第13話 それぞれの評価
今回は短めです。
教官室では、採点を終えた教官たちが羽を伸ばすように今年の試験結果について会話をしていた。
「今年の生徒は豊作だなぁ。とくにほらレイヴンハルト家の子息」
大柄で筋肉質の男性教官が手元の成績表に目をおとしながら読み上げる。
「レイヴンハルト流初伝。学識考査満点、魔力考査もすげぇな。模擬戦にいたっては…こりゃ相手が気の毒だな」
「しかし、彼の相手は学年最下位の成績だったでしょう?」
カップを片手にエルフの女性教官が男性教官の成績表を肩越しから覗き込む。
「あー。この子フゥ将軍が連れてきた特別枠の子だって、成績悪すぎない!?」
「お前もそう思うか?フゥ将軍肝いりの特別枠だとおもったんだが、除籍ギリギリの成績だもんで、拍子抜けだ」
コウには知る由もなかったが、実は騎士養成学校には落第、あるいは学籍の除籍措置がある。実はこの時点で成績があまりにも不備がある場合、そのまま除籍措置が行われる。
「いやいや、でもこの子、面白い回答をしていますよ」
生徒全員の答案用紙を眺めているメガネをかけたドワーフ賊の教官がいう。
「とくにこの問題、銀竜歴19234年(帝国暦412年)に締結された「黒羽条約」における第七条は、竜族と帝国のどちらの交易権を制限したものか。また、その後の戦炎月戦役(銀竜歴19244年、帝国暦422年)でこの条約がどのように解釈されたかを簡潔に記せ。って問題に対しての答えがこれよ」
【第七条は“仲良くしましょう”という内容。戦炎月戦役では仲良くできなかったので戦争になりました。】
「そりゃーーねーーだろ!?いや確かに間違っちゃいないが、なんだこの珍回答!こんな回答したやつこれまでいたか!?」
「ちょっとまって!特別枠ってそういうおもしろ人間枠ってやつ!?」
ドっと笑いが起きる。
ゼクトは教官たちの笑い話を聞きながら、神妙な顔をしていた。
彼の胸中はコウが最低限の成績であったことより、、最低限の成績がとれたことに驚愕していた。
――これが、わずか一ヶ月の成果だと?
4王が教えたことも、レムが魔法で知識を詰め込んだことも知っている。しってはいるが、異常だ。いくら魔法で知識を詰めこんだとして、それを引き出せるかどうかは別の話だ。
勉強すればそれが定着しやすい程度にしかならない。
さらに魔力考査での異常な精度。これも伝え聞いていた所によると常に450を出し続けられるという。脅威の精密さだ。
極めつけは模擬戦。竜の騎士として加護があるとはいえ、ただの素人が専門の教育を受けた剣技をまがりなりにも凌いだのだ。結果だけみれば敗北だが、来歴を考えれば脅威としかいいようがない。
なるほど、これが特別か。やりがいのある仕事だ。教官たちがコウの珍回答で盛り上がる中、ゼクトはひとり暗くなり始めた窓の外をみた。
窓に写ったゼクトの口元は歪んでいたが、それに気づいたものはいない。
コウの才能を知っているのはごく一部の人たちです。本人すらしらないという。
これからコウはメキメキ実力をつけていく予定です。
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