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クォヴァディス ―滅びの剣と竜姫の誓い―  作者: フォンダンショコラ
第1部 2章 騎士学生

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第9話 好敵手

 決闘が決まった次の日の朝、コウは初めて寝坊をした。

 翌日、教室にはいったコウを待ち受けていたのはクラスメイトたちの好機の視線だった。


「おや、決闘をすることになった恥知らずの特般人じゃないか」


 髪をかきあげながら現れたのはユリウスだった。不思議なことに彼の言動に反してその口調には嘲りの色はなかった。最初の試験のとき以来、ユリウスの態度は終始こういう嘲りの言動に口調は普通という変な状態になっている。だからだろうか、コウはユリウスに対して反感をあまり抱いていなかった。


「おはよう。ユリウス。昨夜は遅くまで起きてたからね」

「なんだ、もしかして決闘に対して無様な足掻きをしているのか?」

「僕にできることはなるべくやっておきたくて」

「フン。貴様の狭い交友関係では模擬戦など望むべくもないか。この俺が決闘を待たずに公開処刑してもよいぞ。そうすれば決闘での負けたときの言い訳ができるだろう?」


 意外な申し出にコウは一瞬面食らった。


「それは、ユリウスが特訓をつけてくれるってこと?」

「ば、馬鹿をいうな!誰が貴様なぞに特訓をつけるか!衆人観衆がいる決闘で恥をかく前に俺が引導を渡してやると言っているのだ!戦術クラスに劣等生がいるとなっては俺の評価が下がってしまうだろう!」


 早口でまくしたてるようにユリウスがコウに詰め寄る。怒っているように見えるが、耳が赤くなっているのできっと恥ずかしがっているのだろうと、コウは思った。


「え、えっとありがとう?」

「馬鹿が!なぜ礼などいう」

「あはは。でも大丈夫だから、勝てないとはおもっていないからさ」


 コウとてなりふり構わずカイルに噛みついたわけではない。入学以来、ずっと4王に鍛えられてきたのだ。実力が上がらないわけがない。

 それになにより、カイルはコウを圧倒的格下だと舐めきっている。そして学年最下位という色眼鏡をかけ続けているのだ。

 それはおおいに抜けいる隙になる。


「ふん、まあいい。貴様が恥をかきたいというのならばそうすればよかろう」


 そこはかとなく自信を漂わすコウの発言と表情に何かを感じ取ったのかユリウスはあっさり引き下がり、踵を返し自分の席に帰っていった。

 ユリウスを見送ってから自分の席につくと、いつものメンバーがコウの机に集まってきた。

 3人にはユリウスとのやりとりに口や手を出さないようにとお願いしている。毒気が抜けた彼からは害意を感じられないので、問題ないといい含めていたのだ


「なんかさ、ユリウスってちょっとこじらせてるよね」


 ノアの率直な感想に、ミリアがくすくすと控えめに笑った。


「ノアちゃん。たしかにそのとおりだけど言い方に気をつけないと」

「えー、じゃあなんていえばいいの?」

「ふむ。では、心のドアが重いだけの人というのはどうだ?」


 レヴィンの言葉に一同、思わず彼の顔をまじまじと見つめてしまった。3人のんの視線を受け止めるレヴィンの表情は至極真面目な顔をしている。


「なんだ?俺の顔になにかついているのか?」


 注目を集めたことに不思議そうな顔をしているレヴィンにノアが率直な感想を述べた。


「いやー。レヴィンが冗談をいうなんて珍しいなって」

「バカを言うな。俺はいたって真面目だ」

「いやいや、真面目って。え、ほんとに?」


 フンと不機嫌そうに鼻を鳴らすそっぽを向くレヴィンに、ノアは流石にまずいと思ったのか、「ごめんごめん!」と謝り倒している。


「あはは。朝から賑やかだなぁ」


 ぽつりともらしたコウの言葉を聞いたミリアはにこっとコウに向かって微笑んだ。


「みな、コウくんのことを励ましたいと思ってるんですよ」

「とてもありがたいよ。どうも決闘の話はみんな知っているみたいだし」

「優秀な噂屋がいるんでしょうね」


 ふぅ、と浅くため息をつくミリアもどこか辟易しているようだ。

 本当にどこから漏れたのだろうか。昨夜の出来事はまだ発表もされていないのに、ユリウスが知っていたということは目撃者や情報通ガイルに違いないのだが。まさかあの厳格さで知られるゼクトや、そもそも一人狼のカイルが漏らすわけがない。


 大方、近くを通りかかった誰かが偶然耳にしたのかもしれない。噂話というのは得てして、なぜそれが漏れる?という情報がでていたりするものだ。情報の出どころを考えてもしかたがない。

 とはいえコウほどではないが、ミリアたちも当事者側に入っている。朝からずっとこんな視線を受けていては気が滅入ってしまうだろう。


 教室に入ったときにコウに向けられる好奇の視線は、いまも注がれている。もっともその興味は自分にだけではなくカイルにも向いているのだが、彼に視線を向けてしまうともれなく絡まれることになるので、視線は自然とコウにだけ注がれる。

 とうのカイルはというと窓際のいつもの席で不機嫌そうに頬杖をついて座っている。視線は外を見ているようだが、話しかけるなオーラがすごい。


「まあ、ゼクト教官が言うには、今日の午後には僕とカイルくんの決闘が学生掲示板に告知されるそうだよ」


 あえて教室中に聞こえるような大きめの声でミリアにいう。


「それでは詳細はその時に確認すればよさそうですね」


 コウの意図をしっかり把握していたミリアがすかさずコウに合わせて大きめの声で返事をした。

「どうせ俺は真面目しか取り柄がないというのだろう?」

「だから、ごめんってー!今日のお昼の鳥のソテーで手をうってよぅ」


 そんな二人をよそに、ノアとレヴィンのお遊びは続いていた。

 コウが踏み出した勇気の一歩は学校に波紋を呼ぶことになるとはつゆ知らず、予鈴の鐘が鳴り響いた。

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