~  作者: 花縫ゆりは
蘇る詛の終着点で月を見る
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第二章 Ⅳ

皆様、いつもお読みいただきありがとうございます!


ノクターン様とアイザック殿下が、和平と呪いの真実を懸け、ついに王城の奥深くに隠された秘密の倉庫へと潜入します。

ノクターン様の月光の魔力で開かれた扉の先には、ルナイトの歴史の闇が眠っていました。

しかし、そこで二人が目にしたのは、記録だけではありません。予想外の人物の影が、静寂を破ります。


二人の運命の調査は、誰にも知られていないはずなのに――。


緊迫の深夜潜入、そして運命の調査を巡る新たな対峙を、ぜひお楽しみください!

「あの、本当に大丈夫ですか?」


アイザックの問いかけでノクターンは振り返った。

「多分大丈夫」そう言いかけていた口を不安の色を浮かべるアイザックの顔を見て、慌てて閉じた。


「ええ、大丈夫です」


作戦決行日、深夜2時。どこかの国では丑三つ時そう呼ぶ時間にノクターンの部屋にアイザックがやってきた。


普段からどこかに夜の闇を纏っている王城は、人が寝静まっていつもよりも不気味だった。


アイザックはノクターンの手を引いた。


「倉庫は確かこちらですよね?」


「はい」


「ところで鍵はどうやって作るのですか?」


「鍵、と先日は言いましたが、その言い方は少々不適切かもしれません」


「迷路のように入り組んだ穴の中に糸のように細くした魔力を流すことで開きます」


「ちなみにこの国では何かを保管するときにたいていこの魔法を使いますよ」


「なるほど」


真面目な顔でそう頷くアイザックを見て、ノクターンの口から少し笑みが漏れた。

自分の国では、魔法も、魔物も、魔女も当たり前のことだったから。それを知らない人に教える、それが本当にありえないことだったから。

国が違うというだけでこれほどまでに違うのか。

頭に、かつて見たサンスーンの都が浮かんだ。そういえば、サンスーンの都はこの国ではありえないほど絢爛で豪奢だった。


「ノクターン?どうかしましたか?」


「いいえ、なんでもありませんわ。倉庫まではもうすぐです。先を急ぎましょう」


歩き出したノクターンの後ろをアイザックが歩いた。

二人の足音が不気味なほどにあたりに響く。


宰相室の一つ手前、他の木彫りの扉とは違う、時代を感じさせる黒ずんだ真鍮の扉だった。

鍵穴は見当たらない。


「どうやって、開けるのです?」


「ここの扉は少し特殊かもしれません。この彫られた柄が見えますか?」


「まぁ」


「おそらくここに性格な手順で魔力を流すことで錠を解除することができるはずですわ」


ノクターンは扉に手をかざした。月の光も届かない夜を纏った王城で、彼女の周りがかすかに輝いた。

その手から青白い光が漏れる。


「これが、魔力」


アイザックは初めて間近で見る魔力に思わず息を呑んだ。

サンスーンには魔力という概念は明確には存在しない。魔力と聞いて思い浮かべるのは都にいる呪術師たちだ。しかも、その大多数はインチキだ。

魔力、それはアイザックにとって知識としてしか知らないものだった。


ノクターンの魔力は、月の光の届かない王城で月光のように輝いていた。

その光は、扉の溝へ糸のように細く、水のように滑らかに流れ込んでいくのが見えた。


カチリ、そんな音が空気にかすかに響いた。


「開きましたわ」


ノクターンが扉から手を離した。青白い光はだんだんと空気に溶けていく。


ノクターンは戸を押した。

蝶番の音を鳴らし、扉が開いた。扉を開けるにつれて金属が砂を擦るような重く低い音があたりに響く。


開けた視界に映るのは立ちこめる埃。そして長く閉じ込められていた湿った空気の匂いと、金属の錆びた匂いが鼻をくすぐった。

アイザックは思わず顔を覆った。


なんだか想像していた倉庫、という言葉の印象よりも、ずっと異様な空間だった。


巨大な空間の周囲には、古びた木箱や、使い古された甲冑の残骸が乱雑に積まれていた。

そして、中央には天井まで届くほど高い、石造りの書架がびっしりと並んでいた。


他に何かないか、そう下を見るとそこには真新しい足跡があった。


「ノクターン、これ」


アイザックが地面を指し、ノクターンの瞳がその指先を見た。


「これは、おそらく最近のものですわ。」


「でも、それにしては魔力の残滓を感じなかった。」


「魔法に関しては相当な手だれ、それこそ魔女家のものかもしれませんね」


その時、倉庫の奥積まれた木箱の影から、微かな衣擦れの音がしたのをアイザックの耳は確かに拾った。


アイザックは即座に愛用している短刀を腰から抜いた。


「誰だ!」


その言葉のせいだろうか。それとも、短刀を手にしていたのが効いたのだろうか。

木箱の隙間から漆黒のスカートがのぞいた。


「誰だ、はこちらのセリフでございます」


そう言って出てきたのは30ほどの女だった。

漆黒の髪に漆黒の服、魔女その言葉がよく似合う女だとアイザックは思った。

妖艶な雰囲気と、底の読めない顔つきの女は微笑んで。


「お久しぶりです、ノクターン皇女。」


「魔女家当主、レイヴン・ロザリア=ウィッチ様でしょうか?」


「あら、覚えててくださったのですか?光栄にございます」


レイヴンという名の女の微笑みは、どこか底知れない不気味さを感じた。

第4話までお付き合いいただき、ありがとうございました!


今回は、ノクターン様の魔力行使というサプライズから始まり、秘密の倉庫という舞台で、まさかの魔女家当主レイヴン様が登場するという、怒涛の展開となりました!


宿命に立ち向かうノクターン様の「青白い魔力」と、すべてを支配するようなレイヴン様の「漆黒の魔力」が対比され、物語の起承転結の承へいよいよ近づいてきましたね。

レイヴン様が自ら封印を解き始めたことで、呪いの記録は、いよいよ白日の下に晒されます。


次回、レイヴン様の真意が明かされ、太陽王と月の魔女の「呪いの真実」が語られ始めます。二人の運命は、和平へと向かうのか、それとも破滅へ向かうのか?


キャラクター豆知識コーナー


ここで、登場人物が増えてきたので、名前の由来に関するちょっとした豆知識を公開します!


ノクターン (Nocturne): 「夜想曲」という意味を持つフランス語です。ロマンチックでありながら、夜の闇、「月」、そして秘密を背負う皇女のイメージから名付けました。


アイザック (Isaac): 「笑う者」という意味を持つヘブライ語が由来です。「太陽」のような明るいイメージと、その裏で宿命を背負う彼の皮肉めいた運命を表現しています。


レイヴン (Raven): 「カラス・知性・神秘」を意味します。魔女家が纏う漆黒の闇と、秘密を管理し、すべてを見通す知恵の象徴として名付けました。


ソフィー(Sophie):「知恵」を意味します。知恵を持ち合わせ、その知性とそして響きの上品さから名付けました。


アストル(Astre):フランス語で「星・天体」を意味します。知的で冷静沈着。そして夜の国の月光の宰相に相応しい名を選びました。



ブックマーク、評価、感想で、ノクターンとアイザックの運命をぜひ応援してください!


次回、「呪いの記録」の核心へ!どうぞお楽しみに!

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