挿入歌 陰謀 かくあれかし
帝国のとある尖塔の中にその空間はあった。
そこは薄ぼんやりと輪郭が見えるだけの昏い部屋だ。
かろうじて円卓と周囲に配置された椅子が有るのが分かる程度だ。
椅子は8脚あり、八人がそれぞれ座っている。みなフードを被り表情は見えない。
「邂逅は終わったようだな」
しゃがれた男の声が響く。誰かが喋った動きはない。にも関わらず声だけがどこからか響く。
「計画は次の段階へ」
老婆のような少女のような女の声が楽しげに言った。
「遅いぞ、首尾はどうなっている?」
若そうな男の声が苛立たしげにいった。
部屋の作りのせいか声は反響し、誰が話したか判別がつかない。
「報告通りだとすれば、予定通り奴らはアレを自分たちの巣への持ち帰るようだ」
今度は女の声がした。
「ふむ。世界の守護者というわりには奴らはなんとも無警戒よ」
老人の声がいう。
「自らが害されることはないと高をくくっているのだろう」
子供の声が嘲笑うように話した。
そこからは様々な声が輪唱するように続く。
「これで忌々しい守護者気取りを排除できるな」
「長い道のりであったが、これにて我らが大神の大願成就の大きな一歩となろう」
「トカゲ共の絶望が」
「我らが悲願の成就が」
「世界律の名のもとに」
「旧世界の遺物に鉄槌を」
数々の声がまるで輪唱するかのように発せられた
「では、諸君。始めよう。世界に変革をあたえようではないか」
その言葉を最後に明かりが消え失せ、円卓は闇と静寂に包まれた。